シン・エヴァンゲリオン劇場版サントラ感想および使用シーン一覧の巻(ネタバレあり)

シン・エヴァンゲリオン劇場版(以下シンエヴァと呼称します)は言うまでもなくヱヴァンゲリヲン新劇場版の最終作で、ストーリーや演出はもちろん、劇伴*1も前3作の流れを踏襲すると思っていました。実際、事前公開されたアバン1の音楽はエヴァQのアバンの音楽とコンセプトと同じで、自分はかなり落胆したのですが、3.0+1.0だから3.0(エヴァQ)の要素から始まるのだろうと納得していました。

しかし3.0の要素は(表面上は)アバン1だけといってもよく、その後は前3作とはかなり異なるコンセプトの音楽が展開されます。特に新作は1950~80年代のニーノ・ロータミシェル・ルグランといった往年のロマンティック・シネマミュージックの影響が色濃く出た楽曲が多く、ルグランや羽田健太郎(日本版ルグランのような人)の劇伴が好きな自分はとても嬉しい内容となりました。

ということで、実際の使用順にサントラの感想や音楽演出について思ったことを書いていこうと思います。楽曲名は Shiro Sagisu Music From Shin Evangelion ほかに準拠します。また原曲や元ネタがある場合は楽曲名の横に作品名を追記しています。なお曲順に間違いや抜けがあったらごめんなさい(最初に謝っておく)。

