イェフィム・ブロンフマン ピアノリサイタルの巻

アンコール

残響成分の多いホールで、ベートーヴェンソナタ13番は全体的にフレーズが不明瞭になってしまいました。音色はとても美しいのですが、余韻が多く残ってしまうので速いフレーズが聞き取りにくかったです。「月光」はそこを完璧に修正していたのがさすがです。ピアノから出てくる余韻を減らして、すっきりした響きを作り上げました。音色の傾向は1曲目と同質なのですが、音響が全然違うのです。これは非常に高度なテクニックだと思います。よく見ると、強音を打鍵すると同時にペダルから足を離して、響きが落ち着いてから踏み始めていました。ただフィナーレなどはかなり強引で、力で押し切った感がなきにしもあらず。
後半、ブラームスソナタは全体にテンポが速く流れの良い演奏でした。ツィメルマンのCDだとやたらとガチン!ゴチン!という感じのタッチで重厚だけれども流れが悪いのですが、ブロンフマンは重厚かつ流麗という雰囲気にうまくまとめていました。第三楽章あたりからノッてきたようで、第四楽章では一気に音色が増えました。あとはもう一気にラストまで突進(笑)。アンコールも絶好調でした。ブラームスソナタのあとに、シューマンの間奏曲を弾くという流れもなかなか美しいと思います。革命のエチュードもおなじみの曲ですが、今日はまた一段と速くてすごかったです。速くてもきっちり細やかなデュナーミクが付けられていて、うねるような低音の表現が見事なのです
ブロンフマンは毎年のように来日しているのですが、室内楽だったりオケとの共演だったりしてソロリサイタルを聴いたのは今回が初めてでした。ピアノの鳴りの良さや音色の深さでは匹敵する人があまりいないので、これからも聴きたいと思います。