高田馬場管絃楽団第72回定期演奏会の巻

プログラム
雑感

クソ暑いのにワーグナー。クソ暑いのに第九。何考えてるんだかわかんない。でも、ワーグナー終わった瞬間の、後ろに座ったオバチャンたちの一言「弦楽器の音色が涼しいのね。爽やかな風が吹いてきたみたい。」これがすべてかと。もう少し図太さも欲しいかなと思うときもあったのですが、弦楽器、特に第一バイオリンが対旋律に回るときのフレージングや音色が絶妙で、毎度のことですが、とてもアマチュアに思えないのです。参りました。

ニュルンベルクのマイスタージンガー

いろいろなテーマが出てくるのですが、ひとつひとつの色や雰囲気をもっとガラッと変えてもいいと思いました。私ならそうする。6の和音の聞かせ方なども、もっとケレンを発揮してくれないと。全体的にちょっと不満の残る演奏でした。でも、ズルズル重くなかったのはよかった。オバチャンのいうように、爽やかなのですよ。第九の前だし、このくらいのバランスがいいかも。

第九

ものすごく上手いところと、アマチュアっぽいところが混在するのがこの楽団のチャーミングな魅力なのですが*1、同じ魅力を持った合唱団さきたまが加わったことで、より一層魅力が拡大しました(笑)。第一楽章はまとめにくいと思うのですが、かなり綿密に仕上げてあってびっくり。第二楽章はけっこう速く、ときおり崩れそうになるとすぐ建て直しが入ったりして見事。というか、なんでこんなにスケルツォうまいの?というくらい上手い。弦楽器を中心に、短くて速い動機と、息の長いフレージングを両立させていました。あと意外なところでリピートが入ったので驚いたのですが、新しい版の楽譜を使ったようです。第三楽章は、実は期待していたのですが、弦と管(特に木管)のニュアンスの差が歴然としていて、アンサンブルとして今一歩という感じ。今回は、全体として木管デュナーミクのレンジが狭い感じで、弱音が弱音にならないし、フォルテでは突き抜けてこないということで、ちょっと欲求不満が残りました。弦に関しては本当に期待以上に繊細で美しいフレージングと音色が随所で聞けて、最初に弦が入ってきたときは思わずウルリと来たんです。あと変奏される細かなフレーズを丁寧に丁寧に紡いでいたのが印象的。第四楽章に関しては、合唱団が男女で発声が違う点が違和感だっただけで、それ以外はノープロブレム。まず、チェロとコントラバスレチタティーヴォをちゃんと「歌ってる」演奏って、日本のオケでは初めて聴きました*2。このレチタティーヴォをきちんと歌ってこそ、歓喜の旋律が生きてきます。1200人収容のホールということで、ソリストさんも力まなくても存分に声が響き渡ってました。それにしてもこの四楽章、本当にオケとソリストの合唱のアンサンブルがよくて、息も合って盛り上がりました。だいたい第九なんてよっぽどのことがない限りわざわざ聴きに行きたくもないんですけど(長いから)、実際問題として確実に熱演になってアホみたいに盛り上がるし*3、今日みたいに演奏がいいと、最初は「おお、レチタティーヴォをちゃんと歌っている」とかクリティカルに聴いているわけですが、歓喜の歌が1回入って、展開部がやってくる頃にはもう音楽の流れに身を任せるテレサ・テン状態になってしまうのです。はい。

次回

サン=サーンスのオルガン交響曲だそうで、これまた盛り上がり系!期待です。

*1:上手いだけのアマオケなんて、面白くもなんともないでしょう?

*2:海外オケだと、ヘレヴェッヘ指揮ロイヤル・フランダース・フィルはしっかりレチタティーヴォが歌えてました。

*3:この曲はそういう魔力があるんです。