ロルティのベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集の巻

http://www.amazon.com/Louis-Lortie-Complete-Beethoven-Sonatas/dp/B0040MF1XK
単発で出ているのは知っていたのですが、未録音の曲があって揃わないので待ちを決め込んでいました。そして今年の後半に未録音分(30〜32番!)を録り終え、めでたく全集として発売になりました。
全体としてはテンポやや遅めで、メロウに歌うちょっとセンチメンタルなベートーヴェンという感じです。でもデュナーミクの差が大きくフォルテでガンガン弾いたりするので、これまでのロルティからするとけっこう意外かも。デモーニッシュなところをあまり攻め込まないのはいつもどおり。あとは1つ1つのパッセージ、フレーズの扱いが異様に丁寧なのがポイントで、普通のピアニストなら弾き流してしまいそうなところもしっかりフレージングを作って聞かせます。これをハンマークラヴィーアなどの難曲でもやってくれるので、あの難解なフーガの絡まった網目がスルスルと解かれていくような錯覚を覚えます。さすがやのう。
まだ全部聴いたわけではないのですが、ワルトシュタインを普通のピアニストより少し遅く地味に弾いて、アレ?とか思わせておいて、終楽章で突如大爆発、ものすごいテクニックであの難しいトリルを完璧に入れてバッチリ華やかに聞かせたときは「うわーやった!すげーーーー!!」って一人で盛り上がってしまいました(笑)。ハンクラは上で書いたとおりですが、第一楽章だけ速め、あとは遅めです。後期の3曲はさすがに今年の録音だけあって演奏解釈の深みが段違いで、ピアニッシモの音色の種類も多く、非常に感動します。ロルティもいよいよこの高みに到達したんだ、という感じ。大半の曲は1990年代の前半に録音が終わっているのですが、最後の3曲は今年まで手をつけなかったのが本当に偉いと思います。
この人のCDはいつもそうですが、とても丁寧に録音されていて、美しいピアノの音色をたっぷり満喫できますので、ピアノ学習者はもちろん、聞き専の方にも超おすすめです。それにしてもロルティさん、生で聴く機会がないのが厳しすぎる〜。ビデオとか見る限り、録音と遜色ないレベルで生演奏してるっぽいので(すごすぎ)、なんとかして聴きたいものです。