ホーリーランドの巻

名作。しかしエヴァの影響が濃厚。漢字+カタカナ表記の登場人物の名前もそうだし、主人公の造形は碇シンジそのもの。戦闘時に暴走すると手がつけられないところまで一緒(笑)。格闘シーン以外に説明的な描写が皆無なため、どこかドライというか虚無的な雰囲気があり、それがストーリー内容によく合っているが、そういう演出方針もエヴァに似ている。
最終的にエヴァと違った方向性になったのは、ひとえに「作者の人格が違うから」。どちらも作者=主人公なんだけど、こちらは作者が必要以上に入り込まないように気を遣い、大人の視点を取ったことで穏便にまとまった。ピークは17巻で、18巻は残念ながらお約束の展開(ぶっちゃけ蛇足的)だと思うが、周囲に認められる中で悩みながらも徐々に自我を確立していく主人公像をしっかり描ききったことは賞賛できる。ただ、主人公の日常生活面や家族との関わりは、もう少し描写が必要だと思った。自我を確立していく中で、両親との関係を取り戻していくなどのエピソードがあると、暖かみのあるリアリティをもたらすと思う。