  • EX01 バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」- EOE
    これまでのエヴァンゲリオンエヴァ破の「綾波を返せ!」のタイミングで転調しています。ここに合わせて映像の編集をしたと思います。旧劇場版ことEOE(The End Of Evangelion)でピアノ編曲版が使われました。
  • EX02 真実一路のマーチ - EVA 2.0
    これはエヴァ破の「365歩のマーチ」と同じ精神でしょう。ただBメロ(真実一路~)でいきなりマイナーに転調するのが変なんですよね。普通はワンクッション入れますよね。
  • EX03 世界は二人のために - EVA 3.0
    意味深な選曲ですが、意味深に聞かせてるだけだと思います。というか、エヴァQの「ひとりじゃないの」と同じテーマですね。
  • M01 paris - シン・ゴジラ
    エヴァ44A航空特化タイプの出現に合わせて開始。シン・ゴジラの蒲田くん登場シーンに使われた「Persecution of the masses (1172) / 上陸」が原曲で、脅威の出現という意味があると思います。
  • M02 if a cause is worth dying for then be - EVA 2.0
    ボスキャラ4444Cとおつきの44Bの登場。44Bがフレンチ・カンカンみたいにラインダンスを踊ります。イントロの下がる音階はTVアニメ版の「THE BEAST II」のイントロから、そこに続く下がる半音階はエヴァ破の2号機対第10の使徒ゼルエル)の終盤に使われた「The Final Decision We All Must Take (2EM33)」の最後の部分からの引用。主部もエヴァ破の第8の使徒(空から降ってくるアレ)戦前半で使われた「Destiny (2EM15)」の進行をそのまま流用。新規要素がない。
  • M03 euro nerv - EVA 1.0
    「4444C、完全に沈黙!作業時間あと残り30秒!」スパニッシュなEM20です。フランス人は昔からスペイン音楽が大好きなので*2、スペイン音楽を引用するのはおかしいことではありません。
  • M04 tema principale: orchestra dedicata ai maestri
    新作。アバン2の最初から流れます。ニーノ・ロータ風の、ともすれば古臭さのあるロマンティックナンバーで、m7-5などマイナー系のおいしいコード(日本人が好きなコード)が多用されます。自分はこういう大仰な曲が大好物で、初見のときなんかこの曲が始まった途端にもう泣いてしまって、始まって15分も経ってないこのタイミングで泣くなんてありえないと焦りました。tema principaleというのはメインテーマという意味ですが、言われるまでもなくメインテーマっぽさが強い曲です。
    公開日の前日にこの曲が使われる場面までの動画がアップされていますが、自分は見ないようにしていました。見なくて本当によかったです(笑)*3
  • M05 berceuse: piano
    トウジの家に向かうシンジと黒綾波。サティ風の小品で、タイトルの意味は「子守歌」。穏やかに聞こえますが、転調が多く旋律も重音が多用されるなど凝った手法が使われています。鷺巣氏のこういう曲は即興的に作っているように思います。
  • M06 Qui veut faire l'ange fait la bête (piano solo)  - EVA3.0
    トウジ家での夕食。エヴァQでシンジとカヲル君が星空の下でデートする場面で使われた曲です。音源もエヴァQのサントラです。
  • M07 prettiest star - EVA 2.0/彼氏彼女の事情
    ケンスケの家に向かうシンジとケンスケ。エヴァ破 Instabilite: Orchestre (2EM22)の新アレンジ。原曲は彼氏彼女の事情の「孤影悄然」ですが、エヴァ破ではアスカのテーマ曲のようなところがあったので、アスカ登場前にこの曲が流れるのは必然ですね。
  • M08 yearning for your love
    おはようって、何?~農業アニメが展開します。
  • M09 tema principale: piano dedicata ai maestri
    シンジ家出。メインテーマのピアノ版が流れます。ここまで来ると、ピアノ曲が流れるときは孤独感を強調していることがわかります。このピアノ曲で孤独を表現するのはエヴァ序からやられている演出手法ですが、シンエヴァのラストにネタバラシが待っています。
  • M10 hand of fate
    綾波の農業シーンその2。この曲を流しながら止め絵で見せます。おおむね1小節ごとにカットが切り替わります。穏やかな調子だと思っていると、"Such is hand of fate"からの展開で泣かせる名曲。
  • M11 soul love: guitar to orchestra segue - 彼氏彼女の事情
    シンジ君復活。これは「彼氏彼女の事情」の「天下泰平」という曲が原曲です。
  • M12' karma(ボーカルoff) -  EVA 2.0/彼氏彼女の事情
    封印柱の説明など。"karma" のボーカルをoffにしてオケだけにしたものと思われます。原曲は彼氏彼女の事情の「一期一会」です。エヴァ破ではミサトのセカンドインパクトの回想シーンに使われたRobe des Champs (2EM20)に相当します。
  • M12 karma -  EVA 2.0/彼氏彼女の事情
    加地さんと、加持さんの息子の件。ここでボーカル入りのkarmaが使われます。karma=因縁。ミサトとゲンドウの抱えた因縁が似ていることが暗示されます。
  • M13 unwelcome: piano
    現時刻を持ってBM03の監視拘束の任を引き継ぎます。全体的には静謐な曲なんだけど、トウジから送られた写真を見てサクラが涙を流すところで音楽もじわっと盛り上げるのがうまいです。
  • M14 m & r: piano -  EVA 2.0/彼氏彼女の事情
    マリとアスカのやり取りからはじまって、ミサトとリツコの長セリフにつながる場面。女性同士の会話のシークエンスですね。ミサトの態度に重きが置かれたシーンなので、ミサトのテーマであるkarmaのバリエーションが使われたのだと思います。ミサトとリツコの会話のテイを取って空白の14年間における加持さんのことやら、ヴンダーの本来の役割などを視聴者に伝える説明シーンです。
  • M15 lost in the memory
    M14のシーンを受けてのミサトのニアサー回想~最終決戦準備。この辺りは説明が多いのですが、モノローグでなくダイアローグ(相手がいる会話)にすることで説明くささを軽減しています。
  • M16 EM10A alterne - EVA 1.0
    ヴンダー発進。ここでついにエヴァ序(1.0)の曲が入ります。シンエヴァの3.0+1.0というタイトルの意味は音楽でも回収されるのです。
  • M17 激突! 轟天対大魔艦
    2番艦Erlösung(エアレーズング)*4の登場でこの音楽。初見のときのワイ「いきなりやりおったwww」これはギャグでは?
  • M18 metamorphosis - シン・ゴジラ
