エヴァンゲリオン解説その6:ロンギヌスの槍

エヴァンゲリオンには聖書に書かれた用語がいろいろ登場しますが、意味合いをキリスト教&聖書に求めると、かえって理解が難しくなります。アダムもリリスも使徒も、たまたまそういう言葉を当てているだけで、実際にはキリスト教的な存在ではありません。今回は最も誤解されやすいと思われるロンギヌスの槍について解説します。

誰が何の目的でロンギヌスの槍を作ったのか
  • ロンギヌスの槍は、第一始祖民族が使徒のコントロールを目的として作った、一種の制御棒です
  • 機能は、使徒に別の遺伝子を融合させること(新たな使徒を生む)、使徒の活動を停止させること(殺す)です。
  • 活動停止範囲や強度は対象の状態に依存します。卵や胎児状態の使徒に作用させた場合は遺伝子融合が起こり、成体に作用させた場合には殺すことになります。
  • 要するに、第一始祖民族にとって望ましい新たな生命体を作り出したり、望ましくない生命体がはびこったときにリセットをかけるために使う道具です
ロンギヌスの槍の実体
  • 実体は制御用DNA*1を内蔵したATフィールド+アンチATフィールド発生装置と考えられます。劇中において機能紹介は一切ないのですが、そう考えないと描写の説明ができません。
  • DNAは任意で組み込み可能と思われます。槍が二重らせん構造を取る描写があることから、DNAを含んでいる、あるいはDNAそのものであると見なすのが自然です。
  • ATフィールドは槍単体で動作しています。衛星軌道上にいた第十五使徒を攻撃したときや、エヴァシリーズがエヴァ弐号機を攻撃する際にATフィールドを突き破る描写がありました。*2
  • アンチATフィールド発生機能はとても重要です。デストルドー(自殺願望:シンジ君お得意ですね)がアンチATフィールドの源とされており、S2機関を利用してこれを増強拡大します。アンチATフィールドを使徒のコアだけに作用させ、活動を停止させることが第一始祖民族の想定していた本来の用途であったと思われます。このときS2機関が変に利用されるとアンチATフィールドが広範囲に展開され、周囲の生命体も巻き込んでしまいます。*3
  • 量産型エヴァシリーズが使った槍は、オリジナルからコピーしたものと思われます。
リリスの制御
  • ネルフ本部地下のリリスはコアと魂を抜かれて、綾波レイに移植されています。人間には制御できない使徒を抑えるには、こうするしかありません。コアも魂もないリリスはただの生きた肉の塊ですが、強力なパワーを発しているため、放っておくとガンガン使徒を呼び寄せてしまいます。
  • このパワーを抑制するためにロンギヌスの槍を刺して、リリスの生体機能を停止もしくは大幅に低下させます。リリスにはコアも魂もないためデストルドーもリビドー(生存願望)も発生せず、安全に止まります。なかなか素晴らしいアイディアですね。
  • こうしてパワーの低下したリリス様は、体液=LCLをたれ流すだけの肉の塊になってしまいました。う〜む。
  • ゲンドウは時期を見てロンギヌスの槍を処分しようと考えていました。*4ただ、あまり早い時期に処分するわけにもいきません。ところが第十五使徒殲滅という大義名分できたので、ここで使用しました。冬月先生は最後の使徒が襲来する前後で処分しようとしていたと思われますので、このときのゲンドウの行動に驚いたのです。
  • ロンギヌスの槍を抜かれたリリスの肉体は足が生えて本来の姿に戻ります。*5
26話で月から勝手に戻ってきた理由
  • 以上でわかるように、ロンギヌスの槍デストルドーとの親和性が高いのです。26話において、シンジ君のデストルドーエヴァ初号機が全宇宙的に発信したため、それに共鳴した槍が一目散に初号機目指してすっ飛んできました。月からほんの数秒で到達していますので、光速の数十%という恐るべきスピードで飛んできたことになります。

*1:1995年時点ではDNAでよかったんですけど、いまどきの分子生物学だとRNAiになるのかしらん。

*2:このことから、槍自体が生命体ではないかという話もあるんですけど、槍単体では活動できないし遺伝子しか持ってないので要はウィルスみたいなものかと。

*3:セカンドインパクトサードインパクトがこれ相当します。アンチATフィールドの範囲コントロールすらできない状態で、セカンドインパクトサードインパクトをひき起こしたゼーレは無謀です。

*4:ロンギヌスの槍はゲンドウのシナリオでサードインパクトを起こすのには邪魔な存在です。

*5:その後、綾波レイが同化することでコアと魂が復活し、さらにシンジ君のデストルドーに共鳴して巨大化しました。