藤原真理チェロリサイタル@東京都庭園美術館新館サロンの巻

プログラム

アールデコ様式の洋館のホールで行われた正味1時間ほどの演奏会でした。聴衆は200人ほどで演奏者との距離も近いのですが、厚手のカーペットが楽器の響きを吸収してしまい、特にピアノ(ヤマハS4)はだいぶ線が細くなってしまいました。
ショスタコに関しては演奏前後のトークで藤原さん自身が話していましたが「この曲を作曲したときは28歳で、交響曲4番を批判されるなど圧力はあったものの、まだそれほど悩み深い状況にはなかったのではないか。特に私生活面ではけっこう幸せだったようで、それが反映されているように思う」という言葉どおりに、リズムを弾ませたり、舞踊風のアーティキュレーションを強調したりと、ロシアの南西側っぽいエキゾチズムを漂わせて面白かったです。この曲はロストロポーヴィチの録音をよく聴いていたのですが、どちらかという剛直一辺倒に近い解釈で非常に重く、ちょっと苦手な曲でした。しかし藤原さんの演奏はしなやかな中に、ショスタコっぽいウィットさや皮肉、透徹した視線などさまざまな要素が表現されており、とてもおもしろく聞くことができました。演奏技術的にけっこう高度な曲だと思うのですが、最後まで集中力を切らさずズバッと弾ききったのも素晴らしかったと思います。
バッハは以前も聴いたガンバソナタで、今回はピアノの伴奏ということもあってリズミックな面を強調した元気の良い解釈に変わっていました。フォーレとサン・サーンスはオマケですが、伴奏の山洞智さんがこの曲はフランス流奏法で極めて流麗に弾いたのが効果的でした。白鳥のラストでピアノのアルペジョが鍵盤を下るところなんか、音色といいフレージングといい、まさに白鳥が舞い降りる雰囲気が出ていて素晴らしかったです。