鬼滅の刃 無限列車編 夢の中の竈門炭治郎のうた/羽生結弦選手のエキシビジョン「春よ、来い」の2曲を演奏してUPしましたの巻

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この曲は昨年末からスコアを書いていました。「竈門炭治郎のうた」のメロディは当然知っていたので、コーラスとオーケストラが入る部分をなんとなく作りました。リズムは水戸黄門っぽくなってしまいました(笑)ソフト音源でのオーケストラ演奏もだいぶ慣れてきましたし、記憶だよりの捏造の割に完成度が高くなってよかったです。

※使用音源
・ストリングス:Vienna SYNCHRON Strings pro
金管:Cinematic Studio Brass、Vienna SYNCHRON'zed edition(トロンボーンのみ)
木管:Vienna Instruments Woodwinds
・打楽器:Spitfire Hans Zimmer Percuttion Pro、Vienna SYNCHRON'zed edition
・ピアノ:Ivory II American D
・空間系:Vienna MIR(初使用)、C2-B2

トロンボーンは、Cinematic Studio Brassだと高いDの音が出なかったのでViennaを使いました。Viennaは他のメーカーより発音域が広いことが多いので助かります。

 

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全日本での圧巻の演技(特にフリー)に続いてのメダリスト・オン・アイスでの「春よ

、来い」にやられました。表現者として一段と円熟を感じさせる素晴らしいエキシビションでした。旋律と伴奏が一体化したピアノアレンジも素晴らしくて、とても弾いてみたくなったので耳コピして録音しました。

※使用楽器
・ピアノ:Ivory II American D
・リバーブ:LX480L
・その他エフェクト:iZotope Neutron 3 Adv. 、Ozone 9 Adv.

最後になりましたが、今年もよろしくおねがいします。

劇場版 鬼滅の刃 無限列車編のアバンタイトル曲を演奏してUPしましたの巻

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鬼滅無限列車編のアバンタイトルの曲は「炎」のアレンジだということは誰でもわかると思いますが、映画を見ながら劇伴を耳コピするのは至難の業でした。しかし、鬼滅の刃オーケストラコンサート~鬼滅の宴~のアンコールでこのアバン曲が演奏されたので、これ幸いと採譜して演奏しました。

この程度の長さの曲であれば、主要な音を拾うこと自体は全然難しくないです(さすがに慣れました)。しかし演奏表現がとても大事で、なにしろ映画を見た人はみんな知っている曲なのですから、フレージングやデュナーミク(強弱変化)まで丹念に聞き取って、できるだけ詳細に採譜しました。そのスコアを元に、自分が指揮者になったつもりでDTMでオーケストラを演奏させるという行為にチャレンジしました。パーカッションが8種類もあって空間処理などが大変でしたが、想定したよりうまくできたと思ってます。

弦楽器群のクレシェンドやディミヌエンドのタイミングを合わせるのが難しかったのですが、やりたい演奏のイメージが固まっていなかったのが最大の原因で、いろいろ試行錯誤したので時間がかかりました。具体的な音が頭の中で鳴っていないとだめですね。

 

※使用した音源など

・弦楽器:Cinematic Studio Strings
金管楽器:Cinematic Studio Brass
木管楽器:VSL Woodwinds
・打楽器:Hans Zimmer Percusstion Pro(ティンパニ、大太鼓、スネア)、VSL Syhcnron'ized Special Edition(グロッケン、シンバル、ウインドチャイム)、Toontrack Superior Drum 3(カバサ)、EW QLSO(鈴)
・エフェクト:2CAudio B2(空間系)、iZotope Neutron 3(EQ)
・マスタリング:iZotope Ozone 9 Adv.
DAWMOTU DP 10

※ポイント
オーケストラの後ろの方にある楽器は、奥の方で鳴っているようにサウンドメイクしています。Hans Zimmer Percusstion Proのようなマイクを選べる音源だと距離感の演出は容易です。VSL Woodwindsはオンマイクで残響のないサウンドなので、EQでハイをカットした上でVienna Instruments付属のエフェクト(リバーブ)で奥行きを与えています。

※今後の課題とか
Cinematic Studioシリーズはベロシティでアタック速度やレガートのニュアンスが変化するんですけど(ベロシティスイッチといいます)、段階的変化なのでどの程度のベロシティ値でスイッチするのか探りつつやっていて時間を要しました。ちゃんと調べましょう。

B2はとても重いプラグインです。でも アンビエンスがすごくリアルなので気に入りました。VEPでインスタンス金管木管・弦・打楽器の4グループに分けているんですが、木管以外の3つのインスタンスに1つずつB2を入れてしまったのでかなりCPUを食ってしまいました。インスタンスのバスをまとめる方法を検討しましょう。

 

新・エヴァンゲリオン解説:第五回 空白の14年間とサードインパクトについて

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破からQの間の14年間に何があったのか、まとめてみました。やはり破のラストに入っている予告編が重要なキーポイントです。

