宇宙戦艦ヤマト2202は、さらば宇宙戦艦ヤマトを否定するのか?の巻

行ってきました、宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち完成披露上映会。
細部はネタバレしませんが、感想などはどうしてもネタバレ気味になってしまうと思うので、そのあたりをご賢察の上、お読みください。(予防線を張る)
というか主題歌めっちゃ驚いたんだけど、公式がネタバレしちゃったよね。福井さんのリクエストであの主題歌になったんですって。わたしは曲名は書きませんよ!

まず、本作を見て私が感じたポイントは以下の5つです。

1.最初から全力
2.最初からオリジナル展開
3.旧作オマージュも新解釈で
4.初見殺し&細けえことはいいんだよ!
5.さらばヤマトのアンチテーゼ

1~4に関しては、羽原監督や福井さんの証言もあり、確実に意識してやっていることだと思います。5は私が第一章を見て感じたことです。以下に説明します。

<最初から全力の件>
これは見ればわかるので、特に書きません。

<最初からオリジナル展開>
2199の続編でガミラスは存続しているので、当然さらばヤマトとは異なる展開になります。

<旧作オマージュも新解釈で>
ヤマト2199の旧作オマージュシーンは、特に第1章においてカット割りやレイアウト、場合によっては動きのタイミングまでコピーするなど、旧作に対する強いリスペクトを表していました。
しかし2202では、さらばヤマトと状況が似ているだけで違っている形で提示されるケースが多いです。これはオリジナル展開のために変わった部分と、時代的に合わないので変えた部分(福井氏談)があると思います。

<初見殺し&細けえことはいいんだよ!>
さらばヤマトや2199(星巡る方舟含む)は見ている前提の作品です。なんにも説明がありませんので、めっちゃ初見殺しです。
また、思い切ってアニメらしいケレン味のある描写をやる、という演出がそこかしこに見られます。たとえばメカニックがCGで描かれるためサイズが厳密に設定されているのですが、見栄え優先で2倍サイズにしちゃうとか、邪魔なオブジェクトは消すとか、手描き時代のレイアウト手法を使っているのです。これは2199の頃からやっていたそうです。
もう一つは手描き作画の良さ、具体的には金田伊功さんの作画の良さを再現するために、形が歪んだ戦闘機モデル(通称:バージョンK)を用意したということでした。これは予告編でもなんとなく感じたことで、CGなんだけど手描きのようなニュアンスがあると思います。
また口には出していなかったのですが、2199がかなり厳密な科学考証をやっていたので、それに対する若干の揺り戻しのような気もしています。実際、超科学的現象がいくつか起きるんですけど、それに関しては何も説明はありません。予告編で波動砲らしきものが出てきますけど、これも説明なしです。

<さらばヤマトのアンチテーゼ>
ここからはネタバレになってしまうので要注意です。
ガトランティスが、ある戦法を取るんです。1回は大規模な形で。もう1回は小規模な形で。30分アニメ2話のエピソードの中で、同じことを繰り返して強調しています。これを見て「ヤマト2202は、さらばヤマトに対するアンチテーゼでもある」と明確に宣言したように思いました。

 

※おまけ:上映終了後の羽原監督(H)&福井さん(F)のトークから。だいたい福井さんが問題発言をします。

H「CGはサイズが決まっちゃうから演出がやりにくい面がある」
F「ガンダムがドックに入りきらない!」
H「あれ文句を言われても」
F「搭載しきれるはずがないとか、こまけえことはいいんだよ!」
H「アニメですから!」

F「中学二年のときに何を見ていたかで人生が決まる。厨二ですよ!」
H「私はヤマトでした!」
F「俺はイデオン発動篇でした!」(バカウケ)

F「俺はさらばヤマトを見せてもらえなくて、ドラマ編のレコードで聞いたんですよ」
H「ドラマ編!」
F「あれは大人の事情でエンディングが・・・」
H「それで!」
F「はい、その恨みを晴らしました」(←脚色有り)

F「ガンダムやったでしょ。今度はヤマトかよって・・・」
F「リメイクものは自分がやりたいことをちょっと抑えたほうがいい結果になるようで、ヤマト2202はいまのところ満足できている」

福井さんはガンダムUCに関して思うことがたくさんありそうでした(笑)。ヤマト2202はそれほどフラストレーションを溜めずに作れているらしい?です!

