昔のフィルム撮影セルアニメをブルーレイ化する意義について語るの巻

おなじみイデオンです。ひとまずブルーレイ版の画像を出しておきます。はてなだと大きな画像を使えないので、ライブドアブログで同じカットの比較をする予定。

このサイズにすると普通にキレイなアニメですが、トレスのかすれ具合とか、色トレスの段差(セルの厚みによってできる)がわかりまくりです。目に見えてわかるのは、画面下の腕の影の境目の変なヨゴレ。これがアニメ絵の具で色トレスしたときに出やすいムラです(セルアニメは、影の境目を影色のアニメ絵の具で、セル表面から色トレスします)。こういう1コマを見逃さなくなってはじめて真のアニヲタといえようw

80年代アニメ史的にものすごく有名なシーン。この背景の透過光をどうやって撮影したのかわかんなかったんだけど(たぶん目隠しガラスかな?と推測するので精一杯)、ブルーレイのキャプチャ画像を見るとネタがわかる。凹凸のある目隠しガラスの下から光を当ててます。目隠しガラスの彫りまで見えるのでこれで確定。光の前にガンドロワ。紙に描いたものを切り抜いてセルに貼り付けて一緒に撮影しなくちゃいけないので超たいへん。普通は黒いマスクを使って合成するんだけど、どうやら合成してない模様。

ガンドロワは横幅500kmくらいなので、引き⇒アップでデカさを表現する。ディフュージョン・フィルタを使ってぼかして光が回り込む様子を作り出す。CGアニメとなったいまでは、「パラ」とか「フレア」っていうエフェクトでやるみたいです。エヴァ新劇なんかパラの嵐だけど個人的には気に入らない。「どうも、性に合いません」というかんじ。←数少ないトロロフのセリフ。つーかエヴァ新劇:序はラミエルビームの透過光レベルが高すぎてなにがなんだか判別できないんですけど。狙ってやってるんだろうけど、気に入らない。エヴァ新劇の撮影の拙さを指摘しだすと止まらないからここでやめ。

ガンドロワの最期。この細い透過光も動画で描いて、多重露光します。動画を黒いラシャ紙に転写して、切り絵の要領でくり抜く。それをマスクにして下からライトを当てて撮影。切り抜けないパターンは、セルに描いたものを反転してマスクを作る。この映画では3人がかりで5000枚のラシャ紙を切ったって話wいまならCGでちょちょいですが。これ書いていて思い出したけど、たしか当時新人だった今西さんと、女性の方(現在の奥様?)が斬りまくったのではないかと思います。
ちなみにガンドロワから出ている野太い加粒子ビームはセルに白色で塗って、上からエアブラシでぼかしてます。イデオンはビームや噴射関係の表現は、ことごとくセル塗り+ブラシで表現していますので、立体感がある画像になります。*1よく見ると白いトレス線がわかるはず。エアブラシは4色も使ってます。赤、オレンジ、黄、緑。ふつうは1色、がんばったアニメでも2色です。完全に異常な世界ですw
イデオンはTV版打ち切りで仕事ナッシング&映画ガンダム大ヒットで予算だけはある、という特殊環境だからこそこういうことができたっぽい。ガンダムの儲けをトコトンつぎ込んだという話でございます。

主人公が死ぬ場面。この映画は登場人物全員死亡だけどwこの場面もどうやって描いたのかわからなかったんですが、このキャプチャを見てもわかるように太いマジックでグチャグチャに描き殴ってますね。このカットはたぶん動画まで湖川さんです。すげえな。ほんとうにすげえ。圧巻です。よくぞやった。泣けてくるわ。やっぱりこの作品が湖川作画の極致であることに間違いない。

2つの人類が全滅した後にハッピーバースデイ大合唱。わけがわかりません。
なにげなく見えますが、この画面を作り出すのに最低5回の撮影が必要です(汗)。ママ、赤ちゃん2人、背景、白い星、黄色い光。これらを一つのフィルムに重ねて撮影していきます。わたしもセルと背景を描いて8ミリフィルムで実験したことがありますが、ちゃんとこういう画になりました。アニメは1コマずつ撮影しますが、それを5回も繰り返さないといけません。氏にます。いまならレイヤー分けておしまいですなw

いや〜、でもこういう細かいところまでばっちり見えると、丁寧に作られた昔のアニメはブルーレイ化してほしいですね。できるだけリーズナブル価格で。イデオンは高すぎでした。
自分がブルーレイ化を希望するアニメは下記のとおりです。

    • カムイの剣(角川=りんたろう路線の最高傑作。ヲタ友とレンタルで見て、お互い感心することしきり)
    • 白蛇伝(日本アニメ史上の重要なマイルストーン
    • クラッシャー・ジョウ(安彦作画の到達点)
    • ヤマト関係。完結編は35mm版と70mm版の両方がほしい。現在入手できるDVD(70mm版)は、上下がトリミングされてます。ヤマト2199をやってる制作部隊がコミットすれば、ファンが怒るような商品にはならないはず。

※2012/12/07
いまごろになってこの記事が取り上げられるようになったので、いろいろ追記しました。

*1:ヤマトは完結編でビーム関係をことごとく透過光処理に変えてきて、光の強度を調節することでビームの向こう側が透けて見えるような演出をしたのとは対照的。