<おさらい>

  • 新劇場版の世界は旧劇場版のシンジの願いによって再構築された世界と考えます。
  • 序や破で全裸のカヲル君がいた月は旧劇場版の世界です。
  • 新劇場版でアダムスや疑似シン化したエヴァの頭上に生じる同心円状の構造は「バラルの門」です。
  • バラルの門が旧劇場版の世界と新劇場版の世界をつなぐゲートです。
  • ゼーレのモノリスは旧劇場版の世界にいて、新劇場版の世界に干渉してきます。この干渉のために必要なのが、神と魂を繋ぐネブカドネザルの鍵と考えられます。「神と魂を繋ぐ」ということは、ゼーレの魂が新劇場版の世界に干渉するために、鍵と神様(アダム・リリス)が必要ということで、おそらく契約の主である新劇場版のリリスを経由して干渉しています。なお、ゼーレのモノリスエヴァQでなぜか新劇場版のネルフ内に存在していますが、これについては後述します。
  • 新劇場版でゼーレが言ってる人類補完計画【旧劇場版のシンジにより中途半端に再構築された新劇場版の世界は補完すべき対象なので、インパクトでインフィニティ化させてバラルの門を通過させ、ガフの部屋(旧劇場版の世界)に導いて魂を浄化したい】みたいなものだと思います。地球まるごと補完するのが目的のようで、地球全体がコア化して赤くなっていきます。

それでは、14年間に起きたことを解説を開始します。まずはエヴァ破のラスト前の展開から。

  • シンジが疑似シン化(第一形態)したエヴァを用いて、使徒のコアから綾波をサルベージします。このとき、コアが綾波の姿に変化してそのまま初号機と融合します(新劇場版のコアは一貫して赤色です)。初号機は使徒のコアと融合してした結果、コアが2つになります。旧エヴァ的に考えると知恵の実と生命の実を取り込んだ形になりますので、疑似シン化第二形態になり翼が生えてバラルの門が開きます。この段階ではまだサードインパクトは始まっていませんし、初号機はバラルの門を開いただけ、つまりトリガー(きっかけ)として働いただけです。
  • エヴァンゲリオンMark.06登場
    Mark.06に搭乗したカヲルが、このバラルの門の上(旧劇場版の世界)からカシウスの槍を投擲します。初号機はバラルの門を通過してきた槍に貫かれて機能停止し、サードインパクトは未然に防がれました。これがニアサードインパクトと呼ばれるものです。Mark.06もバラルの門を通過してシンジのいる地球へやってきました。渚カヲルは今度こそシンジ君を幸せにできるのか!?(ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破、終了)

空白の14年間(破最後に流れた予告編の内容)について

  • レイとシンジを取り込んだまま凍結される初号機
    サードインパクトを起こしかけたのですから凍結は当然です。初号機はカシウスの槍で貫かれた状態で封印されていたのですが、ほどなくしてカシウスの槍を使わなければならない事態(第12使徒によるサードインパクト)がやってきたので、槍を抜かれます。その後、初号機は宇宙に上げられて飼い殺しになります。
  • 廃棄される要塞都市、幽閉されるネルフ関係者
    第3新東京市もめちゃくちゃなので破棄されました。ネルフ関係者はヴィレの前身の組織が絡んだ国連関係の組織に幽閉されたと思われます。エヴァ2号機はもともとユーロネルフのものですから、ユーロネルフに戻されたと思われます。ユーロネルフはヴィレと関係がありそうですね。またこの段階でネルフに残ったのは、おそらくカヲル、マリ、ゲンドウ、冬月です。
  • 胎動するエヴァ8号機とそのパイロット
    8号機を作ったのはゼーレと思われますが詳細は不明です。旧劇場版の世界で作るとするとアダムスの器になりそうですが、そういうわけではなさそう。パイロットはもちろんマリですね。
  • ゼーレの子供たち(Children)が会議中。立入禁止。
    4人の影が見えているのですが、このうち2人はマリとカヲルで確定でしょう。またChildren チルドレンは旧作の用語なので、マリとカヲルは旧劇場版の世界と関係のある存在ということが極めて強く示唆されます。マリが真相を知っていそうなのはゼーレと関わりがあるからで、旧劇場版の世界も知っていると思われます。また、その後に「マリとXXXXXXが会談」というテロップが入りますが、Qの終盤の状況を見るにマリはカヲルのことをかなりよく知っているので、カヲルが相手だと考えられます。
  • 何も情報がない第11の使徒はいろいろな説が思いつきますが、ひとまずエヴァMark.06、8号機(マリ)によって殲滅されたと考えることにします
  • ドグマへと投下される6号機
    リリス接触した第12の使徒によって起きたサードインパクトをコントロールするために投下されたと考えるのが自然です。第12使徒綾波のクローンを用いた自律型(つまりダミーシステム使用)Mark.06に侵食・融合してしまい、最終的にMark.06がリリスもろとも槍を刺してサードインパクトを停止したと考えられます。綾波のクローンを使っているので、Qのリリス綾波そっくりになります(Qで冬月が明らかにした情報により、新劇場版の綾波リリスから生まれたものではなく、純粋にユイのクローンと考えられる)。ちなみにこのときに使った槍はロンギヌス+カシウス(カヲル君由来)のセットだと思われます。カシウスの槍は後にロンギヌスの槍に変化してしまいます。槍が変形自在なのは旧劇場版でも明らかです。
  • サードインパクトは終盤で止まってしまったので、行き場をなくしたインフィニティのなり損ないが大量に発生しました。どこに行くつもりだったのかって?バラルの門を通ってガフの部屋(旧劇の世界)に行くに決まってるじゃないですか。
  • ゲンドウと冬月はどこか寒そうな地域に行ってますが、おそらくヴンダーとMark.09を得たと思われます。Mark.09はヴンダーの主なので、この2つはセットです。ヴンダーを作っていたのは、マリのいた北極のベタニアベースもしくはその付近と思われます。AAAヴンダーは、3Aヴンダー=バラバラにした第3の使徒の部品をもとに作ったものです。よってヴンダーは一種のエヴァということになります。
  • Mark.06や09の件もそうですが、ゼーレは旧劇場版の量産機や使徒からエヴァを作っているので、8号機も使徒から作っている可能性が高いです。となると、使われた使徒は第11の使徒ということになります。
  • ゲンドウは何らかの方法でゼーレのモノリスの実体を旧劇世界から新劇場版の世界に持ってきます。なぜ持ってきたのかというと、契約の主(新劇場版の世界のリリス)が停止状態になったことで旧世界のゼーレと意志疎通ができなくなったためです。さらに、ゼーレから情報を引き出した上で用済みになったら抹殺したかったのでしょう。
  • その後、ヴィレがブンダーとエヴァ8号機を横取りしました。これはゲンドウ君&マリの計画通りだと思います。

