マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団の巻

チャイコンは第一楽章はオケがバラバラな箇所があり、イマイチでした。しかし第二楽章開始と同時にぐっと集中力が高まったようで、ピアノとオケの対話が素晴らしかったです。ブロンフマンのピアノもピアニッシモのコントロールが抜群で調子が上がっているのがわかります。第三楽章はヤンソンスがかなり速いテンポで開始したのですがブロンフマンが「負けてなるものか!」という勢いで返し、非常にスリリングに展開していきました。そしてラスト前の有名なダブルオクターブのカデンツァをものすごい勢いで弾ききったため、ヤンソンスはコーダでさらにテンポアップ。そのまま怒涛のような終幕で、ブラボー大爆発となりました。30分を切っており、ホロヴィッツあたりの歴代豪傑ピアニストと同タイムの疾走です。やっぱりこの曲は、オケとピアノが丁々発止になるような演奏のほうが良いと思いました。ブロンフマンは昨年ゲルギエフウィーンフィルラフマニノフ3番を弾いて大成功してますが、その再現のような大爆発に満足という人も多かったことでしょう。
後半のショスタコ交響曲デュナーミクの振幅が非常に大きかったです。かなりの音量が出ていたのですが、バランスに気を配ったところが多く見られ、緻密な管弦楽書法を存分に味わうことができました。演奏解釈的にはやや能天気というか、すこし勢いが良すぎるような気もしますし、弦楽器の音色などはもっと掘り下げて欲しいと思いますが、ロシアのオケではないのでそこまで要求するのはちょっと厳しいかも。ヤンソンスサンクトペテルブルク響でムラヴィンスキーのアシスタントをしていたのでロシアっぽくなるかなと思ったのですが、ゲルギーをさらに洗練したような感じでした。ロストロポーヴィチのような重厚長大苦悩満載よりも、躍動的な面を強調するヤンソンスやゲルギーの方がわかりやすいのは確かです。特に終楽章は再現部以降かなり速いテンポでしたが、だらだらしやすい旋律をアーティキュレーション明瞭に演奏させて、くっきりした輪郭を描いていました。