※雑感
福井さんが予想以上に濃いアニヲタでびっくりで、トークが楽しいイベントでした。ガンダムUC制作時は、カッコつけていたんだなってのがよくわかりましたw。UCのBlu-rayのコメンタリーはよそ行きモードですが、TV放映時のコメンタリーはかなりオタク寄りになってるんですね。今回は完全にオタクモード全開だったと思います。

※嚆矢(こうし)編が読めない古代進

JUNO-106 になった SYSTEM-8 と RD-2000 の巻

<SYSTEM-8 with JUNO-160 plug out>

RolandのSYSTEM-8がアップデートされて、JUNO-106など往年のアナログシンセのプラグアウトがリリースされました。
たまたま行った楽器店で、このJUNO-106プラグアウトをインストールしたSYSTEM-8を弾く機会があったので、簡単にレビューします。

1.こだわりのコーラス
JUNO-106といえばコーラスというくらい特徴的だったコーラスエフェクトを、しっかりエミュレーションしています。鳴らした瞬間に笑っちゃうくらい、見事にJUNO-106です。独特なノイズ感まで再現されているのですが、それはオフにすることもできます。このあたりがポイントで、JUNO-106をそのまま再現するというよりは、SYSTEM-8のエンジンを使って、JUNO-106をリファインした形で提示していると感じました。

2.リファインされたサウンド
ということで、雰囲気は似ているのですが、出音は明らかにJUNO-106とは違うのです。おそらくオシレータレベルで微妙に違うんじゃないかと思います。また、フィルタも効きが良くなっていて、コシのあるサウンドになっています。若干薄いサウンドがJUNO-106のキャラクターだったと思うんですけど、けっこうぶ厚くて、暖かみのあるサウンドです。低音もJUNOより出るようになっています。でも、雰囲気はやっぱりJUNOなのです。ここが面白い。なお音色パラメータはオリジナルのJUNO-106とほぼ同じで、操作パネルもJUNOとの対比表が公開されております。

3.総合評価
どうしても実機のJUNO-106でなければ、というこだわりがなければ十分満足できると思います。またそれ以前に、物理モデルのアナログシンセとして非常に質が高いと感じました。SYSTEM-8に懐疑的だった人が、このJUNO-106プラグアウトで評価を変えている感もあり、正直驚いています。自分もこんな可能性があるシンセだとは思っていませんでした。ただのソフトシンセと言ってしまえばそれまでですし、完全に実機と同じサウンドになりえないとしても可能な限り雰囲気を再現して、できるだけ良いものにしようと努力した、ローランドの技術者の方のJUNO愛を感じられます。

RD-2000

1.外観
ステージピアノ新製品かつ最上位機種です。V-piano音源とSuperNatural音源を搭載したRDということでポテンシャルが高いので、実機を見かけたらじっくり試弾したいと思っています。やはり表現力が非常に高いんですよね。鍵盤次第では購入を検討したいです。譜面たてをどうしようかなあと悩んでます(笑)
ヤマハのステージピアノは、音色の表現力がいまひとつで残念です。もうすこし繊細なピアニッシモや、迫力あるフォルティッシモが出せるといいんですが、使いやすさを重視して抑えているように感じます。

2.マスターキーボード機能
マスターキーボードなので、操作子としてスライダーやつまみがたくさんついています。その中でも、2種類のモジュレーション&ピッチベンダーを搭載したことは特筆できます。ローランド方式のモジュレーション&ピッチベンダー一体型ノブと、ヤマハ方式の独立型の両方を搭載したわけですが、こういうキーボードはほとんど存在しなかったので、よくぞやってくれたという感じです。もちろん、DAWのコントロール機能もあります。まだマニュアルが公開されていないんですが、どんな機能があるのか楽しみです。

3.総合評価
海外製のMIDIマスターキーボード(KOMPLETE KONTROLなど)と、日本のステージピアノを融合したような製品だと思いました。音源はおそらく既存のものを流用していますので、もっぱら機能面での進化になります。
近年のステージピアノは基本的にライブ演奏重視で、DAWなどの音楽制作におけるマスターキーボードとして使うには、機能的に物足りなさがありました。RD-2000はそういう物足りなさを払拭するのではないかと思います。今回はローランドの製品ですが、ヤマハからも対抗馬となるような製品が出て欲しいと思います。