新劇場版:Qの補足

  • 「諦観された神殺し」の神について
    再構築された新劇場版の世界で神と呼べるものはアダムスとリリスだけです。エヴァQで覚醒したエヴァ第13号機が擬似シン化状態を超える形態にまで移行しましたが、それでも神と等しい存在にはなっていないと考えられます。
    そんなわけで「諦観された神殺し」というセリフに出てくる神はアダムスでもリリスでもなく【ゼーレにとって中途半端な新劇場版の世界】を創造した神様と考えられます。それは旧劇場版の世界にいるはずです。旧劇場版の世界に行くにはバラルの門を通らなければなりません。おそらくリリンがリリンの状態のままバラルの門を通るための仕組みがMark.09とヴンダーなので、ヴンダーは神殺しの船と呼ばれます。
    この神様が何者なのかが問題です。単純に旧劇場版のシンジのことだとは考えられない事情があります。月にいた全裸カヲル君のセリフ(また三番目とは~会えるのが楽しみだ)から、旧劇場版の世界にはシンジはすでに実体として存在しないことが示唆されるからです。さらにQにおけるカヲルの「魂が消えても、願いと呪いはこの世界に残る。意志は情報として世界を伝い、変えていく。いつか自分自身のことも書き換えていくんだ」というセリフより、新劇場版のシンジは、旧劇場版のシンジが、シンジ自身により書き換えられた存在と考えられます。書き換えられたのはシンジだけでなく他の登場人物も同様で、それゆえ名前が微妙に違ったりします。
  • その上で言いたいのは、アダム、アダムスとリリス以外で旧劇場版・新劇場版のなかで神と呼べる存在になったものは、旧劇場版の初号機だけという事実です。新劇場版でバラルの門を開いたエヴァはすべて疑似シン化形態です。よって、殺されるべき神は旧劇場版の初号機と考えられます。すべての原因ともいえる旧劇場版の碇ユイが取り込まれたあの初号機です。殺したいと思う人、大勢いそうですね。とりわけ、旧劇場版でユイに出し抜かれる形になったゼーレにとっては殺したくてたまらない神様といえます。
  • ゼーレについて
    モノリスを旧劇場版の世界から持ってきたと考えると「あなた方の魂をあるべき場所へかえす」というゲンドウのセリフの意味がわかります。神殺しはゲンドウがやってくれるというし、自分の魂はバラルの門を通って旧劇場版の世界に帰れるのですから、ゼーレにとってはありがたい話です。
  • ゲンドウ、ユイ(新劇場版)、冬月について
    この3人はゼーレの計画を知っていて、ある意味では共謀していると考えられます。ゲンドウの目的が【ユイに会いたい】だとしても、新劇場版の世界がゲンドウにとって理不尽なもの(破の宇宙空間におけるゲンドウのセリフから推測)という解釈はゼーレの見解と一致します。ユイの目的は、相変わらずこの世界を見守ることでしょう。さらに、シンジ(というか人間)の未来は自分で決めるものという信念は旧作と変わらないと思うので、シンジ自身に理不尽な物語の決着をつけさせるよう導くのではないかと思われます。そしてゲンドウも本心ではそれを望んでいると思っていて、シン・エヴァでそういうシーンが描かれたらいいなあと思っております。
  • 再び、ゼーレについて
    つまりゲンドウも新劇場版の世界をリセットしたいと思っていて、それゆえ神殺しと人類補完計画を遂行してくれるだろうとゼーレは見込んでいます。もちろん、ゲンドウは神殺しをしたあとでユイと一緒に自分が新たな神になるつもりです。ゼーレもそれはわかっていますが、ゲンドウ個人の問題は人類の補完という大目標の中では些細な誤差にすぎないので、「全てこれで良い」と納得して成仏したと考えられます。
  • マリの目的
    マリの目的は「神殺しをさせない=旧劇場版の碇ユイを殺させず、とにかく現状維持」だと考えられます。また、ユイの忘れ形見であるシンジを大切に思うのは当然ですね。

鬼滅の刃 無限列車編 破壊殺・滅式 vs. 炎の呼吸 奥義 玖ノ型・煉獄の場面のBGMを演奏してUPしましたの巻

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猗窩座と煉獄さんの戦闘シーンのクライマックスで流れる曲を演奏してみました。

