ブラームス:交響曲第1番〜のだめカンタービレの巻

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000ALJ16S/249-2190308-9743535
「のだめ」は愛読している漫画です。一般人が読んで面白く、クラヲタの自分が読んでもおもしろいのです。きっと作者のバランス感覚が優れているのでしょう。でも、このCDはどうよ?というのが今日の主題です。のだめファンなら深く考えずに購入すると思いますが、ヲタとしてこのCDに対しては「違う!何かが違うんだ!!」と叫びたくなってしまいます。
まず価格。2800円ってなにそのボッタクリ。ご存知の方も多いと思いますが、クラシックCDって安いんですよね。輸入盤だと新譜でも1800円くらい、旧盤だと1000円以下ということもよくあります。だからこそ、ブラームス交響曲のように同曲異演盤が大量にあるCDを何枚も購入できるんですよ。2000円超えたらよっぽど好きな演奏家とかでない限り買いません。選択の余地はたくさんあるんです。だからこのCDは「のだめ」というブランド以外は購入動機になりえないのです。私はそのために2800円も払いませんって。次に曲目。ブラームス交響曲第1番ってなにこの本格派。ブラームスが20年以上かけて書き上げた大作です。内容の重さもハンパではなく、「のだめ」でちょっとクラシックに興味を持った人が気楽に聴ける曲じゃありません。クラシックの門戸を広げるならもう少し選曲に気を遣ってもよかったのではないかと思います。
でもそれ以上に私が憤る元凶があるんです。それについて、少し長くなりますが書きたいと思います。
漫画やアニメのイメージアルバム、サウンドトラックは1980年あたりから頻繁に出るようになりました。私は漫画ヲタでもあったのでいろいろ買いましたが、内容は玉石混交でした。最初に成功したのは日本コロムビアです。同社は宇宙戦艦ヤマトというドル箱商品を持っていたため、漫画アニメ系の企画は優遇されていたようです。しかも、自前のオーケストラを持っていました。オケはレコード会社にとってはお荷物的存在なのですが、コロムビアの場合は歌謡曲伴奏&クラシックからアニメサントラへと軌道修正できたのです。そして当時の若手作曲家(現在の大御所級)を大胆に起用して、音楽的にも質の高いレコードを出したのです。これらの中には現在でも高い評価を得ている作品が少なくありません。
この現象に目を付けたのがキングレコードです。当時のポップス業界は歌謡曲からアイドル路線へ転換しており、ずっと歌謡曲主体で営業していたキングは長いこと低迷していたのですが、ガンダムファーストガンダムです)のサントラ盤で思いがけないバブル的成功を得たのです。「ヲタ相手の商売は儲かる!」と気付いたキングは、ガンダムで得た原資をもとにスターチャイルドなるアニメ漫画ヲタク向けレーベルを作りました。そして、ちょっとヒットした漫画があれば片っ端からイメージアルバムを作ったのです。その中には「イデオン発動篇音楽集」のような、アニメサントラの歴史に残るような傑作も含まれてはいましたが、過剰なアルバムの乱発によりすぐに質の低下を招くことになったのです。また、ネタ(原作)が無くなるとファンの多くない作品まで無理やりアルバムを制作しました。その結果、購入者は減少しつづけ、最終的にはイメージアルバムというジャンルそのものが衰退していくことになったのです。
限りあるコンテンツを食いつぶした結果といえばそれまでですが、これはイメージアルバムに限らず、アニメ漫画業界では非常に良くあるバブル崩壊の図式なのです。今回「のだめ」のCDを出すのは、他ならぬこのキングレコードなんです。しかも、「のだめ」は8月に講談社からCDブックが出たばかりなんです。なのにまたCDが出るんですか?私が憤る理由はこれです。キングレコード、またお前か!コンテンツを食い荒らすのもいい加減にしろ!といいたいのです。