ポール・ルイスのベートーヴェン ピアノソナタBOXの巻

在宅勤務中に聞くCDシリーズ。今日はポール・ルイスベートーヴェン ピアノソナタ全集です。

Beethoven: Complete Piano Sonatas

Beethoven: Complete Piano Sonatas

  • 発売日: 2009/11/10
  • メディア: CD
 

聞いていたBOXがこれ↑なのでリンクを貼っていますが、ピアノ協奏曲とディアベリ変奏曲も入った全集がリイシューで出ているので(下記)みなさん買ってください。 

Complete Piano Sonatas

Complete Piano Sonatas

 

32曲が全部良い演奏です。派手さはありませんが、タッチの制御が細部まで行き届いていて、特にピアニッシモメゾピアノの強弱表現の精度がすさまじく高い。そのため一つ一つのフレーズの説得力が半端ありません。21世紀に発売された全集の中ではベスト3に入ると思います。ヴィルトゥオジティ(名技性)まで含めて楽しみたいならアルフレッド・パールの全集をおすすめしますが、じっくり腰を落ち着けて聞くならこのルイス盤を勧めたいです。

おもしろいのが、ワルトシュタインやハンマークラヴィーアといった華やかな曲でもどこか落ち着いた足取りに聞こえることです。決してテンポは遅くないのですが(ワルトシュタインのフィナーレなどは相当に速い)、絶対に弾き飛ばさないし、急いで突っ込むようなことがないので、音符が込み入っている場面でもドタバタしないんですね。激しい曲でガチャつかないベートーヴェンソナタは珍しいので最初のうちは面食らったんですけれど、とにかく落ち着いて聞けるので、慣れたらとても気持ちよくなりました。

で、この落ち着いた足取りのもたらす見通しの良さが生きるのが、月光の第一楽章などになります。最初から最後までが一筆書きのような演奏です。一筆書きなんだけど、大小のさまざまな起伏も丁寧に表現されていて、マクロ的な視野の広さとミクロな視点でのディテールの美しさが見事なバランスで共存します。このピアニストの最大の美点はここにあると感じます。本当に素晴らしい全集です。