まだソフト音源に不慣れで、思うように演奏させることがなかなかできなくて大変でした。仮ミックス後にいったん修正して再度ミックス(テイク2)したのですが、終わりのリバーブが尻切れになっていたのでもう一度やりなおそうとしたところ、Digital Performerでファイルが開かなくなってしまったので、諦めてテイク2で動画を作っています。終わりはフェードアウトでごまかしました。

 

※楽器類一覧

  • パイプオルガン
    YAMAHA / MONTAGE 8
  • 弦楽器
    Audiobro / LA Scoring Strings
    Cinematic Studio Strings
  • 金管
    Vienna / Dimenssion Brass(ホルン、トロンボーン
    Vienna / Big Bang Orchestra
    EW / Hollywood Brass(トランペット、トロンボーン、チューバ
  • コーラス
    EW / Hollywood Chorus
  • 打楽器
    Vienna /Synchron'ised Spetial Edition(ティンパニ、銅鑼、シンバル)
    Spitfire / Hans Zimmer Percussion Professional(スネア、大太鼓)

Hans Zimmer Percussionはマイクの違いでサウンドもかなり変わります。近めのマイクだと軽い音ですが、遠いマイクだと重心が下がって「遠いけど存在感がある音」になるのが気に入りました。

劇場版 鬼滅の刃 無限列車編より 猗窩座vs. 煉獄さんの戦闘シーンの曲を演奏してUPしましたの巻

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鬼滅の映画における煉獄さんと猗窩座(あかざ)の戦闘シーンはけっこう長くて、体感で30分くらいやってんじゃないかってくらいカロリーが高いわけです。しかし音楽はループが多く、なんとなく覚えることができたのでやってみました。

冒頭の猗窩座が登場する場面の曲は公式PVで使われてるのでサクッとコピーしてしまいましたが、その後はほぼ捏造メドレーです。どうせ捏造ならせめて後半に向かって盛り上がるように構成を考えて頑張りました。
あと最後の曲は、こんなふうに終わりません。でもいいんです。わたしにはこういうふうに聞こえたので(←幻聴)

ツール類は、合唱だけRoland INTEGRA-7であとは全部ソフト音源です。オケ系の音源を本格的に使った初の動画で、使い方を勉強しながら演奏していたので大変でした。オケだけでなくエレキギターにも挑戦しています。こんなにギターを弾いたのは初めてです。

 

※使った音源メモ

  • パーカッション & ドラム
    HEAVYOCITY / DAMAGE2(うるさい鳴り物)
    VSL / SYNCHRON'NIZED SPECIAL EDITION(オーケストラ系)
    TOONTRACK / Superior Drummer 3(普通のドラム。終盤にかけてプレイがフリーダムになっていくのは仕様です)
  • ベース&ギター
    KOMPLETE / サンプルライブラリ
    VIR2 / ELECTRI6ITY(歪み系のギターは全部これ)
  • ストリングス
    VSL / SYNCHRON STRINGS PRO(超高域まで綺麗。さすが)
    AUDIBRO / LA Scoring Srings 2.5(最後の曲の弦はLASSのみ)
  • 金管
    VSL / SYNCHRON'NIZED SPECIAL EDITION
    VSL / BIG BANG ORCHESTRA*1(最後の曲の低音域。単音弾きでこの迫力という)
    EW / HOLLYWOOD BRASS(最後の曲のトランペット。強い)
  • シンセ
    u-he / REPRO-1*2(ボイス)
    Synapse Audio / Obsession*3(16分音符シーケンス用)
  • エフェクト関係
    HEAVEYOCITY / PUNISH(大活躍)
    バーブいろいろ(時間がなくて適当になってしまった。反省)
    Wavesをセールで買ったのでギター中心で使いたかったのですが、Vienna Ensemble Proと相性が悪くて落ちまくったので使用できず。同様の報告をしている人が多いですが、Macユーザだけっぽい?Windowsは大丈夫なのかな。

各音源のレビューや使いこなしなどは今後書いていこうと思います。SYNCHRON STRINGS、LASS、Superior Drummer 3はサウンドの質が高い上に極めて多機能で、およそ考えられることは全部できる感じでした。INTEGRA-7に代わって今後の主力になると思います。

SYNCHRONシリーズは数ヶ月前から使っているのでそこそこ慣れていて、ホルンのニュアンスを丁寧に作り込んだり、最後に1発だけ鳴るベルとかも調整した上で使ってます。しかしLASSはプリセットにリバーブをかけただけです。演奏も雑にキーボードで弾いたものに対してCC01でニュアンスを入れるだけだったのですが、さすがに最後に弦だけになる部分はそれだけではダメで、打ち込みデータを細かく調整して演奏表現を作り込みました。LASSはMIDIデータの前後関係で鳴り方が変わりますが、それをうまく使うと演奏表現の幅が広がります。

ViennaのSpecial Edition以外のお手軽な音源は結局使わなかったんですが、その理由はリバーブ感が強すぎることです。音が後ろに引っ込んでしまって前に出せない。劇伴で使うならそのほうがいいんだろうけど、どうも好かないです。

