のだめが弾いていた曲についての巻

先月に放映された「のだめカンタービレ・ヨーロッパ編」で、のだめが教会リサイタルで弾いていた曲について聞かれることが多かったのでちょっとまとめてみます。
まずモーツァルトの「きらきら星変奏曲」。古典派の変奏曲は元になるテーマを徐々に細分化していくのが基本構成です。なので、後半になるほど音符が増えて難しくなります。この曲も最初のテーマは非常に簡単でそれこそバイエル程度なのですが、最終変奏ではツェルニー40番くらいの難易度になります。特に、ハ長調のスケールやアルペジョを綺麗につぶを揃えて弾くことは意外に大変です。モーツァルトソナタを数曲弾いたことがあれば譜読みを含めてそれほど難しくないと思いますが、基礎的な技術の完成度というか、正確さが求められる曲だと思います。
次にモーツァルトの「ピアノ・ソナタ第18番」。これはモーツァルトのピアノ・ソナタとしては最も難易度の高い部類になります。私の作った難易度表だと10段階の6になります。バッハの影響でフーガっぽい形の対位法を大胆に使っていますので、バッハの予備練習をしていないと非常に苦労すると思います。
最後はラヴェルの鏡から「道化師の朝の歌」*1。楽譜どおりに弾くと難易度=10に相当する難曲です。3、4、5といった弱い指でのトリル、超高速な同音連打や重音グリッサンドなど、難しいテクニックのオンパレードです。親切な楽譜*2にはこれらの技巧的パッセージを弾きやすくするための改変アイディアが載っていて、難易度を下げることができます。スペイン風のフラメンコ・ギターを意識して作った曲なので、それっぽいニュアンスの表現が重要だと思いました。

*1:この題名、あんまり良くないです。後朝(きぬぎぬ)のことなので、もうちょっと色っぽい題名の方がいいと思います。

*2:ラヴェルピアノ曲の楽譜は春秋社版がおすすめ。2冊で網羅できます。