宇宙戦艦ヤマト2202 第1話に見る演出作法の巻(ネタバレあり)

f:id:Harnoncourt:20170226100101j:plain

宇宙戦艦ヤマト2202が公開されました。
劇場限定Blu-rayを購入したら、いつもの絵コンテ集だけでなくシナリオも付いてきました。

アニメ制作はシナリオ→絵コンテ→原画→動画という順で、絵コンテの段階で具体的な画面演出が入ります。また多くの場合は、絵コンテ段階でシナリオのカットや改変が行われます。今回のヤマトもなされていて、結果的に第1話の印象が大きく変わったと思われますので、その件に関して、感想を交えつつまとめたいと思います。

1.謎の惑星侵攻シーン
最初と最後のズォーダーのセリフ以外は全部カットされ、まったく説明無しの殺戮シーンが展開されます。
ガトランティスの大艦隊が侵攻した惑星が何なのかわかりませんし、おそらくその惑星に関係するであろうテレサというもの(これも人なのか何なのか説明がない)に対してズォーダーが執着している、という程度のことしか読み取れません。
これはなかなか思い切った展開です。ヤマトというとキーとなる惑星が映ればその星の名前のテロップが入り、女神様は「私はイスカンダルのスターシャ」「テレザートのテレサ」「シャルバート星のルダ」等々、、最初からしっかり自己紹介をしてきます。それをしなかったのは、往年のファンからすると新鮮に思えます。

2.浮遊惑星戦闘シーン
シナリオではガミラスやガトランティス人の描写もありましたが、古代(ゆうなぎ乗務員)のセリフ以外は、ほとんどカットされました。なので、いつどこで戦っているのか、さっぱりわかりません。
この戦闘シーンで印象づけなければいけないことはいろいろありますが、重要なものは(1)地球+ガミラス対ガトランティスという構図、(2)その現状に対する古代の焦燥感、(3)地球・ガミラス双方から承認されるアンドロメダ波動砲、(4)ガトランティスの特攻戦術、この4つになります。
古代の、沖田+兄譲りの戦術(敵陣に突っ込んで活路を見出す)を、絵だけで表現したのは見事です。整然と、しかし何も考えられていない密集陣形で消耗戦を繰り広げる地球・ガミラス・ガトランティスの艦隊戦に対する古代の忸怩たる思いを、ゆうなぎの戦い方で見せていると思いました。

3.ヤマト始動
シナリオでは古代の発案でヤマトを使用するのですが、カットされました。この部分がカットされたことで、結果的に「こんなこともあろうかと」風な真田さんになりました。これも非常にスピード感のある展開になったので、良かったと思います。
第2話で古代だけが軍事法廷のようなところに召還された背景には、上記のカットされた部分が影響していると思います。実際に動いたのは真田さんですから、彼も召還されるべきなのですが、ガトランティス兵自爆事件の後処理を優先させられたのだと想像します。

以上まとめますと、適度なカットが入ることでテンポが速くなって展開に推進力が生まれ、観ている側に謎と想像の余地を与えた第1話ということになると思います。

 

**** 第2話について ****

第2話のテーマは「自分たちはこんな地球のために戦ってきたんじゃない」です。
さらば宇宙戦艦ヤマトのときは、そうだろうなあ、くらいに思っていていました。しかし実は現代でも同じだろうし、いつの時代でも、人々は同じことを考えていたのではなかろうか?という、福井さんらしい問題提起ではないかと思いました。
また、大戦艦の特攻やガトランティス兵の自爆は、さらばヤマト時代はカミカゼ戦術のメタファーに見えたのですが、現代の感覚ではまさに自爆テロです。同じことをやっても、時代が変わると見方も変わるということを最初から示しているのが重要だと感じました。