*1:なんと無料音源

*2:Sequential PRO-1クローン

*3:Oberheim OB-Xaクローン

ストリングス音源レビューの巻

自分は弦楽器オタクで、長年に渡りいろいろなストリングス音源を使ってきましたのでレビューします。自前で演奏した動画があるものはリンクを付けています。

最初に結論を書くと、生オーケストラの弦楽器をシミュレートする用途では現状では LA Scoring Strings(LASS)がベストな選択だと思います。特にクラシック音楽好きの人や、生の音を知っている人、音楽を聞いてオーケストラスコアが想像できるような人はこれでないと満足できないと思います。

一方で、生オケの再現が目的でない場合はLASS以外を選択したほうがよいケースも多々あると感じています。結局のところ「用途によって使い分けましょう」ということになりますけれども、各社さまざまな趣向をこらした音源を用意していて、同じものは一つもないと思いますので、使い分けのポイントなどもわかる範囲で書きたいと思います。

 

※ハード音源の部

  • Roland SL-JD80-04 Strings Ensemble
    JD-800用の波形拡張カードです。奏法バリエーションは少ないし、生音とは違うのだけど、低音域がよく伸びていて極めて高品位。コントラバスの音圧がすさまじく、今でもこれを超えるサウンドはなかなかないと思っております。JD-800自体がよくできたシンセでした。

    https://www.youtube.com/watch?v=83fE6bYsB0U

  • E-MU PROTEUS/2 Orchestral
    おそらく世界初のオーケストラ専用音源モジュールです。デモ演奏がセンセーショナルだったのですが、しょせんはPCMシンセなんですよね。このタイプの専用音源モジュールは他メーカーがほとんど追従しなかったのでE-MUオンリーになってしまいました。
    弦はイマイチなのですが、金管の厚みやハープや木管の存在感と温かみは素晴らしく、音作りが上手いメーカーだなと思いました。上記のSL-JD80-04のデモ動画で鳴っているハープやピチカートはこれを使っています。
  • Roland SRX-03 Symphonic Strings
    FANTOMシリーズ用の波形拡張カードで、ソロ楽器も収録されています。レガート音が使いにくい上に、音色が寒々しいかんじで使いにくかったです。しかしチェロとコントラバスは野太い音色で好きでした。ゴリゴリしたマルカートやピチカートは生々しくてよかったです。
  • Roland SRX-06 Complete Orchestra
    SRX-03の欠点が解消されていて、ふくよかな響きが特徴でよく使いました。弦楽器以外も使いやすいです。
    SRXシリーズはINTEGRA-7に全部入っているため値下がりすると思ったんですけど、そのINTEGRA-7が値上げに次ぐ値上げで20万円くらいになってしまったため、SRXの中古価格も下げ止まり状態になっています。SRXを鳴らせる最も安いハード音源は、soniccellになります。ハイレゾ(96kHz/24bit)に対応したAD/DAコンバータを持っているおすすめのハード音源です*1
  • Roland INTEGRA-7 Strings Section 1/2(Super Natural Acoustic)
    INTEGRA-7は2012年発売で、まだ現役で売られている長寿な音源モジュールです。
    これに搭載されたSuper Natural Acoustic音源のストリングスは、MIDI全音域が鳴らせる変わり種です*2。さらにベロシティクロスフェードが127段階というまさにSuperなアコースティック音源で、とりわけ管楽器の表現力は現在でもそのへんのサンプリング音源では太刀打ちできないレベルにあります。*3
    とはいうものの、Strings Section 1/2で実用的に使えるのはヴァイオリンの音域だけで、低音域になるほどシンセっぽくなってしまいますので、実質的にはViolin 1+Violin 2ということになります。ソロ楽器は逆で、ヴァイオリンやヴィオラがシンセっぽくて、チェロやコントラバスがリアルになります。
    以上のようなことから、自分の使い方としては、ヴィオラ以下の合奏は内蔵されているSRX-06にやらせて、ソロのSN-Aサウンドを混ぜるのが基本でした。このあたりがよくわかるのが下記の動画です。

    https://youtu.be/be58aQBZ4LM?t=94

    SN-Aはベロシティとコントローラ(モジュレーション)の両方で音量・音色を変えられるようになっていて、モジュレーションの値が低い状態でも強い打鍵をするとフォルテで鳴るので、リアルタイムで演奏しやすいのが特徴です。しかしこれが罠なのです。ベロシティの前後関係を判断して大→小だと自動的にレガートになり、小→大だとリトリガーになるのですが、リトリガー時には先着音が不自然に消えてから後着音が鳴るので、いびつなフレージングになってしまいます。直前に鍵盤からいったん指を離してから次の打鍵をしたほうが自然なニュアンスになります。かように、リアルタイムで演奏するには指先の厳密なコントロールを要求されて難しいので、打ち込み用と割り切ったほうがよいと思います。なお1音鳴らすのに4音分のリソースを使う上に、レイテンシーがあるためいろいろ苦労しました。またベロシティでアタック速度も変化するため、ピアニッシモでは速いパッセージを弾くことができません。それでも使っていたのはクロスフェードが完璧だったから、としか言えません。

    https://www.youtube.com/watch?v=x5vxgFXCXVg

ここまでの音源は、すべてドライな(残響感がない)サウンドです。自分はこれに慣れてしまったので、次に上げていく残響感のあるソフト音源に苦労することになります。またINTEGRA-7で感じたレガートの難しさをクリアできる音源は、自分が所有している中ではLASSとCSS(Cinematic Studio Strings)になります。