    ヴンダーがネルフ本部と黒き月に追いつく。シン・ゴジラの「作戦準備 / Black Angels (Fob_10_1211)」の要素が使われている曲です。ホラー系のアレンジだなと思っていたら、鷺巣先生が解説でオーメンジェリー・ゴールドスミスの手法だと書いてました(笑)
  • M19 paranoia
    ヴンダーからエヴァ2機とも発進する。M18からシームレスに入るのでホラーの続きよろしく大量のバケモノども(エヴァンゲリオン Mark.07)が登場します。この戦闘がただの物量戦で時間つぶし的なのは、ネルフがヤリを作るために時間を引き伸ばしたいからですね。シンエヴァのサントラでは数少ない打ち込み系の楽曲でもあります。
  • M20 mirror mirror: refrain - EOE
    マリの「ゲンドウ君は何を企む?」というセリフの直後に入ってきます。いかにも何か企んでそうな雰囲気の不気味な曲で、旧劇場版の「夢のスキマ」のモチーフが入ってきます。
  • M21 this is the dream, beyond belief...
    裏コード999からのアスカ+2号機の使徒化。ここでアスカが退場するのでドラマティックな曲になっています。そもそも旋律が始まった瞬間に「またアスカがやられるんだ!」とわかってしまうしめっちゃ泣けます。かなりの長尺ですがフルで流れます。
  • M22 thème du concerto 494
    エヴァっぽい何か(エヴァMark.09改)が登場。ミシェル・ルグラン羽田健太郎風のドラマティックなピアノ協奏曲です。こういうのにも弱いので、流れ始めた瞬間に涙です。どれだけ俺を泣かせれば気が済むんだ。しかもBメロに入るときのマイナー9thでさらに泣かせにきます。
    なおピアノ協奏曲の劇伴は、TVアニメの「瞬間、心、重ねて」で流れたもの以来ということになります。
  • M23 psycho
    ゲンドウがヴンダー甲板上に登場。挨拶している間になんの躊躇もなくゲンドウの顔面に4発撃つリツコさんはもちろん旧劇場版と対比されると思いますが、イデオンにおけるハルル・アジバも思い起こします。
    合唱やオーケストラを使った大規模で派手な曲が続いたので、ここで静かな不気味さを湛えた独唱の曲をもってくるのは見事な対比だと思います。また人類補完計画セカンドインパクトの真実が淡々と明かされていくのも効果的です。
  • M24 i’ll go on loving someone else =version orchestre= - EVA 1.0
    初号機に乗る決意を告げるシンジ。タイトルの通り、エヴァ序のI'll Go On Lovin'Someone Else (EM02)のオーケストラ版です。エヴァ序で初めて初号機に乗る前にもこの曲が流れていて、繰り返しの物語であるエヴァという作品の本質をこの1曲だけで余すところなく表現できていると感じます。エヴァ序のときもいい曲だなあと思っていたのですが、このアレンジは本当に素晴らしい。もう泣くしかないですわ。降参です。*5
  • M25 不明
    裏宇宙(マイナス宇宙)へ。
    ピアノのアルペジョだけの曲なのですが、元ネタがわかりません。
  • M26 pillars of faith
    エヴァ初号機再起動~ゴルゴダオブジェクト到着。このあたりから「ひょっとしてこれはギャグでは?」というセリフやカットがちょくちょく入っているような気がしました。ゲンドウは真剣なんだけど、妙におかしい。
  • M27 voices in my head
    初号機vs.第13号機のどこか滑稽な戦いのBGM。オケも合唱も不協和音で叫ぶので難しいです(実はCマイナー)。3拍子なのがポイントだと思います。
  • M28 what if?: orchestra, choir and piano
    アディショナル・インパクトの開始。鷺巣氏の解説で宮川泰さんの名前が出てくるけれども、宮川氏お得意の6の音(ラ)から始まる明るい曲で、合唱が加わるピアノ協奏曲になっていて、円満に終わるかと思ったら、そうは終わらない。
  • M29 EM20 =wunder operation=
    ヴンダーは総員退艦命令が出され、エヴァ8号機がエヴァMark.10~12を喰らい尽くします。
  • M30 the path - REBIRTH
    ヴンダーに残るミサトの決意を肯定的な歌詞で表現したとても泣ける曲。和声進行や弦楽器のフレーズがパッフェルベルのカノンのオマージュになっているので旧エヴァREBIRTH編のタグを付けてあります。
  • M31 born evil - EOE
    ゲンドウとシンジが電車に乗って、ゲンドウが延々モノローグで語る場面。ピアノが好きだった、としゃべるときにピアノのフレーズがふっと上がってくるのがとてもうまいと思いました。
    エヴァでおなじみ電車での禅問答シーンは苦痛だったんですが、Qでそれが出てこなかったら寂しかったんですよね(笑)。シンエヴァのクライマックスで出てきたので、待ってました!という感じでした。この音楽も最高で、初見のときにすぐにクリヤ・マコトさんのピアノだとわかりました。彼はエヴァの劇伴だと割とまったりとした演奏が多い印象がありますが、本当はこの曲のように切れ味鋭いアドリブプレイが得意なピアニストです。
  • M32 citation from ‘joy to the world’
    ヴンダーと8号機が新たな希望の槍をシンジの元へ届ける。「もろびとこぞりて」と言ったほうがわかりやすい曲かもしれません。
  • M33 夢のスキマ - EOE
    ゲンドウの退場シーンですが、ユイを見出すのでEOEでシンジがユイと会ったときに流れたこの曲が使われます。なおThe End of Evangelionのサントラから流用です。
  • M34 pensées intimes: piano dans l’orchestre à cordes - EVA 2.0
    式波・アスカ・ラングレーとしての回想シーン。新曲ということにはなっていますが、アスカの曲なのでエヴァ破で使われた「孤影悄然」のモチーフが出てきます。
  • M35 ave verum corpus
    カヲル君の補完シーン。大好きなモーツァルトの曲で、これも流れ始めた瞬間に滂沱の涙でした。通常はもう少し遅いテンポで演奏されますが、尺を合わせるためにやや速めのテンポになっています。原曲のオケは弦5部+通奏低音(オルガン)ですが、通奏低音がなく、ホルンが加わっています。なお渚司令は【空白の14年間】の間の出来事だったと思われます。
  • M36 VOYAGER ~ 日付のない墓標 - EOE
    NEON GENESISから「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」。楽器構成を含めてユーミンの原曲に忠実なアレンジです。ただこれはEOEにおける「甘き死よ、来たれ」に相当する曲なので、終盤になるとヴァイオリンにそのフレーズが引用されてきます。歌はユイさんですね。
  • EX04 One Last Kiss
    歌詞を聞いて、なんだユイさんの曲じゃないか、と思いました。
  • EX05 Beautiful World (Da Capo Version) - EVA 1.0
    シンジの曲だと思ってたけどゲンドウの曲だった!という驚き。しかしシンジとゲンドウが鏡合わせのような存在だから、どちらの曲でもあるんだろうな、と思いました。そして最後はエヴァ序の曲で締めることで3.0+1.0というタイトルを完璧に回収して終劇です。

