演奏家の旬についての巻

アルゲリッチのDVDを見ていて思ったのですが、この人ってやっぱり80年代初頭あたりまでが旬だったのかなと。フレージングとか、タッチのニュアンスとか、ひとつひとつはわずかな差異なのですが。演奏全体から伝わってくる雰囲気とか才覚とか、色とか、違うんですね。1フレーズ聴いただけで「うわ、すごい!」という感じがするか、しないか。DVDを見る限り、今のアルゲリッチはそれがあまりないと思います。といっても、私が数年前に1度だけ聴いた生演奏のときの彼女は絶好調で、それこそ「うわ、すごい!」の連続だったので、DVDに収録された演奏会がたまたま良くなかったのかなとも思いますが。
で、他の演奏家はどうなのかというと、例えばキーシンなんかはどう考えても例の「展覧会の絵」のときがピークのような気がするし、ロストロポーヴィチなんかは晩年は完全にテクニックが音楽性についていけない状況でした*1アンスネスのようにデビュー時からほとんど変化していないように見えるピアニストもいるのですが、演奏家の旬って意外に短いのかな〜と思ってます。
特に短いのが声楽関係。チェチーリア・バルトリというメッゾ・ソプラノの大スターがいますが、この人も15年くらい前の映像もすごかった。バルトリは今でも十分すぎるほど凄いのですが、15年前は声の通り方が完全に別次元で、もし生演奏の場に居合わせたら「ブラヴィッシマ〜〜〜!!」とか我を忘れて叫びまくりそうなほど圧倒的でございました。まあ、バルトリさんは今は今で別の魅力がありますし、15年前の調子でガンガン歌っていたら今頃は歌手生命の危機という可能性も高いと思います。

*1:だから指揮に専念しようとした