 

※ソフト音源の部

  • EastWest Quantum Leap Symphonic Orchestra
    通称QLSOです。かなりシェアがあるようでネット上の情報も多く、セールで安かったの購入したのですが、どうにもシンセっぽい冷たいサウンドでダメでした*4。あと残響感が強く、リバーブをオフにしても消えません。自分は残響はマニュアルでコントロールしたいので許容し難いところがありました。最上位のPlatinumに入っているClosedポジションの音でも残響感はあります。残響の何をコントロールしたいのかというと、残響の質です。残響成分だけにEQを使いたいのに、楽器本体と一緒になっているので手出しのしようがありません。またdivisi(ディヴィジ。1stヴァイオリンや2ndヴァイオリンなどのパート内をさらに分割すること)がないのも地味につらいし、レガートも不得意ということでINTEGRA-7で苦労していたことが何も解決しないばかりか、かえって使いにくいということで購入したもののまったく使わないというオチになってしまいました。
    本稿とは無関係ですが、QLSOの金管楽器や打楽器は好きです。これらはオーケストラの後ろの方にある楽器なので、残響感があっても違和感がないのです。ただし木管楽器は残響感がわざとらしく、ソロ演奏には耐えられないです。QLSOに限りませんが、総合オーケストラ音源は合奏させるのが前提なので、ソロ演奏には向かないと考えます。
  • EastWest Quantum Hollywood Strings
    QLSOの弱点をよく補っています。divisiもあるし、残響感も減っています。音色も厚めでスロ~ミディアムテンポの曲にはよく合います。表現力もあるし、ベロシティクロスフェードも自然です。ただしオーケストレーションが雑だったり、音量コントロールを誤ると中音域が重いもっさりとしたサウンドになって響きが混濁します(反省)。
    問題点は、アタックが遅くて速いパッセージに追従できないので、速いパッセージに弱いことです。実はこれ、多くの音源に該当することなのですが、Hollywood Stringsは全体的な出来が良い中でアタック速度だけが残念なのでメインになりにくいというところがあると思います。あとPLAYというソフトでコントロールするのですが、操作性が非常に悪くてつらいです。また多くの人が指摘する通り、大容量のパッチは読み込みに時間がかかるのでSATAより高速なm.2(NVMe規格)のSSDUSB3.1やThunderbolt 3接続で使ったほうが良いと思います。
    ちなみにシン・ゴジラ劇伴のPersecution of the masses*5の弦がこれだそうで、中音域の重苦しさが忍び寄る災厄を予感させるようで見事だと思います。
  • Vienna Instrument Syncron-ized Strings、同:Chamber Strings、同:Appassionata Strings
    全体的にシンセっぽい音色です。あとレガートの挙動がおかしいです。しかも無印・Chamber・Appassionataでおかしさの中身や度合いが違うのでさらに困ります。特に無印のレガートは同音連打時の鳴り方が不自然なのでまるで使えません*6。音はさすがのViennaでとても美しいのですが、残響成分たっぷりで音像が異様に遠いです。レイヤーして後ろの方で鳴らすには良いけど前面に出せません。Syncron-izedシリーズは残響込みの廉価版ということを知らないで買ってしまい、弦に関してはどんなにがんばって打ち込んでも思ったように鳴らせないので後悔しております。←この残響(Synchron IRというらしい)ですが、オフにできてドライな音にすることも可能だそうです。調査不足でした。
    Viennaは価格が高いシリーズでも弦楽器は大なり小なりシンセっぽいところがあると思いますが、SY77やスーパーファミイコン的な90年代を彷彿させるサウンドは日本人には馴染み深いようで、良い音に感じる人が少なくないのも理解できます。
  • Vienna Instruments Synchron Strings Pro
    Viennaの価格が高いシリーズのストリングス音源の最新版です。高いと言っても、かつてのVSLのような分割商法ではなく、これ1つでヴァイオリン~コントラバスまで用意されています。奏法やアーティキュレーションがめちゃくちゃ多いだけでなく、レガート演奏に昨今流行りのワード "Agile" (アジャイル。素早いという意味)を冠したモードが加わったのが特徴だと思います。これはおそらくSpitfireのPerformance Legatoを意識したもので、猛烈に速く弾くと音程が甘くなるというストリングスの特徴をシミュレートしていて、かなり使えそうです。
  • AudioBro LA Scoring Strings(イチオシ)
    おそらく現状で最高峰のストリングス音源です*7セクションごとに細かくマイクを立ててスタジオで収録する状況をシミュレートできる音源で、非常に使いやすいです。さらに各パートがソロ(トップ奏者)と数名ずつで構成された3つのグループに分かれているので、divisi対応はもちろんできますし、LASSだけで小中大の3段階の編成をこなせるようになっています。こんなユニークなつくりなので、オーケストラ譜の読み書きを勉強していない人は使いこなせないと思われます。初心者には極めてハードルが高い音源でしょう。
    サウンドは実に生々しくて、残響感がないのが大きな特徴です。また、それほどアタック感が強くないのに速いフレーズでも追従できる立ち上がりの良さも使いやすさに貢献しています。レガートは、ベロシティ小→大のときも自然につながってしまうのに違和感があります。リトリガー感がないというか、弓を折り返す感じが乏しい。ここは自然につながったからヨシ!と割り切るか、弓のダウン・アップの切り替えを明示的に打ち込むしかないだろうと考えています*8
    欠点は、ときおりひどく音程が悪いキーがあることと、ノイズが多いことです。メーカーいわく「それが生音の醍醐味です」*9。音程に関しては、ボーカル用のピッチ調整プラグインを導入している人もいるという話です。ノイズはEQ処理が推奨されておりますが、iZotope RX 7で手軽に除去できることを確認しています。RX 7はアナログレコードのプチノイズや環境音的なノイズはもちろん、弦楽器(ギターなども含む)の雑音を消すのにも有効です。ちなみに、人数の割にスケール感がありませんし、ヴァイオリンなどは線の細い楽器が合奏している感じでひ弱なんですけど、そもそもヴァイオリンは線が細い音色が特徴なので問題ないです。
    使い始めてすぐに、「この楽器ならこういう表現ができるんじゃないか?こんなやりかたはどうか?」とアイディアが湧いてきたので、それだけ音楽的な仕上がりなのだと実感しました。「この音源なら」と思えない、人間臭い振る舞いを見せてくれる素晴らしいツールです。
  • Cinematic Studio Strings
    通称CSSです。自分のように、LASSと組み合わせて使っている人がけっこういるようです。両者は相互補完的なところがあって、CSSはdivisiは使えないですし、LASSのようなヒステリックとさえ言える高域の伸びのよさはないものの、音程は安定していて適度な厚みと暖かさのあるサウンドです。そんな感じなので、フレーズの開始部は繊細な表現ができるLASSで作り込んで、サスティンの厚みはCSSで表現する使い方になっています。
    CC01が強弱、CC11が音量という設定はLASSと同じなのでレイヤーで鳴らしても良いのですが、LCSSは音の出方がかなり遅いので注意が必要です。LASSと同タイミングで鳴らすと明らかにずれますので、MIDIデータを少し前にずらす必要があります。高域が伸びないことは誰でもすぐ気づくと思いますが、EQで補正可能です。