 

*1:劇伴奏音楽。BGMのこと

*2:ビゼーカルメンや、ラヴェルのスペイン狂詩曲などが有名

*3:エヴァQの公開前日にTVで放映されたアバンを見てナディアの曲が使われることを知ってしまい公式からネタバレを食らわされた気分になったので、意地でもアバン2は見なかった。

*4:贖罪という意味

*5:この場面ではみんな泣いてますね。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| のBGMを演奏してUPしましたの巻:その2 Ave Verum Corpus

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シンエヴァで流れたモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス Ave verum corpus」を演奏してUPしました。何度見ても泣けるシーンです。もともと大好きな曲ということもあって*1、初見のときはこの曲が流れ始めた瞬間にもうボロ泣きでした。前後左右と隔離されるプレミアムシートで本当に良かったです。

旧劇場版のクラシック曲はあざとさというか、随所にわざとらしさやスノビシズムが感じられて自分はあまり好きではないのですが、シンエヴァのこの選曲には素直に降参でした。庵野さんもオトナになったなあと思いましたね(笑)

使用音源
・合唱:EastWest Hollywood Chorus
弦楽合奏:VSL SYNCHRON Strings Pro、Cinematic Studio Strings

DTM的には打ち込みでクラシック曲の混声四部合唱+弦楽合奏の再現という、非常にハードルが高い挑戦でした。Hollywood Chorusは独特な癖があって、子音で終わる語のあとにすぐ次の発音を入れると音が出なかったりするので、慣れるまでは苦労しました。レガートなフレーズが多い曲にはあまり向いていない音源のような気がします。
さらにドラマティコな発声なので、繊細な表現を作るのにも時間がかかりました。発音の強さはCC01で制御しますが、30以上でかなりはっきり子音が発音されて楽曲の雰囲気に合わなくなってしまうので、ひたすら抑えるようにしています。(Tis ティス と発音したいのに、Zwis ツィス になりがち)

 

 追記:YouTubeのチャンネル登録者が1万人を超えました。鬼滅の威力すごいな!(笑)

*1:モーツァルトの曲でいちばん好き。

相変わらず気持ち悪かったシン・エヴァンゲリオン劇場版の巻(ネタバレあり)

