ネルソン・ゲルネルのショパン・バラード集が素晴らしかったの巻

実はショパンはすっかり食傷気味で、演奏会などプログラムにショパンが入っているだけで聴く気がなくなったりする今日このごろです(おいおい)。ですが久々に感動したCDに出合ったのでご紹介。ネルソン・ゲルネルのバラード集です。ワルシャワショパン協会が始めた全曲集の一環なのですが、当時のピアノでの演奏なんていう変な制約をつけてしまったので、リリース開始早々、いろんなピアニストが四苦八苦している様子が伺える微妙なシリーズになってしまいました。しかし、ゲルネルさんは違いました。
ゲルネルのどこが良いかというと、当時のプレイエルの特性をうまく生かした演奏表現を作り上げている、ということに尽きます。長く長くペダルを踏んで、残響が空気に溶けていくような幻想的な音響を作り出すなど、現代ピアノでは不可能な演奏表現が随所に見られます。実はショパンの楽譜には「これは現代ピアノでは無理だろう」というペダル指示があるのですが、当時のプレイエルであれば違和感なく適用できることがわかっています。音色表現も、特に弱音のニュアンスはものすごいレベルです。正直なところこのシリーズはゲルネルさんにお任せして、他のピアニストはお引取り願うべきではないかと思いました。