スティーブン・オズボーン ピアノリサイタル@トッパンホールの巻

プログラムはベートーヴェンピアノソナタ30、31、32番でした。
デュナーミクが幅広い(ピアニッシモからフォルティッシモまでのレンジがとても大きい)一方で、テンポ変化や節回しの部分は端正というかストイックですし、ものすごい大音量でも破綻しないので、ノーブルな印象を与えるピアニストです。耳栓をして弾いているという話を聞いたことがあったんですが、あれだけ大音量だったらそのほうが安全だろうなと思いました。

テンポは全体的に速めで、20分間の休憩を入れても90分足らずで終わってしまいましたが、録音で聞くよりも生き生きとした生命力あふれるベートーヴェンという感じでしたし、なにより音楽の密度が高かったのでとても満足できました。

演奏した曲を録音したCDが売っていたので買って聴いてみたところ、完成度は極めて高いものの、30番だけは生演奏より遅めのテンポでやや安全運転ではないかという気がしましたが、31番と32番は生演奏とほぼ同様でした。音色も実演と極めて近くて、CDと実演の差が少ないピアニストだということがわかりました。

オズボーンさんはこのブログにはときどき登場していて、特にラヴェルの全集は高い評価をしています。来年からはプロコフィエフに取り組むそうです。ラヴェルプロコフィエフは似ている部分もあると思うのですが、ラヴェルを弾くフランス人はプロコフィエフなどロシア音楽は弾かず、ロシア人はラヴェルなどフランス音楽を弾かない(ロシアのピアニストはフランス音楽には不向きな人が多い)という傾向があります。ラヴェルプロコフィエフも好きな自分としては、両方を弾く人が出てくるのは嬉しい限りです。

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