シン・エヴァンゲリオン劇場版を見てから2日経ちました。結局のところ繰り返しの物語で、テーマ的にもTV版や旧劇場版に酷似しているのですが、気持ち悪さの度合いでいうとそれら上回るところがあると思ったので、とりとめもなくまとめます。簡単にまとめると、【庵野氏とモヨコさんのラブラブセックスに至る経緯をリアルに見せつけられてハズかしく感じる自分が気持ち悪い】です。

エヴァはTV版、旧劇場版、新劇場版の3種類がありますが、テーマはいずれ同じで見せ方が違うだけです。TV版最終回の言葉を新劇場版に置き換えた場合はこうなります。

  • モヨコにありがとう
  • エヴァにさようなら
  • すべてのエヴァファンへ、おめでとう

1.真希波・マリ・イラストリアス安野モヨコのメタファーということはエヴァ破の時点で周知の事実だったと思います*1。閉塞していた世界に突然やってきて、無条件にシンジを肯定し励ましてくれる、母親とは別の存在です。シン・エヴァンゲリオンではシンジは自分自身の願いでエヴァのない世界を再構築しますが、その場所へ送り出したのはマリでした。ここに至るシークエンスこそマリが言っていた【自分の計画でしょう。結果的にシンジはマリと共謀する形でゲンドウの行動を止めて、自分がインパクトのトリガーになります。勘違いしてはいけないのは、マリの計画はゲンドウを止めることではなくて、シンジが主体的に動けるように導き、サポートすることです。
これを現実世界に置き換えると、モヨコさんの出現で庵野さん自身に巣食っていたネガティブな部分(これがエヴァの劇中ではゲンドウとして描かれた)との折り合いをつけることができるようになり、難航していたエヴァンゲリオンの物語を終劇させることができた、ということになります。
このような映画を私小説というのは、いささか綺麗すぎだと感じます。これはノロケ?10年以上かけて壮大なノロケを見せつけられているのはワタシ?という気分になりました。他人のノロケを見るのはどうも恥ずかしいですね。ムズムズします。

2.これで庵野さんはエヴァにさようならできました。
「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」が「さよならジュピター」のオマージュということもわかりました。ピアノ協奏曲みたいなドラマティックな劇伴(劇伴奏音楽。BGMのこと)がガンガン流れてきて、ハネケン羽田健太郎)かよ!と思ったんですけど、さよならジュピターの劇伴を作ったのが羽田健太郎なんですね。劇伴についてはサントラ盤が発売になったらこのブログでしっかり掘り下げるつもりですけど、自分はハネケンの大ファンなので、シンエヴァの劇伴でハネケンをオマージュをしてくれたのは本当に嬉しかったです。

3.ついでにお前らもエヴァの呪縛から開放してやったわ。おめでとう(ドヤ顔で)←うっせーわ!(流行りの言葉)見事に開放されたわこんちくしょうめ。

 

庵野さんは、新劇場版は碇シンジの物語を描くと言い切っています。それは庵野さんが自分自身の物語を描くという覚悟ができたのだと思います。
マリ以外のエヴァのキャラは大なり小なり庵野さんの自我の影響があるようですが、旧作と大きく違うのはゲンドウの描き方です。先に書いたように、ゲンドウはダメな庵野さん自身のメタファーであるにもかかわらず、旧作ではさほど掘り下げられませんでした。なぜ掘り下げなかったのか当時はわかりませんでしたが、やはり覚悟が足りなかった。庵野さん自身の言い方を借りると、人前でパンツを脱いでいない状態です。旧劇場版で見せることができたのは、シンジが昏睡状態のアスカをおかずにオナニーするシーンまでです。そこに相手がいない状態でないとパンツを脱げなかった。
ゲンドウは、新劇場版:序・破では多少旧作と違うところを見せつつ、シン・エヴァンゲリオンではついにドス黒い本心を包み隠さず吐露します。しかし、この場面でゲンドウは自分自身を俯瞰して評価しているのでまだかっこつけています。そこからさらに進んで、ゲンドウがユイに補完され成仏するシーンになります。あの場面の気持ち悪さは耐え難いものがありましたが(赤の他人の夫婦のセックスなんか見たくない)、あれこそ人前でパンツを脱いだ庵野さんです。この気持ち悪い場面を描く覚悟ができたということでは大きな感動を覚えました。
また旧劇場版で最後にATフィールドの権化のようなセリフをアスカ(気になっている他人ほど強く拒絶する人)に言わせて、観客を拒絶することで現実への回帰を主張しましたが、新劇場版ではシンジからの働きかけを受けたり、長い時間が経つことでアスカ自身も変わることを描いていたのが印象的でした。

