ユーリ!!! on ICE のリアルな表現の巻

ユーリ!!! on ICEは、すごくリアルなフィギュアスケートアニメだと思います。
アニメや映画では、よくリアルな描写とか、リアリティのある演出などと言われますが、「リアルってどういうこと?」と考えました。
その結果、自分の中では「現実と同じような感情が湧き上がる描写や演出こそが、リアルなのだ」という結論になったので、その観点で書いていこうと思います。今回は、フィギュアスケート演技のリアルさについてです(次回の予定は未定!)

  • フィギュアスケート演技のリアルさ
    • オープニングだけで涙が出てきてしまったので、リアルと判定します。
    • 第1話のヴィクトルのフリープログラムの演技で、ジャンプが成功する度に「よし!」とかセカンドループ!って思わず叫んだり、あーこの振りがいいわーとか思ったり、終わった後に拍手してしまったので、リアルと判定します。
    • 第2話で勇利が黙々とコンパルソリをやっている場面も泣けてしまったので、リアルと判定します。
    • 種類が違うジャンプの描き分けが完璧で感心したので、リアルと判定します。
  • 上記のリアルさを具体的にざっくりと解説するよ!
    • オープニング
      • 背景画がなく人間のスケーティングだけで見せるという、挑戦的な内容ですが、下手に背景をいれないことで逆に想像力が働いてリアルに見えるという状況になります。
      • あえてセルルックな作画にしないで、動きのあるトレス線を用いて描くという、これも挑戦的な画のつくり。アニメートに自信がないとできません。実際に人間が演技したものをトレースしているので大丈夫だと判断したんだと思いますが、よくもまあ描いたものです。
      • 音楽がいい。自分たちが歴史を作るんだ!というポジティブなメッセージは、いまの男子フィギュアスケート界に通じるものがあります。現実と虚構が交錯する部分です。
    • ヴィクトルのフリープログラム(ヴィクトル編)
      • まだ誰もやったことがない非常に高難度なジャンプ構成なのですが、いずれこんな構成で滑る人が出るだろうとか、ひょっとしたら今季中にだれかやっちゃうかも?と思える絶妙なレベルです。実際の競技レベルよりちょっと高いところを出してくるというのは、体操マンガ「ガンバ!Fly high!」などと同じ演出で、その競技に詳しい人にとってのファンタジーの具現化といえるので、とても感動するのです。これも現実と虚構が交錯する部分ですね。
      • 冒頭で4回転ルッツ(現在まともに飛べるのはボーヤン・ジンだけ)、4回転フリップ(現在まともに飛べるのは宇野昌磨だけ)という、トップ選手でも一握りの選手しかやっていないジャンプを軽々とこなすことで、ヴィクトルの能力の高さを示しています。まあヴィクトルなら飛べるだろうねって思ってしまう。
      • トリプルアクセルトリプルループの連続ジャンプ。これも現在は誰もやらない高難度のジャンプですが、セカンドループには独特のスピード感があって、絵的に非常にかっこいいんです。そのカッコよさを見事に表現しています。自分はこのジャンプの描写は痺れました。
      • 演技最後の4回転トーループ+トリプルトーループ。こんなジャンプを最後にやる人なんかいないんだけど、アニメだからいいじゃん!みたいにやっちゃうのが好き。しかも4回転のジャンプが高くてかっこいい。ケレンみってやつです(笑)
      • カメラワークが良い。実際のフィギュアスケートの試合ではできないカメラワークのカットがたくさん出てくるので、スケオタ的に「こんな角度から見れるなんて!」という新鮮な驚きがあり、それが感動につながります。
      • 音楽がめちゃくちゃいい。ものすごくいい。オリジナル曲だそうですが、実際にこの曲で滑る選手が現れるのではないかと思うくらいいい曲。最後のステップのところなんか本気で泣けるレベル。
      • ヴィクトルの王子様感がすごい。衣装や立ち居振る舞い、演技中の表情や髪の毛の動き、要所でスケートのブレード(刃の部分)がキラキラ輝く演出など、すべてが王子様。
