宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第三章 純愛篇の劇伴についての巻(ネタバレあり)

いよいよ旧作とは異なる展開に入ったヤマト2202ですが、それと同時に重要な場面で新作の劇伴が用いられました。かなり長い尺で、2曲あります。

第二章までのヤマト2202における新曲は、月のサナトリウムの場面で使われた曲のみです。(アンドロメダの新アレンジや、ヤマト主題歌や白色彗星のモチーフなどを利用したバリエーションは除く)

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第三章では、8話と9話で新曲が出てきますが、8話に出てくる新曲は途中でカットされ、9話でフルで流れるので、ここでは9話に絞って述べます。

まず9話の音楽演出は、かなりユニークなものになっています。どういうことかというと、すべての劇伴の尺がかなり長く、しかもすべてまるまる使い切るのです。

9話の冒頭は8話から続く戦闘シーンですが、ここでは全く劇伴が入りません。惑星間弾道弾が出てきても入りません。そして、次の場面から劇伴が始まります。

No.1 ズォーダー演説(その1):白色彗星のテーマバリエーション(チェロ、コントロバス)→戦闘場面へ移行

No.2 ズォーダー演説(その2):アケーリアスのテーマ(新曲)スキャットの旋律は旧作っぽさがありますが、二六抜き風のメロディは宮川泰先生はあまり使わなかったので新しさあります。

No.3 ヤマトは囮になる!:ブンチャカヤマト。2202では初登場ですが、この曲がはじまったらヤマトが勝つのだろうという見通しが立ちます。よかったですね、とならないのがこの9話。

No.4 ズォーダー演説(その3):ズォーダーの愛のテーマ(新曲)素晴らしい名曲。初見のときはドラマティックな曲だなあくらいにしか思わなかったんですが、2度めに見たときはピアノのメロディが入ったとたん滂沱の涙ですわ。泰先生だけでなくハネケンまで降臨させるとは。大変美しいメロディでどこがズォーダー?と思うのだけど、最後に白色彗星のモチーフが回想されます。ここまでがAパートです。

(追記)さっそく採譜して演奏しました。

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No.5 古代の通信:「哀しみのヤマト」がフルで流れます。ネタバレしますが、ここからの演出は「さらば宇宙戦艦ヤマト」のラストシーンをオマージュします。

No.6 選ばせない&選ばない:「大いなる愛」(新バリエーション)。音楽が始まる瞬間に効果音を消して音楽だけを聞かせる演出。後半はヴァイオリンソロで、ヤマト主題歌のモチーフまで挿入される素晴らしい変奏曲。ヤマトのモチーフのところで転生体が自爆していきますけど、恐怖以前に泣けてしまうのは完全に音楽のためです。そしてズォーダーの「実に虚しい」というセリフが、二人の愛を否定するのです。

No.7 古代と雪のシーン  :「想人」(ニ短調バージョン)。スキャットから始まり、それ以降はさらばのこの場面(下の動画)と同じ曲です。終わり方は「碧水晶」の最後と同じ和音に変わっていますので、私が提唱した想人と碧水晶(虚空の邂逅)が姉妹曲という説が実証されたのではないでしょうか(笑)

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ここもやはり効果音がなく、スキャットをひととおり聞かせてからセリフが始まるという、劇伴最優先演出です。最後の減七アルペジョのところでズォーダーの回想が入るのがドキッとします。この部分のズォーダーの声にはそれまでと違って私的な感情が入っていたので、彼の過去になにがあったのか、とても気になります。「また繰り返すのか」の「また」の部分がわずかに震えています。すごい演技です。おそらくこの後のエピソードで補完されるでしょう。

以上、9話で使われた劇伴は7つで、途中でカットされた曲は1つもなく、音楽に合わせて画面の尺を調整したものになっています。劇伴のチョイス、新曲の素晴らしさ、効果音やセリフとのバランス、声優の皆さんの演技などどれもすばらしく、音響監督の吉田さん入魂の1話だと思います(声優への演技指示も音響監督の仕事です)。自分はこの9話が現時点でのヤマト2202のベスト回だと思っております。

ヤマト2202の劇伴の使い方は少し不満がありましたが、第三章と、特にこの9話で完全に払拭してくれたので、これから非常に楽しみになりました。

また先日のマクロスのコンサートでも思ったのですが、「想人」のように自分が長年かけて思い入れをもって演奏した曲と全く同じものを公式で演られると、いろいろこみあげてきてものすごく泣けてしまいますね。