高田馬場管絃楽団 第69回定期演奏会の巻

プログラム
感想

新装オープンしてものすごく綺麗になった杉並公会堂の大ホールで行われました。小ぶりなタケミツ・メモリアル(オペラシティの大ホール)という感じのシューボックス式のホールで、残響がとても綺麗に抜けていきます。今回のババカンは前半が「ヘンゼルとグレーテル」と「ハフナー」で、後半がラフマニノフというプログラム。このオケの弦の音色はロシアものに合うだろうとずっと思っていたので、期待です。
まず前半ですが、え〜と、アンサンブルが合わないwこのホールが初めてということもあるのでしょうが、弦セクションと後ろの管楽器群でタイミングや音量が合わないところが多く「あれれ?」と思っているうちにヘンゼルとグレーテル終了。次のハフナーはかなり不安定で、正直なところこのオケには荷が重い感じ。メヌエットは重く、フィナーレのプレストも疾走感がイマイチでした。この難曲に挑戦した意欲はさすがですが、やはりモーツァルトってものすごく難しいんだなあと痛感させられました。
後半はさらなる難曲と思われたラフマニノフですが、これがものすごい名演で。モーツァルトで気になったスピード感の不足しがちな弦セクション*1、この曲においてはその欠点が全部長所になってしまいます。ラフマニノフ交響曲第2番って実は私の大好きな曲で、1時間ほどかかるクソ長い構成も、終わりそうでなかなか終わらないズルズルなフレーズ作りも、もうすべて愛しているんですけど、これほどまでに終わらないで欲しいと思う演奏にはなかなか出会えません。この曲にはこの弦の音色が欲しかったんです。サンクトペテルブルク・フィルもチェコフィルも、すっかり現代的でスマートな演奏になってしまって*2、もっとずっと濃ゆい演奏が聴きたい!と思っていた私の希望が本日かないました。ばんじゃーい(笑)。
第一楽章の序奏から「そうそう、私はこの響きが聞きたかった」。そして第一主題の「ミーーーミーーファソ〜〜ファミファミーー」の頂上での溜め!そのときのZBKさんはじめ第一バヨリンの皆様の身体の動きかた(ここはロシアの「こぶし」なので、身体もよじれるんです)をみた瞬間、これはイケると。あとはもう至福の響きに溺れる1時間でした。なぜこのオケはこんなに素晴らしい、甘くロマンティックな音色が出せるのかしら〜。第三楽章なんか悶え死にそうなほど素晴らしい。旋律はとことんロマンティックに歌われ、フレーズは自由自在にルバートされ、執拗に繰り返される旋律はリピートのたびに熱を帯びます。本当にたまらない。ロシアのオケでもなかなかできないことを、日本のアマオケがやってのけるんですから。複雑で難しいフィナーレもしっかり曲想を把握しきっていて、ロマンティックな第二主題は本当にた〜〜〜っぷりと、思う存分やってくれて。コーダの追い込みでも崩れることなく、しっかりお約束のラフマニノフ終止です。ブラボ〜。もう第三楽章からウルウルしっぱしで、帰りに鏡を見たら目が真っ赤だし(笑)。あ〜も〜、ほんと最高。このオケはこの曲のために存在しているのではないかというくらいの名演でした。
細かいことでは、金管セクションの人数が少なかったのが成功の要因かなと思いました。この曲は盛り上がるところは本当に派手なので、大抵は金管を増強するんですね。それでフィナーレのいいところでラッパ群にマスクされて弦が聞こえなくなってしまったりするんだけど、今回は普通の人数で演奏したので音量バランスが適正だったと思います。迫力を取るか、バランスを取るか、ということになりますが、濃密かつ緻密な演奏表現をするんですから、後者を選択するのが当然ですよね。あっぱれです。あと指揮者。微妙にシャイなところがある生真面目な人のようですが、ラフマニノフであそこまでロマンティシズムに溺れた表現が徹底できるのであれば、モーツァルトにはモーツァルトなりの表現があったのではないかしら。実情はわからないですが、練習時間的にラフマニノフモーツァルトだったであろうと思われるので、短い時間の中でも演奏をまとめ上げられるようになって欲しいと思いました。今後に期待。

*1:アインザッツが遅め(スーーッという感じでとても滑らかに鳴り始める。ザクッ!というインパクトはあまりない)、リリースが長めで、どうかするとズルズルしたサウンドになりやすい。

*2:指揮者がそれぞれテミルカーノフアシュケナージでしたから、あまり濃い表現にならないんです。