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さらば宇宙戦艦ヤマトを力強く否定した宇宙戦艦ヤマト2202 第六章 回生篇 の巻(ネタバレあり)

harnoncourt.hatenablog.com

以前こんな日記を書いていたのですが、ヤマト2202は第六章でついに明確にさらばヤマトを否定しました。実は公開前にYouTubeにアップされた冒頭11分ですでにさらばヤマト的要素(愛のために戦って死ぬ)が否定されています。逃げろ、生き延びろ。これは旧第一作や2199で沖田艦長が言っていたことでもあります。明日のために今日の屈辱に耐えて生きるというのは、おそらく松本零士氏の考え方だと思います。

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さらばヤマト後に作られたヤマト2は、松本零士氏の意向で異なる結末になっていますが、ヤマト2202第六章はそちらに寄せる方向性を打ち出しつつ、もっと根源的なところで生きるとはどういうことか?他人を愛すること、他人を信じることとはどういうことか?という命題をしっかりと伝えようとしていると感じました。

今回活躍する銀河は人間らしく泥臭く生きようとするヤマトとヤマトクルーに対するアンチテーゼであり、そのための舞台装置でしかありません。さらばヤマトではアンドロメダがその立ち位置だったのですが、尺の関係で描写が薄く対比が明確になっていませんでした。しかし今回はこの舞台装置をものすごくうまく使っています。すったもんだのあげく、真田さんの一喝*1で目が覚めた艦長の藤堂によって*2極めて劇的にAI制御艦という存在が否定されます。もちろん、AIで動いている艦をマニュアル操作に変えていきなりうまく運用できるわけがないので、その前に銀河に移乗した島が銀河クルーを徹底的に鍛えるシーンが入るという念の入った伏線もあります。

そしてアンドロメダも旧作では描かれなかった極度に自動制御された戦闘シーンをしっかり表現した上で、優れた人間に制御されたAIはとても強く、ときに人間臭い振る舞いさえする、というところまで突っ込んだ描写がなされました。モニターに波動砲シーケンスを再起動するRESTARTの文字が表示されたときは胸が熱くなるものがありました。AIに感動させられてしまうとはおそろしい。
あとは土方さんの大演説です。ヤマト2では最終回でテレサが「勝って帰るより負けて帰るほうが勇気が必要(そしてあなたにはそれができる)」といって特攻しようとする古代を諭しますが、2202では土方が「死ぬな、屈辱にまみれても生きろ」そして「人間は弱い。間違える。でもそれがどうした!それこそが人間の特権だ!」と言い切ってトドメを刺します。
コンピュータやAIによる管理を否定するドラマはSFではありがちです。人間が主導権を取り戻す展開は、やはり見るものに対して強いカタルシスを与えます。それと同時に、さらばヤマトのあの終わり方をも力強く否定したセリフだと感じました。

すでにいままでの伏線も回収されていますし、テーマ的にはヤマト2202はもう結論が出たと感じました。あとは3つの星と、それに関わる人々のドラマがどのような結末を迎えるかという点のみが残っています。
古代はしぶとくズォーダーの暴走を止めようとしていますけれど、できっこないのは明らかなのでまだ波乱はあると思います。どう考えてもズォーダーの暴走を止められるのはサーベラーだけですから。

第六章は根幹となる野太いストーリーがメインでありつつも、ディテールのこだわりも多く見応えがありました。アンドロメダは装備をフル活用ですし、ようやく陽の目を見たレギオネルカノーレも11番惑星のときと同じように波動エネルギーの共鳴で崩壊します*3
あとズォーダーがアクエリアスについて語ったので、これは次作の伏線として使ってくださいね、でも完結編と同じにするんじゃねえぞ、俺はここまでやったんだからな、という福井さんのメッセージだと捉えました(笑)

今回はヤマトはロマンティックな作品だということを改めて強く感じました。
人間は間違えるから強い。そのとおりです。それならばAIも同じように間違えるルーチンを用意すればいいんです。実際、試行錯誤するルーチンを備えたAIが描かれた作品もあります。福井さんがそれを知らないはずはないのです。でもヤマトは意図的にその部分をぼかして描いています。
たとえば数十隻のアンドロメダ級が、ガトランティスを真上から攻撃*4するけど通用しないシーンは、AIの推測が失敗した例です。そこから、山南さんのアンドロメダが銀河AIのフィードバックを受けて重力源を破壊するのが正解ルート、という流れなんですけど、わかりにくいですね。アンドロメダや山南さんがいきなり重力源を見つけるはずはなく、銀河が白色彗星の重力限界を調べているうちに情報がAIに蓄積されて、「あのへんが重力発生源だから危険」「でも上部は比較的安全だからこちらから攻撃したほうが被害が少なくて済むはず」という推測を立てていたと考えるほうが自然です。
でもこの部分を強調するとAIって使えるよね!という話になって、戦う男&燃えるロマン~から逸脱してしまうので、意図的に描かなかったと推測しました。

いや~でも第六章は本当によかった。
初見のときは「おーすげー( ゚д゚)」とアホみたいに見てましたが、二度、三度と見るうちにシナリオのディテールの作り込みの細やかさがわかってきました。特にミルの「やったか!?」(やってない)がお気に入りのセリフです。このときのすごく嬉しそうな顔がまた笑えるw

*1:真田さんは実は機械を憎んでいるという旧作設定が頭をよぎった瞬間

*2:この藤堂のドラマも印象的で決してちょいキャラになっていない。

*3:あんなもの必要なのか?とずっと思っていたのですが、このための伏線と思えばまあいいかと。ただ第11番惑星関係のエピソードは尺を取りすぎたとは思います。

*4:真上と真下が脆いという旧作設定のオマージュでもある