内田光子 with マーラー・チェンバー・オーケストラ 協奏曲の夕べの巻

モーツァルト:ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調 K459
武満徹:弦楽のためのレクイエム
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K466

内田さんの弾き振りでモーツァルトのピアノ協奏曲+合間に武満さんの曲というプログラムです。

協奏曲は6型のオケで、より室内楽的なアンサンブルを重視しつつも、オーケストラ部分の演奏解釈はシンフォニックというのがユニークでした。

特に20番はいままでとはガラリと解釈を変えてきて、第一楽章ではあえて遅めのテンポを用いて濃厚なデモーニッシュさを演出。第ニ楽章で多少上向くものの、第三楽章は終始どろどろした情念が渦巻くような状況で、最後の最後、コーダでニ長調に転調したときにパッと陽が差し込むように場面転換したのは極めて鮮やかな手腕だったと思います。アゴーギクデュナーミクとも振幅が大きかったのもデモーニッシュな雰囲気を出すのに一役買っていました。

一つ間違えるとロマン派的な解釈になりかねないところもあったと思いますが、内田さんの独奏ピアノは細部に気を使いながらも折り目正しいもので、それが全体を貫く太い芯になっていたように思います。少し遅めなテンポになったことで、1つ1つのパッセージの特徴づけがより濃厚になっていたと思います。

武満の曲は指揮者なしのアンサンブルでしたが、音色が非常に多彩で、いくぶん硬い感じのあったモーツァルトよりもむしろこのオケには合っているのではないかと思いました。

今回はとにかく全く新しい内田光子の音楽とを聞かせていただいたので、非常に満足でありました。前回のディアベッリ変奏曲といい、近年の内田さんはアグレッシブな姿勢を貫いていますし、これからもさらに変わっていくのではないかと思います。