本当にとりとめもなく書いてしまった。
なにはともあれ、旧劇場版以上に踏み込んだ庵野秀明生板本番ショーをエンタメとして昇華できて本当によかったです。2度にわたる公開の延期という紆余曲折を経て無事に公開され、多くの称賛をうけた庵野さん自身にも「おめでとう」を言いたいです。

*1:中核スタッフがバラしていましたね。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| のBGMを演奏してUPしましたの巻:その1

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このブログではシンエヴァのネタバレをやっていきますが、こういうネタバレもあります。以前UPしたものはどこか堅い演奏だったので、あまりガチガチにならないように、柔らかいニュアンスになるように気をつけました。

「その1」なのはすでに2曲目に取り掛かっているからです。エヴァQの劇伴の演奏動画は好きな曲を後回しにしていたためKindred SpiritsをUPできたのがエヴァQ公開から2年半後になってしまいましたが、今回はそういう出し惜しみはしないです。次にUPする曲がシンエヴァで最も好きで、最も泣けた曲です。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||を見てきましたの巻(ネタバレあり)

シン・エヴァンゲリオン劇場版を朝イチから3回ほど見てきました。

今回は軽い感想と、シンエヴァのススメという趣旨で書きます。詳細なネタバレは避けますが、何を書いてもネタバレだという話もあるので読みたくない人はスルーしてください。

 

 

 

(ちょっとあけます)

 

  • 総括
    実はQの時点で「次はこうだろう」と想定していた内容に近い流れだったのですが、それを上回るところがあまりにも多かったです。想定していた内容とは、新劇場版は碇シンジの物語なので、最後はシンジが主体的になって事態に収拾をつけるということです。その中にはゲンドウとの確執の解決をはじめいろいろあるんですが、すべてに対して1つずつ決着を付けていきます。Q終了の状態からお話が始まるので、そりゃ2時間半かかりますよw
  • 観客の補完
    Qでの意味不明な描写や伏線がことごとく回収されていきますので、Qが不満だった人も見ていただきたいです。
  • 泣ける
    ツイッターなどでも泣けるという感想が多いのですがエモーショナルな描写が多く、いちいち泣けます。庵野作品というか、映画を見てこんなに泣いたのは初めてです。アバンタイトルのパリでの戦いに続き、ネットで事前公開された赤くコア化した大地の上を放浪するシンジたちのシーンが挿入されますが、その直後の場面ですでに泣き出す人が大勢いました。パンフレットの声優さんのインタビューも概ね「脚本を読んだり演技中に泣いた」だらけです。
  • 劇伴(BGM)が過去最高に良い
    序破Qも劇伴はどんどん良くなっていったのですが、今回は図抜けています。サントラ3枚組でもわかるように、けっこうたくさん音楽が流れます。自分はエヴァの音楽本を出すくらい劇伴を聞いてきましたし、お約束のクラシック音楽からの引用もあって、知っている楽曲が来ただけでブワッと涙が溢れてしまうシーンがいくつもあって参りました。
  • 回顧と総括
    庵野秀明といえば過去作品の回顧的パロディが身上だった時期もありましたが、今回もいろいろ回顧した上でエヴァゲリオンという作品を総括するので、せめて新劇場版:序破Q、可能であればTVアニメ版~旧劇場版(Airまごころを、君に)、余裕があれば貞本版まで履修の上で見ていただくと、感動もひとしおだと思います。ちなみに劇伴も回顧的な要素が多くて、過去作品のサントラをよく効いていた人ならアレンジが似ていたりすることに気づくと思います。3.0+1.0という表記が最もよく理解できるのが、過去作品の劇伴が絡むシークエンスなのです。
  • 鉄ヲタ歓喜
    「その描写いる?」というようなマニアックな鉄道描写だらけです(笑)

Clavia Nord Piano 3を手放してNord Lead 4を買った件についての巻

とても良いシンセです。(結論)

MONTAGE 8の購入に伴ってNord Piano 3を手放したのでNordの音が恋しくなっていました。昨年の夏以降Nord Lead 4(NL4)の価格がNord A1並に下がったので、暮れにNord Lead 4を購入しました。

