【音楽用語シリーズ】「即興曲」の巻

Wikipediaや多くの音楽解説書が間違っているのが「即興曲」の解説です。

即興曲とは、作曲家や楽譜商が即興曲命名した楽曲のことで、それ以上の意味はありません。即興で作っていなくても、即興曲命名されてしまうのです。しかも、よく知られる即興曲は、即興で作られた曲は一つもありません。

本当に即興的な楽想をそのまま発展させたような曲は、カプリッチョ(奇想曲)というタイトルが付くことが多いです。

またバロック~古典派時代の即興演奏は、第三者が作ったテーマをもとに即興を繰り広げるのが一般的だったので、変奏曲的な楽曲になりがちです。たとえばベートーヴェンのディアベリ変奏曲は即興的な変奏が多く見られます。

 

1.シューベルト即興曲

op.90とop.142の即興曲集がありますが、シューベルト自身はピアノソナタ組曲を想定して作曲したフシがあります。長い楽曲が多く、難易度がやや高いこともあり、なにかキャッチーなタイトルを付けようと考えた楽譜商が即興曲命名して売り出したことがわかっています。

 

2.ショパン即興曲

生前に出版された即興曲は3曲です。没後に出版された幻想即興曲はもちろん本人が付けたタイトルではありません(笑)。

面白いのは即興曲3番です。他の曲は形式感がはっきりしているのですが、この曲だけ形式感がなくカプリッチョ的な、本当の意味で即興感のある楽曲になっています。そのためやや難解な印象を与えるのか、あまり知られていません。

シン・エヴァンゲリオン解説第九回:式波・アスカ・ラングレーの正体についての巻

大袈裟なタイトルですが、新劇場版のアスカは式波シリーズの最後のひとりということで確定です。以下、もろもろの謎の答えを箇条書きでまとめます。

  • 式波シリーズのオリジナルは惣流ではないです。オリジナルが式波ナントカさんだったから、式波シリーズなのです。これは綾波シリーズのオリジナルが綾波ユイだったことからも自明です。
  • 式波が補完されるときに旧劇場版のラストシーンが出てきたのは、シンジの記憶がリフレインされたからです。カヲル君の補完シーンで「最後のシ者」の場面が出てきたのと同じ理由で、シンジはあの場面にも落とし前をつける必要がありました。(メタ的には「気持ち悪い」結末を作らざるを得なかった旧劇場版当時の庵野さん自身と、あれを見てショックを受けた視聴者のために、庵野さんが落とし前をつけた)
  • 式波の身体が成長していたのはエヴァンゲリオンがなくなったことでエヴァの呪縛から開放されたからです。なので、あの式波はあくまでも式波で、惣流と合一化しているわけではないです。
  • 最終的に式波は第3村に戻っています。
  • ということで、ラストシーンの宇部新町駅にいたアスカは式波ではないと考えたほうが辻褄が合います。
  • そんなわけで、惣流・アスカ・ラングレーの魂は新劇場版の世界にはいませんでした、というお話だったのですが、宇部新町いたアスカが惣流だと考えてもよいでしょう。そのへんの解釈は見る人に委ねられていると感じます。

 

シン・エヴァンゲリオン劇場版・惑星大戦争 BGM 激突!轟天対大魔艦 を演奏してUPしましたの巻

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シンエヴァと惑星大戦争の両方のサントラを聞きながら作りました。スコアはシンエヴァのサントラに沿ったもので、エリック宮城さんの派手なトランペットも入っています。ただシンエヴァのサントラも、エリックさんのトランペット以外はとても原曲に忠実なことがわかりました。

自分はシンエヴァのサントラを全部コピー演奏してやろうという野望を持っておりますが、再現が難しい曲からやろうと考えていて、まず合唱が入った曲やピアノ協奏曲から手を付けています。そしてこの曲は難易度が低そうだったので後回しにつもりでした。しかし難易度が非常に高かった鬼滅の炎をやった結果、4月に1曲しかYouTubeにアップできなかったので方針を変えて、景気づけにもなるこの曲をやることにしました。