持ってないけど興味あるもの・あったもの

  • Spitfire Chamber Strings
    実はSpitfireのソロ弦のセットをセールで買っています。音の良さはもちろんですが、Performance Legato(パフォーマンスレガート)というパッチが秀逸です。要は適当にキーボードを弾くと勝手に最適な奏法で鳴ってくれるのですが、速い音階を弾くギュルルルルッ!と駆け上がるのがとてもリアルです。Chamber Stringsは合奏でこれができます。divisiがないのが残念ですね。
  • Spitfire Studio Strings
    LASSを意識した音源のようで、Chamber Stringsよりドライなサウンドですしdivisiにも対応しています。またChamber Stringsより人数を減らしていて、その分だけ全体的に音像が小さく低音も伸びないかんじです。あとベロシティレイヤーはChamber Stringsより少なくフォルティッシモがないので表現力に乏しく、弦楽器がメインとなるクラシック系の楽曲には厳しいと思います。Performance Legatoもありません。
    ただ弦楽器らしさは堪能できますし、なにしろChamber Stringsの半値以下でこのクオリティは驚異的です。歌モノやポップス系のBGMなどでオブリガード的に中高音のストリングスを入れるとしたらこれがファーストチョイスになるんじゃないかというくらい使いやすそうだと思います。下記の動画で、両者を所有している人が比較演奏しつつ忌憚のない意見を述べているのが参考になります。
    https://www.youtube.com/watch?v=GLV0MoXWZAQ
  • Spitfire BBC Symphony Orchestra
    総合音源で、ものすごくゴージャスなQLSOだと思います。総容量600GB程度で、わざわざBBCなんていう葵の紋処を出してくるあたりはEW Holywood Orchestraを意識した様子がありありと伝わってきます。ハリオケと違うのは残響感が極めて強いうえに、この残響感が決定的にサウンドを特徴づけているということです。そのあたりがQLSO的だと感じた理由です。そんなわけで、ディテールにこだわる人には総じて不評で、自分もデモを聞いた段階で「ちょっとこれはないな」と思いましたが、音楽の捉え方や聞き方、作りかたが大雑把な人(悪い意味でなく)は「こういう感じの音っていいよね!」と評価するではないかと思います。
    Spitfireはイギリスの会社ですが、そもそもイギリスはクラシック音楽の本場とは言い難いと思います。20世紀はアメリカの音楽界と相互に影響し合ってきて、近年は完全にアメリカナイズされていると感じますので、こういう流れになるのも致し方ないのかなと思っております。

*1:自分は2台所有

*2:ソロ楽器もあって、ヴァイオリンだろうとチェロだろうかまわず全音域鳴らせる

*3:サンプリングとヴァーチャル系のハイブリッド設計らしく、そんなことが可能になっている。

*4:キャラクター的にSRX-03とかぶるところがある

*5:蒲田くん登場シーンに流れる

*6:バグではないかと思うような挙動を示す。

*7:お値段含め。

*8:まだ使いこなしていないので検討中

*9:開き直りやがった

ここがいいよ&ダメだよIvory II American Dレビューの巻

Ivory II American Dを使い始めてけっこう経ちました。おおむね好きといえる音源ですが欠点も見えてきたのでまとめてレビューします。これから購入する人の参考になればと思います。

