殺し屋1(イチ) by 山本英夫の巻

1〜10巻(完結)を一気読み。6巻くらいまでは秀作かと思ったけれども7巻以降はグダグダ感が溢れて惜しいです。最後は「そりゃねーだろジイさん!」と叫びたくなりました。主要な登場人物がことごとくサドだったりマゾだったりする設定は可笑しいし、一気読みするほどストーリーが面白いです。なので、ほめている人がとても多いのですが、あえて私は貶してみます。←アマノジャク。
主要登場人物設定が極端なので最後までバランスを欠いてるんですね。要するに全員キャラが立ちすぎ。脇役のサブストーリーを書いてくれたらさぞかし面白かろう。しかしそのために視点の定まらない展開になってしまいました。これが最大の欠点かと。最初からジジイ視点で書けばラストまで綺麗につながると思うんですが、第三者目線になってしまい感情移入を阻害します。それは好ましくない。ということでドMのヤクザ視点になってしまうんですが、このヤクザの背景設定が甘いんだな。ヤクザに対抗するために中盤以降でイチ視点が出てきて過去が語られたりするんですが、もうステレオタイプのきわみもいいところ。こういうのはサイドストーリーとして描けばいいことで、グダグダ語られると興醒めします(実際、本編とは別に単行本1冊分のサイドストーリーが描かれてます。それだけにしておけばよかったのに!)。もっとこう虚無感を前面に出すとか、いくらでも演出しようがあると思うんです。妙にこぢんまりとまとまってしまった最終決戦とか、脱力感全開の終結部は本当に残念です。映画にもなったようですが、原作以上にシッチャカメッチャカだったみたいで。R-18ってことですから、画面描写は原作を踏襲しているあろうことは想像できます。ちょっと見てみたい。