ラファウ・ブレハッチ〜ショパンの真髄〜@ザ・シンフォニーホールの巻

日付が前後してしまって申し訳ありませんが、わざわざ大阪まで行ってきたのでレポートします。

ブレハッチの生演奏を聴くのはこれが初めてで、前半はソロ曲、後半は協奏曲というヘンなプログラミングが気になって行って来ました。オケは大阪センチュリー、指揮は大友さんです。
まず前半ですが、マズルカが非常によく、ショパンの小品を弾かせたら、現在世界最高のひとりのように思えました。カツァリスやルイサダのように変化球的にうまい人はいろいろいますが、変に個性的なことをしないで自然に楽譜どおり弾いてうまい、というのがすごいです。ディテールのデリカシーがものすごいレベルにあり、幼少時から徹底的に叩き込まれたことが伺えます。あとやはり3拍子の扱いが見事です。マズルカの微妙な付点リズムやアクセント表現、音を切ったり消すときの表現の洗練(ペダルを上げるタイミングが絶妙)などは古今東西のピアニストでも抜群で、「ショパンの生まれ変わり」とか言って絶賛する人がいるのもわかる素晴らしさです。また、単音でパッセージを連ねて歌わせるのが、どうしようもないほどにうまいです。だからノクターン20番みたいな軽めの定番曲でも、やすやすと聴衆をノックアウトしてしまいます。
その反面で、上記のように繊細なディテールの扱いはすごくレベルが高いのですが、大曲での構成感がよろしくないと思います。弱音はとろけそうな美音色ですが、厚いフォルテになるとバランスが崩れます。一本調子です。脇を締めてガンガン!と弾いてしまうのです。この奏法は意外と音量は出ないし、音色も伸びないし、和音はダンゴになって分離しません。これって私のようなレベルのレスナーですら先生に注意されることなのですが、彼の先生は修正しなかったのでしょうか?フォルテが下手な人はコンクールでは早い段階で落とされやすいとされています。しかし彼はいろんなコンクールで本選に残りました。わけがわかりません。コンチェルトでは無茶弾きしませんし、オケと合わせるのが抜群にうまいので「本選でコンチェルトを聴いて評価したい」という審査員がいたんだろうな、とは思うのですが、フォルテの音色が1種類しかない人が本選に残るというのがどうにも納得できず。
なお、最初に書いたようにショパン小品と協奏曲を弾かせたら現在世界最高峰の一人だと思いますし、とくにショパンの協奏曲2番フィナーレのリズム表現では他のピアニストでは聞くことができない「ポーランド的でありながら絶妙に洗練されたオシャレさ」があるので将来に向けて期待したい一人であることに間違いはありません。