    • ヴィクトルのフリープログラム(勇利編)
      • いろんな意味で、ヴィクトルと対になっていることで、勇利のヴィクトルに対する思いが伝わってきて胸が痛い。
      • ヴィクトルと同じ振り付けにもかかわらず、ヴィクトルの動画をトレースして勇利に置き換えただけという部分がほとんどなく、勇利だけで動画を描き起こしている。完全に異常です。
      • ヴィクトルは2コマうちで、勇利は3コマうち動画にすることで、動きの滑らかさがなくなり、勇利のほうが不器用なことが伝わってきます。このやり方はうまいです。
      • 勇利はデブ設定なので、重心が低く、ジャンプもヴィクトルほど高く飛べてません。動きも少々堅い。
      • 特に、腕を伸ばす演技がヴィクトルよりぎこちなく、きちんと伸び切っていなかったり、動きの溜めがなかったりと、表現力がやや低いことが伝わってきます。とにかく細かいんですよ。こういう細かさがリアル。神は細部に宿ります。
      • 滑り始めたら顔つきが変わるところ。現実にもこういう選手は多くて、リンクの上では別人になってしまう憑依系ということが伺えます。ヴィクトルがリンクを降りても王子様を演じているのとは対照的です。
      • 最後のステップの表情が素晴らしくて、ニコ動で「あー落ちるー」「落ちた」というコメントが多発する事態に(笑)。それだけみんな引き込まれてしまった作画と演出です。あの場面は上述のごとく音楽が最高にいいので、相乗効果で盛り上がります。
      • 勇利はヴィクトルほど高難度なジャンプは飛べないと思うので、4回転が3回転になっていたりするとは思います。具体的には描写されないけれど、そうだろうなと推測できてしまうところがリアルです。
    • コンパルソリの件
      • フィギュアスケートのフィギュアというのは【図形】という意味です。この図形を氷上に正確に描くのがコンパルソリという競技で、一人で黙々とコンパルソリを滑る勇利を描くことで、彼の勤勉さや、スケートに対する誠実さといったものを表現していたと思いました。
      • コンパルソリは昔は試合でも行われていたのです。でも絵的に地味で観客が入らないということと、ジャンプはすごいのにコンパルソリが苦手な選手(伊藤みどりとか伊藤みどりとか)がどうしても不利になってしまうということで、試合から外されました。
      • にもかかわらず、あえてコンパルソリの場面を入れるという演出ですよ!このフィギュアスケート愛に感動しました。
    • ジャンプ描写について
      • トーループサルコウ、ループ、フリップ、ルッツ、アクセルという6種類のジャンプをしっかり描き分けています。さらに憎らしいことに、描き分け方がうまいんです。
      • たとえばトーループは左足のトー(つま先)を突く状態が見えるように横からのアングルで描く、サルコウはジャンプ直前に両足がハの字になるところをアップにする(一瞬。0.2秒くらいw)、ループはジャンプ直前に左足が右足の前に出て中腰になっているのがわかるように少しカメラを引く、フリップは逆ハの字的な状態から踏み切る(左足インサイドエッジ)、ルッツは左足がアウトサイドエッジになっている、アクセルは当然前向き踏み切り。
      • ジャンプ前後の動作も見事で、たとえば4回転フリップのときにスリーターンからすぐ飛ぶのは加点対象です(笑)。スリーターンで後ろ向きになった状態でしばらく滑って、溜めてから飛ぶ選手がいますが(というか多くの選手はそうなりがち)、得点は伸びなくなります。ヴィクトルはあらゆるジャンプの準備動作が短いので、優れた選手であることがわかります。
      • このアニメでジャンプの見分けができる人は、実際の試合のジャンプも見分けられるし、実際のジャンプの見分けができる人は、このアニメでも見分けられるはずです。だって本物と同じなんだもん。

以上、全然ざっくりしなかったけど終わり!ユーリだけで三連続書いてしまった。つまりトリプルだ!