ずっと愛用しているヤマハreface CSがムーグっぽいサウンドを得意とするヴァーチャルアナログシンセなので、キラキラ系のハードシンセが欲しかったというのもあります。本当はVirus TI2 Polarにしたかったのですが、アマチュアが買うには高いし、古くてサポートも悪いので*1、信頼性の点でNordがいいだろうと判断しました。

Nord A1とNord Lead 4で選択を悩む人は多いようです。自分もだいぶ悩みました。
A1のほうが発売時期が新しく、DAW連携など今っぽい機能が多いです。パラメータに関しては両者は対照的で、NL4はノブが多くさまざまなパラメータを調整できるようになっていますが、A1はノブを必要最小限に減らすことで短時間で音作りができるようになっています。A1はオシレータも1つで、かなり特殊なものです(しかしこれが大変に評判が良い)。EGもA1はADSRではなく、ASRかADRです。ただしエフェクトだけはA1のほうがパラメータが多いです。NL4のエフェクトはリバーブしかないので、ディレイとかコーラスは外部で用意することになりますが、そういうときはリバーブは邪魔なのでオフにします。リバーブの存在意義がないですね(笑)

そんなNL4を選んだ最大の理由は、Prophet-5などの往年の2オシレータシンセの音作りのノウハウがそのまま使えるから、というところが大きいです。なおかつLFOが2つあって、音作りの自由度が高いのも見逃せない点でした。また同時発音数はA1のほうが多いですが、A1はオシレータのデチューンができないので、そのためにレイヤーすると発音数が半分になり、アドバンテージが消えます。

Nord Laedはいまのところこの4が最終モデルで、すでに製造中止のようです。後継品はA1かNord Wave 2です。Wave 2はNL4をさらに進化させてサンプリング音源をつけた全部入りモデルで、価格も高価です。

シンセ初心者にはreface CSかNord A1をおすすめしますが、凝ったことがやりたい人やProphetに憧れる人、あるいは2台目のシンセとしてNord Lead 4あるいはそれ以前のNLは悪くない選択だと思います。

*1:というかサポートが終了している模様。macOS Catalinaにも対応していない。

鬼滅の刃 遊郭編PVのBGMを演奏してUPしましたの巻

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タイトルのとおりです。
こういうEDMっぽい打ち込みの曲は初挑戦で、最初のうちはまったく作業が進まず果たして自分にできるのだろうか?と心配になってきましたが、なんとかできました。今回はリズム隊以外は全部ハードシンセでやってます。当初はソフトシンセでやろうとして、あまりにも音作りに苦労するのでこりゃダメだと諦めてreface CSを引っ張り出しました。使用した楽器の下記のようになってます。

  • Roland INTEGRA-7:三味線、尺八
  • Clavia Nord Lead 4(初登場):キラキラしたシンセ、効果音の一部
  • Superior Drums 3:ドラム
    こいつは音が軽いので全部Punishを通して質感を変えてますチャイナシンバルの音なんか本当に最高だし、素材としてはとても良いのですが手を加えないといけないので時間を食いますね。付属のEQで楽器1つずつ帯域が確認できて、音がかぶらないように追い込めるのも良いのですが、その作業に時間がかかってしまう。時間があるときにドラムセットをあらかじめ準備しておいたほうがよさそうです。
  • Heavyocity DAMAGE 2:大太鼓、剣戟の効果音
    こいつは音が重いので馴染ませるのがちょっと面倒。
  • YAMAHA reface CS:上記以外全部
  • エフェクトプラグイン関係
    WAVESいろいろ(飛び道具とか)、Heavyocity Punish(多用)、Exponential Audio R4(リバーブ)、Cableguys VolumeShaper 6(サイドチェイン)

合いの手みたいに入る効果音関係はほとんどreface CSでやっています。スライダーを動かしながら演奏したものを録音していますので、打ち込みじゃなくてリアルタイム演奏ですね。時間がかかったのは最後のジェット噴射のようなサウンドで、いろんなやり方で演奏したものの中から一番マッチするものを採用しました。こういうのは音色が作れても演奏がカッコ悪いとダメですね。

あと後半のサイドチェイン(ゥワ!ゥワ!ってなるやつ)は専用のプラグインを使いました。こういう流行りものを使うのは楽しいですねw

今回、改めてreface CSが使いやすいということがわかりました。イメージするサウンドがすぐに作れるので本当に助かります。Nord Lead 4もようやく使うことができました。

ということで、いろいろ苦労しましたが最終的には満足できるものが作れたのでめでたしめでたしでした。