ベートーヴェン ピアノソナタ12番練習中の巻

トップをねらえ!熱のさめやらぬ昨今ですが、努力と根性で粛々とピアノ練習をしましょう。というわけで、ベートーヴェンピアノソナタ12番のつづきです。今回はできるだけ一気に仕上げようと目論んでいて、第一楽章から第三楽章をやっています。
第一楽章の譜読みはほぼ終了であとは弾きこんでいくだけです。この楽章はテーマが意外に難しいので注意します。落ち着いた雰囲気を出すためにこってりしたレガート奏法と、細やかなデュナーミクが要求されます。これだけのポリフォニックな書法の曲をしっかりレガートに弾くのはなかなか大変ですし、各声部のデュナーミクをきちんと計算しないとグチャグチャになります。あとは最終変奏以外それほど難しくありません。最終変奏はほとんどツェルニーエチュードのようで、4−5とか3−5の指でトリルしながらメロディを弾かされます。
第二楽章はショパンスケルツォ3番っぽいポリフォニックなスケルツォですが、ショパンほど難しくないし短いです。第三楽章は葬送行進曲で、これも音符を並べるだけなら全く難しくありませんが、無頓着に和音連打すると「だっだだっだだ〜どっどどっどど〜」(笑)という単なる音響になってしまいます。つまり、構成音の音量バランスや旋律線のアーティキュレーションを意識しないと「音楽」にはならず、ここが難しいと思いました。あと第四楽章は素直に難しいです。こんな感じでひととおり譜読みしてみるとこのソナタの特徴が良く見えてきますし、ショパンが好んで弟子に弾かせていた理由もわかってきました。

  • 構成が単純で、音楽的に理解しやすい。
  • その割に、主題や曲調に深みがあって飽きがこない。
  • どの楽章も適度に短い。第一楽章も各変奏は1〜2ページであり、冗長さとは無縁である。(ショパンは冗長な展開が大嫌い)
  • 多彩な演奏技術が使われている。力押しで攻めるのではなく、手や指の独立と柔軟性を養うのに適しており、ショパンのピアニズムに近いものがある。

この曲はベートーヴェンとしては珍しいタイプのものだと思います。モーツァルトトルコ行進曲付きソナタを下敷きにして、楽章構成や形式をいろいろ弄って試した実験作といってよいでしょう。その点でベートーヴェンの有名曲で特徴的とも言える「作曲者の想いがこもった渾身の作!」という強烈なアピール力はないと思います。この曲の次にあたる「幻想ソナタ」ではまた違ったアプローチを取っており、さらにその次の月光ソナタにおいて新しいピアノソナタを作る理念が結実していると思います。