 

1.いいところ

  • 音像が大きい上に低音域がよく伸びているので、クラシック音楽的な(ドイツ・グラモフォンレーベルのような)雄大なピアノサウンドが容易に得られる。
  • ベロシティレイヤーが多く、ピアニッシモからフォルティッシモまでの表現力が高い。
  • 音色調節の幅が広く、かなり実用的に使える。
  • サスティンペダルを踏んだときの共鳴シミュレーションの塩梅がよい。Pianoteqのようなレベルではシミュレーションできていないけれど、適度な共鳴感で響きが濁りにくい。
  • フルコンサートピアノを弾く気持ちよさを味わえる。
  • ベロシティ感度の設定機能が優れていて、自分に合ったベロシティカーブを作れる。

クラシック音楽っぽいピアノサウンド」というのは、D274というピアノの良さを損なうことなく再現できているということです。低音部の太い響きときらびやかな高音部が絶妙に共存していること、D274の名前の通り全長274cmの大きな楽器で響板という面から音が出てくるので、その音像の大きさをステレオサンプリングで再現できています。

しかし、この特徴はそのままダメなところというか、使いにくさに直結していくので注意が必要です。クラシック系の曲をソロで弾くならおすすめできる音源です*1
ベロシティ感度設定もよくできていて、いろいろなキーボードに対応できると思います。VIENNA SYNCHRON PIANOはベロシティ設定が壊滅的にダメなので、リアルタイム演奏派には厳しいです。HANS ZIMMER PIANOもベロシティ設定の使い勝手が極めて悪いです。この2つに関しては改めてレビューする予定ですが、HANS ZIMMER PIANOはともかくSYNCHRON PIANOはサウンドも含め過大評価だと感じます。

 

2.ダメなところ

  • 残響感が少ないステレオサンプリング。
  • ステレオ幅を狭めると音が痩せる。デフォルトでStereo Width(ステレオ幅)が狭くなっているプリセットは位相の問題で音が悪いので、必ず100%に広げて使う必要がある。
  • つまり、モノラルで使うことができない。
  • ステレオ幅100%でしか使えないとなると、アコースティック系(アンプラグド系)で、なおかつピアノが主体となる曲以外には極めて使いにくい音源といえる。

たぶん無響室でステレオサンプリングしていると思うんですが、残響感がないのでエフェクト(リバーブ)が必要です。Ivory II付属のリバーブはパラメータを細かく調整できないので、こだわりたい人は別途ご用意くださいということになります。自分はリバーブプラグインを持っているので特に問題はありません。
それより問題は位相です。楽器の音像が大きいとポップスやロックでは使いにくいのでStereo Width(ステレオ幅)のパラメータを調節して左右を狭めてみたのですが、音の伸びがなくなって、楽器の音色自体が変化してしまいました。位相の問題で、波形が変化したためと思われます。

ちなみにこの手の位相の問題はIvory IIのようなサンプリング音源に限らず、ステレオ出力のシンセサイザー音源でも起きます。なんでもかんでもステレオにすればいいというわけではございません。

 

3.対策

  • 総合音源やハード音源のピアノを使う
    こういう音源に収録されているピアノはクラシック系のソロに使うのは厳しいですが、ロックやポップスには非常によくマッチします。特に近年の日本製のハード音源(シンセ含む)のピアノはバンドで使う前提でサウンドメイクされているのでとても良いと思います。
  • 多マイク収録の音源を使う
    Ivory IIのアンチテーゼのようなコンセプトで、多マイク収録のピアノ音源がいろいろ発売されております。マイクが増える分だけ容量は大きくなりますが、こだわる人は導入していますね。
  • 音像が小さい楽器からサンプリングした音源を選択する
    ヤマハC7や、スタインウエイBなど、フルコンサートピアノよりひとまわり小さいサイズのピアノをサンプリングした音源が出ています。
  • バーチャル系音源を使う
    ポップスやロックで評判がいいのはやっぱりローランドのSNピアノです。クラシック向きではないけれども、アンサンブルで生かせるサウンドです。クラシック向きなのはPianoteqかなと思ってます。

 

 4.雑感

こういう欠点までレビューしている人が少なくて、ちゃんと使わないで適当に記事を書いているいるDTMブロガーが多いのではないかと思いました。モノラルにできないことや位相の問題は、この音源を使ってなにか制作すればすぐ気づくと思います。
まどか☆マギカだか何かのアニメ劇伴でこの音源を使った人がいて*2、ソロに限定していたという話で、どうしてそんなことになるのかな?と不思議だったのですが、自分で使ってみてソロ以外で使うのが困難ということを実感しました。

 

5.自前の演奏で解説

www.youtube.com

マイクポジション= Audience、Stereo Width = 100 です。
Audienceといってもマイクの位置はかなりピアノに近いと思われます。その証拠に、高音域ほど明瞭にセンター定位しますが、音域が低くなるに従って音像が遠くなり、同時に左右の広がり感が大きくなります。

このサウンドはスピーカーで聞くとかなり気持ち良いのですが、ヘッドフォンだと違和感があります。また良くも悪くも低域に締まりがないのでポップスやロックで使おうとすると、左手の使い方に制約が生じます。

*1:でもそういう人ってDTMerでは少数派ではないでしょうか

*2:詳細失念w