ほとんどベタ打ち込みでいける(だから難易度が低い)という予測は外れて、細かな調整を入れたところもあります。

まず下記のAメロのフレーズです。

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スタカートのあとの長い音を正確なタイミングで鳴らすと先走って聞こえるので、少し遅らせています。同じリズムのフレーズがあちこちにあるので、全部タイミングを調整しています。

 

fpからクレシェンドして速いスタカート連打のトランペットも少々面倒でした。

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Hollywood Brassのアクセント付きの音を使えばクレシェンドだけで済むのでラクかなと思いましたが、Cinematic Studio Brassを使って、fpのニュアンスを含めてCC01で作り込みました。1つ作れればあとはコピペできるので、そんなに苦にはならない作業です。

あとギターのワウ(ワカチョコさせるエフェクト)はリアルタイムで動かしています。これも地味に大変でした。

 

※使用音源
木管:VSL Woodwinds
・ドラム:Toontrack Sperior Drums 3
・ギター:VIR2 Electri6ity
・ベース:KONTACT PLAYER付属のやつ
金管:Cinematic Studio Brass、EW Hollywood Brass(トランペットソロのみ)
・弦楽器:LA Scoring Strings
ヴィブラスラップ*1:EW Hollywood Percussion
・ディンパニ:Hans Zimmer Percussion
・ハープ:VSL Vienna Special Edition

*1:カーッ!って鳴ってるやつ

鬼滅の刃 無限列車編 主題歌 -炎- オーケストラアレンジで演奏してUPしましたの巻

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無限列車編の音楽をいろいろUPしてきましたが、ひとまずこれで終わりにするつもりで主題歌の炎を演奏してみました。

旋律に同音連打が多く、その部分をいかに自然に、音楽的に奏でさせることができるか?というのが焦点でした。サンプリング系の音源は同音連打をレガートに演奏するのが難しいんです。案の定ベタ打ち込みの段階では全然ダメで、参ったなあと思いつつ少しずつ細かな打ち込みをして、目指すイメージのサウンドに近づけていきました。

 

※使用音源

  • 弦楽器:LA Scoring Strings
    ARCという機能でキースイッチを組んで、さまざまな奏法を使い分けています。
  • 独奏ヴァイオリン:Chris Hein Solo Violin
    超多機能なのに、キーボードで弾くだけでそれっぽく鳴るのでありがたい音源です。
  • 独奏チェロ:Spitfire Solo Cello
    これもほぼキーボードで弾いただけですが、もとから濃厚なビブラートがついている極めてエモーショナルな音色なのでこんな感じになりました。
  • 木管:Vienna Synchron'zed Woodwinds
    初使用。使いにくいです(;´Д`)
  • 金管:EW Hollywood Brass、Cinematic Studio Brass
    Hollywood Brassは使いにくいんですが、フォルテが強いだけでなく繊細な表現もできるのでこういう曲にはうってつけです。1コーラス目のサビのトランペットソロがこれです。
  • その他
    合唱:EW Hollywood Chorus、ピアノ:Ivory II American D、ドラム:Toontrack Sperior Drum 3、ハープ・鳴り物系:Vienna Synchron'ized Special Edition
    バーブWaves IR-L

WavesのコンボリューションリバーブIR-Lを初めて使いました。木管をVienna MIR Proで空間処理するので、他の楽器も同等にするためには何を使うのがいいか?と考えた結果です。ドラムやピアノに対してもいい感じに空間を作ってくれるので今後も使っていこうと思います。木管はSynchron'zed Woodwindsが期待はずれなのでVSLに戻そうと思いますが、これも音は良いものの使いやすいとは言えないので何か他にないかなあと思ってます。

シン・エヴァンゲリオン解説第八回:白線の巨人について

エヴァ新劇場版:序の冒頭に出てくるこれです。

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白線の周囲が赤くコア化しているのでこの巨人はアダムスと思われます。

アダムスは全部で6体いるんですが、セカンドインパクトに参加したアダムスは5体です南極に十字架が5つあるのがその理由です。そのうち4体はセカンドインパクトで消滅していて、残りの1体(十字架が倒れている)がここまでふっ飛ばされたか、持ってこられたんだと思います。ということで、エヴァ第13号機はおそらくこの白線の巨人であるアダムスから作られています(マリいわく「アダムスの生き残り」)。セカンドインパクトに参加しなかった1体はMark.06に使われたと思います。

