大洋のエチュード練習開始の巻

テンペストがほぼ仕上がったので大洋のエチュードショパンエチュードOp.25-12)の練習を開始しました。先々週あたりに弾いたときはとても苦労したのですが、今日はあんまり苦労しませんでした。この曲は90%くらいの小節が同じような動きで構成されていて、残りの10%が違っているのです。そこに若干の難しさがありますが、これをクリアすればそんなに難しいことはないのではないかと思います。

  1. フレーズ終止部で、右手の2−5指でオクターブの跳躍が起こる。
  2. 左手にときどき1→5、5→1の指の交差が発生する。(8度でなく7度の箇所があるため)
  3. 再現部直前の転調などで、右手1→1、左手5→5という同じ指を連続して使う跳躍が生ずる。
  4. 最後のハ長調トニカのアルペジョで、左手の2−5指でオクターブの跳躍が連続する。

1についてはそれほど難しくないです。しかし2はなかなか大変です。この曲はほとんどが8度単位のフレーズのため、同音上での指の入れ替え(実際にはポジション移動で対処)が主体になりますが、7度の箇所では同音でなく隣接音に指を滑りこませる必要があります。隣接音がどっちも白鍵なのが救いですが、なかなか厳しいところだと思います。3に関しては多少テンポを落とせばOKでしょう。ちょうどエスプレッシーヴォにクレシェンドする箇所になるので、少しテンポを落としたほうが良かったりします。4は最後のハ長調トニカなのでミスタッチすると被害が大きく、気合いで跳躍するしかありません(笑)。
あと基本的な弾き方ですが、16分音符を正確に弾くのはNGです。「それはアカデミックには正しいけれど、音楽的じゃない」(byアーノンクール)。各小節の頭の1音を少し長めに弾くべきなのです。これを裏付ける資料が、バラード4番です。バラード4番はアーティキュレーションデュナーミクなどの演奏指示が非常に精緻に書かれてる曲ですが、コーダ前で大洋のエチュードと同じ形をしたフレーズがあります。そこでは、アルペジョの1音目に付点がついてます。ショパンのこういう付点は譜割どおり正確に弾くというよりも、付点のついた音に重みを与えて粘る一種のルバートを意味します。大洋のエチュードも同じように演奏した方がよいことは、音楽的にも明らかだと思います。
エチュードはバラード4番より若い時期の作曲のため、デュナーミクアーティキュレーションの指示は簡素です。そのため、演奏者が譜読みしながら補完していく必要があります。しかしエチュードだけを勉強していてはなかなか理解は難しいのです。このようなときに、詳しい演奏指示の書かれた他の曲の楽譜がヒントになると思います。