「越路吹雪物語」は実は「岩谷時子物語」、の巻

越路吹雪がピーターに憑依しているということで評判の舞台を見てきました。場所は越路吹雪その人がたびたびリサイタルを行っていた日生劇場です(この劇場の内装がアントニオ・ガウディっぽい造形で実にハイカラでございました)。
で、まあ、3時間ほど(長いんです)笑ったり泣いたり感動させてもらったんですけど、やはり岩谷時子が主人公ではないかと思いました。場面転換が激しいので観るほうも集中力を要求される芝居なのですが、基本的に岩谷さんの視点で時系列に沿ってまとめられているので自然に受け入れることができます。だから観客は奔放なコーちゃんを見守る岩谷さんと同じ目線になるんですね。そうすると「池畑慎之介が演ずる越路吹雪」ではなく、越路吹雪本人を見守るような状態になってしまう。これがこの芝居のトリックで、だから歌うときの声が実はあんまり似てないとかそういう些細な差異はどうでもよいほど、舞台の上に越路吹雪が降りてきている状況が出来上がってしまうのでした。
まーでも、白状しちゃうと「愛の讃歌」の朗読は泣いた。しばらく人前でこの曲を聴けなさそう。あの詩を朗読しながら泣き出さない高畑淳子はプロだと思ったです。美輪明宏が「悪くはないけど出来合いで作ったもの」「原詩の意味と違う」と言うのは半分は本気(美輪もエディット・ピアフ信奉者なので)ですが半分は岩谷さんへの嫉妬と羨望ですね。