ユーミンのコード感覚の巻

寺岡呼人さん主催のGolden CircleというライブがNHKで放映されて、ユーミンとの共演ということで話題になっています。私もユーミンは大好きなので、懐かしい曲がいっぱい聞けて嬉しかったんですけど、未だにすごいなと思うのがダンデライオンの始まりの部分。「夕焼けに小さくなる♪」この2小節のコード進行です。
Eメジャー(add9th)→F#メジャー(add9th)

とても単純な進行ですが、感覚的にありえない流れなのです。イントロはEメジャー(add9th)→Aメジャー(add6th+9th)のリピート。つまりトニック→サブドミナントを繰り返すだけの、超マターリした感じで始まるんですけど歌が始まった瞬間にメジャー9thの平行移動です。これが大ショックでした。たぶん高校生くらいのときに初めて聴いて、当時ものすごく衝撃的だったのですが、いま聴いても変わらず衝撃的です。開始4小節の流れを見ると、E→F#→H→Eメジャー。つまりコード進行的にはトニック→ドミナント→トニックの間にクッションとしてダブルドミナント(ドッペルドミナント)としてF#メジャーを入れてることになります。通常こういう場合はベースのEを残して上の部分だけ移動して分数コードにするんです。試しにE→F#/E→H→Eにしてみてください。すごく自然で、無理のない進行です。ところがユーミンはF#/Eを使わずベースを含めてごっそり平行移動なので、トニックが不安定になって「え?2小節目でいきなり全音上に転調なの?」みたいな驚きを覚えるとともに、とても新鮮な浮遊感をもたらすのです。ユーミンの曲はこういった、あえて分数コードを使わない進行がいっぱいあります。とても素敵で、好きなところです。