 

新劇場版においてインパクトを起こすには、アダムスと槍が必要です。
Mark.06でサードインパクトが起きていますので、アダムスの生き残りと考えるのが妥当でしょう。これでゼーレのいう「真のエヴァンゲリオン」という言葉の意味も理解できますね。

シン・エヴァンゲリオン解説第七回:ネブカドネザルの鍵とアダムスの器についての巻

ネブカドネザルの鍵についていろいろ考察してきましたが、これはアダムスの器であるエヴァンゲリオンを作るのに必要なアイテムである、という自分の中で結論づけました。

「神と魂をつなぐ道標」というのは、シン化(疑似シン化)したエヴァのことを指すと考えられます。魂はリリン(ヒト)の魂、つまり人格のことを意味します。アダムスの器は搭乗者(アドバンスト・綾波シリーズ、式波シリーズ)の魂を贄にしてシン化状態になっているのです。

1.アダムスと槍について

ゴルゴダオブジェクトに槍が6本あったことを考慮するとアダムスは6体いたと考えられます。そこから作られるネブカドネザルの鍵は6つですから、アダムスの器も6体作ることができます。ゲンドウの計画(フォースインパクトと神殺し)のためには、アダムスの器たるエヴァンゲリオンが5体必要ですから、鍵は1つ余ります。こうして作られたのが、フォースインパクトの依代としてのエヴァmark6第13号機と、神殺しの船の運用のための4体のエヴァ(mark 9・10・11・12)です。そして余った鍵で碇ゲンドウ自身が自らの魂を贄として捧げ、アダムスの器になるのです。

なお、当初はmark6もアダムスの器だと考えていましたが誤りでした。mark6はアダムスそのものを素体としたエヴァであり、搭乗するのも第一使徒であるカヲル君ということで、mark6自体がすでに神と同等の存在なのです。ゆえにネブカドネザルの鍵に頼らずともシン化できるのです。

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アダムスの器

アダムスの器の特徴は、稼働にあたり外部電源を必要としないこと*1、ATフィールドを持たないこと、全身がコアであり物理的な攻撃で破壊されても再生すること、目からビームが撃てること、などがあります。ゲンドウはシンジを相手に自身のATフィールドが出たことをかなり驚いていましたが、アダムスの器になったのにATフィールドがあったから驚いたんですね。

エヴァ第13号機は、マリが「アダムスの生き残り」と言っていたので、6体いたアダムスのうち、セカンドインパクトで消失した4体以外の残りを使って作ったものと考えられます。南極には十字架が5つありましたので、セカンドインパクトは5体のアダムスで起こされたはずです。しかし、実際にインパクトを起こしたのは4体で、残りの1体はインパクトを完遂できなかったのでしょう。その証拠に十字架が1本倒れています。この生き残りのアダムスを何らかの方法でネルフのそばまで持ってきているはずです。エヴァ新劇場版:序に出てきた白線の巨人がそれです。このアダムスがエヴァ第13号機の素体になったと思われます。
第13号機もアダムス自体を素体にしていることと、使徒であるカヲル君が搭乗する前提で作られているので、本来であればネブカドネザルの鍵を使う必要はないはずです。しかしゲンドウによってタンデムタイプに改造されたことで鍵が必要になりました。つまり、シンジや式波タイプのクローンといったリリンを利用するためにネブカドネザルの鍵を使ったと考えられます。

カヲル君が乗っていたエヴァMark 6は、セカンドインパクトには参加しなかった1体のアダムスを素体としたエヴァです。エヴァ新劇場版:破で通常のエヴァとは建造方法が異なるというセリフや、Mark 6こそ真のエヴァンゲリオンというゼーレの言葉がアダムスそのものを素体にしたと考えるのが自然です。

