スティーブン・オズボーンのドビュッシー 前奏曲集の巻

前回にひきつづき、ご贔屓ピアニストであるオズボーンさんです。

相変わらず極めて高い完成度の録音です。過度な思い入れを廃した演奏解釈と、それに基づく表現の客観性がこの人の特徴であり、良さであることを改めて思い知らされるCDでした。真摯なスタイルではあるけれども、決して深妙で重苦しい演奏にはなっていないというバランス感覚も良いと思います。

Preludes

Preludes

 

 

「エヴァンゲリオン」ウインドシンフォニーの巻

第一部が旧作(というかTV版)、第二部が新劇場版の楽曲でした。

全体的に原曲を尊重したアレンジでしたが、吹奏楽だとどうしても無理が生じるところもあって、いろいろ厳しいと感じました。打楽器はほとんど原曲どおりに鳴らせるのに、それ以外が手薄になるので違和感があるんです。

中盤にフル編成でなく管楽器五重奏編成のパートがあったんですが、アレンジはほとんど同じなのに、むしろこちらのほうが無理がなく感じました。中途半端になるくらいなら、室内楽編成のほうがいいかもしれません。

ところで、シン・エヴァンゲリオンの情報発表が近いのではないか?と読んでいた件は以前も書きましたが、その予想の最大のヒントになったがこのコンサートです。シンエヴァ関係で何も動きがないのに演奏会だけをやるはずがなく、これは新作公開に向けた一連のイベントだろうと考えたのです。それが2020年になるとは思わなかったんですが、ここから2年後の公開を目指していると思います。

鷺巣詩郎デビュー40周年「アニソン録 プラス。」発売記念ライブの巻

着座形式のライブに変更、追加チケット発売ということで慌ててチケットを確保して行ってきました。

ライブと言ってもProTools持ち込みで、鷺巣先生が自分でカラオケをポン出ししながら歌を乗せる形式です。途中からクリヤ・マコト氏が加わってキーボード系は生演奏になりました。このクリヤ氏のプレイがとても良かった。CDで聞く彼の演奏は高度に洗練されてはいるもののパッションが感じられず、ひたすらスタイリッシュにかっこいいという印象だったのですが、今回の生演奏では極めてアグレッシブなプレイを繰り広げて評価を180度変えました。もちろん高橋洋子やLorenやMay'nのボーカルも同様で、喉からCD音源以上でした。

演奏だけでなくトークもおもしろくて、鷺巣さん喋りまくりでいろいろな話を聞くことができました。

ProToolsのカラオケのサウンドがとても良かったのが印象に残っています。個々の楽器の音の処理が素晴らしかった。アタック感や減衰カーブといった1つ1つの要素がいちいち気持ちよくて、プロの音作りの凄さをまざまざと思い知らされた感じです。

あと来賓も豪華で、顔が判明しただけでも、樋口真嗣さん、エヴァ監督の鶴巻和哉さん、前田真宏さん、エヴァ作監本田雄さんが来ていらっしゃいました。

deleの巻

dele(ディーリー)ですけど、山田孝之が好きなので何気なく見たらハマってしまいました。脚本はバディもののフォーマットに則っている感じです。低予算なのか固定キャラが少なくて、毎回ゲストをくるくる回していますね。そのキャスティングに捻りがあって、次は誰が出るんだろう?と想像するのも楽しいです。

セットや撮影も低予算で簡素な作りながら(低予算連呼)凝った照明やカメラワークを駆使することで、静謐でシュールな画面として昇華されていて非常に好感が持てます。

あと最初から目を奪われるというか、耳を奪われたのが劇伴です。オリジナル劇伴はかっこいいし、選曲も的確。特に第三話は男女の濃厚な関係性を表現する場面で繰り返しマーラーのアダージェットが流れて、映画を見ているような気持ちになりました。

また全体的な印象として、時間の使い方がとても巧みです。スピーディな展開のエピソードがあったかと思えば、第三話のように28年間という止まった時間の表現するため意識的に展開を遅くしたエピソードもあって、うまいなあと思いました。

夏コミケ発行本の通販を開始しましたの巻

コミケで発行した本と、既刊の在庫を下記リンク先のBOOTHにて通販しております。よろしくおねがいします。

cosmopianist.booth.pm

 

次のイベント参加は12月末の冬コミケの予定です*1。今の調子だとシンカリオンの本になりそうですw

*1:スペースが取れれば

コミケお疲れ様でした&シンカリオンxエヴァンゲリオンの巻

コミケお疲れ様でした。猛暑の中、拙サークルまでおいでいただいたみなさまもありがとうございました。いろいろな方とお話できたので楽しかったです。

シンカリオンxエヴァンゲリオンコミケ2日目の放映でモロにかぶってしまって、帰宅してから見ました。キングシトエルが襲来したときの曲がお約束のAngel Attackではなく、旧劇AIRの「真夏の終演」だったので驚きました。

スティーブン・オズボーンのドビュッシー ピアノ曲集の巻

生活が少し落ち着いてきたので、最近愛聴しているCDを紹介していきます。今日は、以前ラヴェルの全集を絶賛したスティーブン・オズボーン氏によるドビュッシーの作品集です。

Debussy: Piano Music

Debussy: Piano Music

 

曲目は下記の通りです。

1) 仮面
2) スケッチ帳より
3) 喜びの島
4) 映像 第1集(水に映える影 ラモー礼讃 動き)
5) 映像 第2集(葉ずえを渡る鐘 そして月は廃寺に落ちる 金色の魚)
6) 版画(塔 グナラダの夕暮れ 雨の庭)
7) 子供の領分(グラドゥス・アド・パルナッスム博士 象の子守歌 人形へのセレナード 雪が踊っている*1 小さな羊飼い ゴリウォーグのケークウォーク)

「仮面」の無窮動的な運動性は思わず耳を奪われます。また「喜びの島」の爆発するエクスタシーの表現はもはや豪放磊落という感じで、かなり肝が座ったドビュッシー像を描いていて極めてユニークです。こういう大胆不敵な態度は「子供の領分」においても同様で「ゴリウォークのケークウォーク」はヴィルトゥオーゾ的に弾いたりする遊び心を見せたかとおもうと、「雪が踊っている」の繊細な音色の使い方や、「小さな羊飼い」の独特な旋法の歌い方に潜むセンチメンタリズムなど、ディテールの仕上げも相変わらず素晴らしいです。フォルティッシモではかなり思い切りピアノを鳴らしますので、繊細なだけでなく大胆で迫力のある演奏になっています。

全体の印象はラヴェルの全集と同じで、一歩ひいたところから楽曲に対する共感を表現しているピアニストなので、曲全体の見通しが良いことと、ディテールの精度の両立具合のバランスが絶妙だと感じます。

 

harnoncourt.hatenablog.com

 

*1:よく「雪は」踊っている、という訳がされていますけど、どう考えても「雪が」が適切(笑)