ヤノシュ・オレイニチャク ピアノリサイタル@石川県立音楽堂の巻

プログラム:本編は全部ショパン

第一部終了後にトークがあり、今回のテーマが「サロンのショパン」ということで、性格的小品がメインになっているということと、即興的にプログラムを変えたことを釈明。なにしろ、バラード1番は予告では幻想即興曲だし、英雄ポロネーズは後半の最後に弾く予定でした(笑)。

演奏内容は、マズルカはとても慎重に弾いて精度高いと思いましたが、ほかの曲はかなりフリーダムでニュアンスなどは即興的に作っているようでした。フレーズの改変も(問題にならない範囲で)やっていたのが面白かったです。
アンコールの花火が素晴らしかった。楽曲を完全に掌中に収めた演奏で、不自然なことが何一つなかったです。

Moog SUB37 tribute edition 購入の巻

久しぶりのアナログ・シンセ購入です。そして、moog(ムーグではなくモーグと呼ぶのが正式らしい)のシンセを所有するのは初めてです。いまはあまり電子系の音楽をやっていないので、それほど活躍する機会はないと思いますが、遊び用で買いましたw
この機種はSUB PHATTY*1の回路に、さまざまなパラメータを追加したものだそうです。そのためパネルのノブやスイッチ類がものすごく増えていて、音作りの幅が広がっています。まだ使いこなせていない状態ですが、いくつかポイントがあると感じたので簡単にまとめます。

・連続可変波形なVCO
Tri~Saw~Square~Pluse が連続可変になっています。元波形の倍音成分は他社製品と比べると少なめで、少し鼻づまり感があってmoogらしい音色だと思います。

・2つのLFO
高速モジュレーションが可能なLFOが2つあります。これは最近のアナログ(系)シンセのトレンドですね。

・ミキサーセクションのフィルターフィードバック
SUB PHATTYにもあったパラメータで、甘く歪んだ太い音になります。なんでもかんでも使いたくなる危険なつまみ(笑)

・フィルターセクションのマルチドライブ
これもSUB PHATTYにもあった謎のパラメータで、やはり歪み系。アナログシンセは歪ませても音痩せしにくく、デジタルシンセのような折り返しのノイズも出ないので大変効果的です。

・フィルタースロープが4段階可変
-6、-12、-18、-24dB/Octの4種類のフィルターが選択できます。スロープの選択を間違えると、思ったような音作りができないので注意が必要だと思いました。当初は-12と-24だけでいいんじゃないかと思ってたんですが、-6dB/Octも OberheimKORG MS-20 的な味わいがあって、捨てがたい魅力があります。*2

<操作性の印象>
LFO、フィルターカットオフ、ADSRなどゼロ~最大値を扱うつまみを回したときの反応が対数的です。つまり値が低いほど分解能が高くなるように設定されているので、微妙な音作りがしやすいです。シーケンシャルのシンセは整数的なので、つまみの回し方に神経をつかうんですけど、moogは雑に回してもあまり問題がないです。
あとはモジュレーションが非常に多彩で、Prophetもビックリという感じなので、つかいこなすのに時間がかかりそうです。
MS-20を使っていたときは、一度作った音色はパッチングを含めパラメータを覚えていたんですけど、このくらいパラメータが増えるとさすがに無理なので、音色メモリーやPC連携機能が付いていて本当によかったと思ってます(笑)。

<サウンドの印象>
上品な音色で、あまりエフェクトを使わず素のサウンドを活かしたほうがよさそうだと思いました。

*1:宮川彬良先生がご購入

*2:これでMS-20のフィルターが-12dB/Octより若干キレが甘いのではないか?という疑念が確信に変わった(笑)

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 新作BGM「接近」を弾いてみた


宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 新作BGM「接近」を弾いてみた

昨年のヤマトーク road to 2202 のときに聞くことが出来たヤマト2202の新作劇伴を弾いてみました。

harnoncourt.hatenablog.com

 冒頭の高音域をINTEGRA-7のSN音源で弾こうとしたら折り返しノイズがきつくて使い物にならなかったので、JV-5080互換シンセのほうで弾いてます。あと、moog SUB 37というアナログシンセを買ったので、こいつも参加してます。

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低音担当で参加したんですけど、同じ音色を6オクターブ上げると冒頭の演奏もできるという、非常に幅広い音域で安定したサウンドが得られるシンセだと思いました。一瞬、全部このシンセの多重録音で作ろうかと思ったんですけど、なにしろモノフォニック(単音)シンセなので、何十回も重ねる根性はありませんでした。

でも、最初にシンセ買ったときは何十回も重ねたんだよなあ(遠い目)

ユーリ!!! on ICE 愛について ~Eros~ を演奏してUPしましたの巻


ユーリ!!! on ICE 愛について ~Eros~を弾いてみた In Regards To Love - Eros (piano cover) sheet music

やりました。全力のエロスです!

