「風立ちぬ」がさらば宇宙戦艦ヤマトで、腐女子も必見の宮崎駿最高傑作だった件の巻

正確にはBLからのさらばヤマト。ネット界隈でホモ映画扱いになってるとは知らずに見に行ってビックリですよもう。
※以下ネタバレありです要注意。

1.本堀(本庄×堀越)の件
掛け算の前後は絶対にこれ。異論は許さないですよ、と。
詳細は腐女子の皆様におまかせしますが、演出はもちろん、声も演技も、ただのBLでした。ジブリ映画でこんなに濃厚なBLを延々と見せられるとは思わず、正直とまどいました。さりげない演出が腐った人を釣りまくると思うので、腐女子のみなさまは必見です。
しかし庵野さんが、あんなに受ボイスだったとは。演技は下手ですが、超絶に甘く色っぽい声で、あの声でモヨコさんを落としたんだろうな、みたいな。あと、本庄役の西島秀俊さんがイケボすぎる。堀越が惚れたのもわかるわ(違)。これ絶対、薄い本が出ますねw

2.さらばヤマトの件
ここからが本論。
本作を「まるでさらばヤマトみたいだ」「最初はいい意味で。そして悪い意味でも」と評したヤマト世代のマンガ家さんがいて、これが私を見に行く気にさせました。
自分としては、めちゃくちゃ泣ける、ひどいバッドエンド映画というところが、さらばヤマトだと思います。ただ、さらばヤマトは「死んで永遠に生きろ」という特攻美化精神で完結してましたが、風立ちぬは「ズダボロなバッドエンドだけど生きるしかないよね。どうすればいいかは、勝手に考えてね」っていう、宮崎駿らしい非常にエゴイスティックな思想を押し付けておしまいです。*1
あとラストシーンがひどいという人がいますし、その気持ちはわかりますが、自分としてはよくぞ言った、よくぞ描いた、という感じです。
大嫌いな主張が満載ですが、首尾一貫性という点では過去にないほど一貫しています。ようやく映画らしい映画を作ってくれたな、という感じすらしています。庵野さんの言い方だと、パンツ脱いでます。

3.演出の件
音声がとても主観的です。大勢人がいても周囲のガヤ音がないとか、わき役の口がパクパク動いても声が聞こえないとか、そういう場面だらけです。不要な情報は持ち込まない、という意識が徹底していると思いました。また、説明っぽいシーンはあえてマンガ風に描いて、わざとらしくならないようにしていました。うまい。この映画は、冒頭からしばらく誰もしゃべらないんですが*2冒頭からキャラクターがベラベラとモノローグで喋りまくって、雰囲気を台無しにした経験*3を、ようやく反省したようです。
あと、画面だけで移りゆく時代や季節を描写していたのも、よかったです。テロップで「昭和XX年」とか出たら、興ざめもいいところでした。わかってらっしゃいます。それと、挿入される音楽が良かったです。久石さんの曲は、正直イマイチだと思いましたが、随所に入る曲の選曲センスがいいですね。冬の旅の挿入には泣けました。
宮崎さんはポニョでも盛大にワーグナーしていましたが、いったいどういうきっかけでクラシック曲を聴きはじめたのだろうか。
幼女成分は相変わらずで「にいにい」の破壊力が半端ないんですが、作中で成人させるとは思わなかったわ。本物のロリコンは成長過程でも萌えるわけですね。う〜む、深すぎてついていけません。

4.アニメート技術が素晴らしかった件
箇条書きで。

    • トレス線が黒々と太くていいです。ナウシカの頃みたい。最近のアニメはトレス線が細くていけません。アニメーターは太い線で萌える絵を描くべきです。
    • モブ描写に命がけ。
    • ハーモニー処理がすばらしいので、きっと伝説のバスターマシンパイロットがやったんだろうな、と思ったら、やっぱりノノリリ*4でした。
    • 動画でTU、動画でFOLLOW、背景動画を交えつつ付けPAN、などなどカメラの動きを手描きで表現するカットが非常に多く、板野サーカスならぬ宮崎サーカスと名付けたいです(笑)。
    • ピアノはアニメっぽいニュアンスで、しかしちゃんと鍵盤と一致させながら弾いてました。ヱヴァQに負けてらんないよね(笑)。
    • 蒸気機関車の煙の描き方がロマンティック。
    • というか、メカニックの描き方が全体的にロマンティック。あえてリアルさを追わず、マンガっぽく仕上げたかった意図が見えて、好感が持てました。

ミリタリーヲタのくせに反戦とかふざけやがって、な言動が目立つ宮崎駿氏ですが、この映画の最後で「一機も帰ってこなかった」零式艦上戦闘機の無残な姿を描くことで、きっちりと落とし前つけてくれたので、文句なく最高傑作だと思えました。お疲れ様でした。やり尽くした感がある映画なので、これが本当に最後かもしれませんね。
くどいようだけど庵野さん良かったです。演技下手なんだけど、声質が良すぎます。甘くとろける癒され系←ほめすぎw

*1:さらに「とりあえずワインでも飲もう」と、最後まで腐女子サービスをかかさない駿であった。

*2:この時点では「庵野が下手だからしゃべらせないんだな」とか思ったw

*3:ナウシカ

*4:タカヤノリコこと高屋法子さん