ちなみに。

ゲンドウがアダムスの器になったのは、エヴァQでカヲル君が第13の使徒に堕とされ、ゲンドウが「始めよう、冬月」と言った直後です。「第12の使徒を倒した時点で存在している生命の実を持った生物」が13番目の使徒に認定されるのですが、ゲンドウ自身が使徒になってはまずいのです。なので、第12の使徒をカヲル+シンジが乗ったエヴァ第13号機に始末させて、カヲルが第13の使徒になったことを確信してゲンドウはネブカドネザルの鍵を飲み込んだのです。なお第11の使徒真希波・マリ・イラストリアスと考えられますが、彼女は何らかの手段で使徒の力を封印していると思われます。
これらの事情を確実に把握できたのはゲンドウ、冬月、マリ、カヲルの4人です。エヴァQの予告で「マリとXXXXが極秘に会談」というカットがありましたが、会談の相手はゲンドウ解任後にネルフ司令になったカヲルで、双方の認識を合わせた可能性が高いです。ただマリとカヲルは、カヲル自身が第13の使徒に堕ちるまでゲンドウが何を企んでいるのかを理解できませんでした。また加持もゲンドウがネブカドネザルの鍵に執着していることについて何らかの違和感を持っていたとは思います。

なおセカンドインパクト時点ではユイさんは存在しており、ゲンドウも神殺しなどという大それたことは考えていなかったはずです。そして新劇場版:序の白線の巨人が比較的最近できたような状況だったことを考慮すると、南極に残った5本の槍とアダムスの生き残りを回収したのはセカンドインパクトよりだいぶ後で、ユイさんの消失後ではないかと思われます。このあたりは旧TVアニメ版がE計画から人類補完計画に変容したのと同様に、新劇場版でもユイの消失をきっかけに葛城博士が提唱した人類補完計画をゲンドウが捻じ曲げていったと考えられます。

さらに余談ですが、リリスからも鍵を作ることができると思われます。ゼーレのモノリスネブカドネザルの鍵が埋まっているような描写がありましたが、アレです。リリス由来なので生命の実がなく、稼働するには外部電源が必要となります。*2

ヱヴァ:Q】ゼーレのモノリスとネブカドネザルの鍵 - みんなのエヴァンゲリオン(ヱヴァ)ファン

アダムやアダムスは単体生命体なので、関連するアイテムは1:1でしか存在せず、鍵も槍も1体のアダムスに対して1つずつ対応すると推測されますが、リリスは群体生命体を生んだと言われているので、鍵は複製できると考えられます。新劇場版に登場するヒト型のエヴァンゲリオンの一部(零号機、初号機、2号機、3号機、仮設5号機、8号機)はおそらくこのリリス由来の鍵を用いて建造されたと考えられます。ゼーレのモノリスも一種のエヴァでしょう。ゼーレはモノリスに取り込まれていますが、これがゲンドウのいうヒトの形を捨てたということです。

リツコさんが初号機を覚醒させたシンジに対して「ヒトに戻れなくなる!」と言っていたのもおそらくこのような状況になることを想定していたと思われます。

なお、魂(=ヒトの操縦者)がなくても動かせるタイプのエヴァ(mark4、7)にはこのような鍵は使われていない可能性があります。これらのエヴァは魂と神をつなぐ必要がなく、文字通りのロボットだからです。

*1:アダム由来なので生命の実を持っていることになる

*2:エヴァQで冬月先生がモノリスの電源を落としてましたね。

シン・エヴァンゲリオン解説第六回:真希波・マリ・イラストリアスについての巻

イスカリオテのマリアこと、第11の使徒こと、真希波・マリ・イラストリアスです!

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キリスト教においてイスカリオテのマリアとは、すなわち12の使徒に入らないイレギュラーな使徒だそうです。一方、エヴァ新劇場版に登場して殲滅された使徒は10体です。番号でいうと3・4・5・6・7・8・9・10・12・13。

エヴァ序でゲンドウが「我々はあと8体の使徒を倒さなければならない。それがリリスとの契約」とか言っていました。このときに2体倒していたので、倒すべき使徒は全部で10体ということはエヴァ序のときには明らかになっていました。エヴァ破で第10の使徒まで出てきて、Qに出てきたのが12と、いないはずの第13の使徒です。第11の使徒はどこに行ってしまったのか?これはずっと謎で、シンジだとかペンペン(笑)だとかいろいろ考察されていましたが、マリがイスカリオテのマリアと呼ばれていたことと、DSSチョーカーをしていることがわかりましたので、彼女が第11の使徒ということが示唆されました。いないはずの第13の使徒(カヲル君)がイレギュラーだと思っていたんだけど、第11の使徒こそイレギュラーだったというオチですね。