某社から出版されたピアノ譜があまりにもひどかったので、俺様が見本を示してやるみたいな気持ちでアレンジしました。弾きやすく演奏効果が高いものを目指したつもりでしたが、弾きにくくて演奏効果も微妙な感じな部分も多く、なかなか思うようにはいかないものですね。

当初は演奏指示を入れておらず、音符だけの楽譜でした。この状態で演奏しても起伏に乏しい感じになってしまいます。リズムパターンが最初から最後まで同じなことが原因なんです。これはもう、最初からヤバいってわかっていたのですが。
そこでまず、デュナーミク(強弱表現)をつけて、ついでにリズムの扱いもパートごとにはっきりした特徴を出すことで、楽曲としてのドラマを作り上げた感じです。アレンジが4日で、表情付けの修正に2日かかってます。

結果的にとてもドラマティックな仕上がりになったという自負はありますが、ほとんどそういう演奏表現で作り上げたものなので、われながらしっかり弾けたなあと褒めてやりたいです。ショパン舟歌を勉強したことも役に立ってます。細かなキズはあるんですけどね、まあ勢いが大事だと思うのでよしとします。

あと動画の説明にも書いたとおり、イメージはカルメンです。ラストの一番盛り上がるところは男を捨てていますが、カルメン自身も涙も流しているという解釈で、思いっきり切なく弾いてみました。

ユーリ!!!は、もう少しスケトラを弾きたいと思っています。
・Yuri on ICE(練習中)
・賑やかな南くんの曲
・離れずにそばにいて
この3曲はぜひとも弾きたい。放映中のオンタイムで弾ければよかったんですけど、こういうのは楽曲を自分の中で消化してからでないと弾けないので、急がずじっくりやっていきます。

 

ユーリ!!! on ICE のBGMをいろいろ演奏してUPしましたの巻(第6回)


ユーリ!!! on ICE 10話 教会シーンBGMを弾いてみた Yuri!!! on ICE ep 10 OST (in church) sheet music

ユーリ!!!の劇伴もそろそろ(ようやく?)ネタ切れになってきましたけど、10話の教会シーンで流れたRocking carolと、2話でちょこっと流れたショパン舟歌を弾きました。Rocking carolは完全に前座扱いで、オマケと称した舟歌がメインというひどい動画ですw

舟歌は2話で聞いてやっぱり名曲だなあと思って、劇中で流れた部分(コーダ)からラストまでなら弾けそうだったので、昨年から練習に取り組んでいました。ただ、いきなりコーダのPiu Mossoから始まってしまうのは、やはり違和感があるということで、FS用編曲のような感じで、原曲の最初と最後をつないでみました。
演奏は最初から最後まで、本当に全部難しくて大変でした。心がけたのは、フォルテでもドカ弾きしないこと、フォルテでも流れを失わないこと、フォルティッシモで破綻しないこと、等々とにかくフォルテに関する諸注意と(笑)、そうは言っても楽曲への想いやユーリ!!! on ICEへの気持ちなどを熱く、力強く表現したいと思っていたので絶対にリミッターをかけないという心構えでした。繊細なディテールとかそういうのは、あくまでも副次事項です。

全体的にトリルが怪しいのは、純粋に演奏技術がないからです。特に下記の部分が演奏困難で、トリルでなくただの32分音符になっています。これはどうしようもなかったです。

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あとはペダリングで、かつてないほどハーフペダルを多用しました。電子楽器なので全開で踏みっぱなしでもあまり影響ないんですけど、例えば下記のような部分で踏みっぱなしにすると、さすがに低音がうるさいです。

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クリスティアン・ツィメルマンなどは、この楽譜の通りに左手が16分音符になるところでペダルを上げているので、リズムが強調されて少々硬いニュアンスになっています。自分は流麗に弾きたかったので、この部分で半分だけペダルを踏み込んでいます。あと冒頭の、左手の単音で同様の伴奏系で演奏される部分も同じようにハーフペダルです。

舟歌のこの伴奏をどう表現するのか、ずっと悩みどころだったんですが、今回自分の中で回答を見つけることができたのは収穫でした。