ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団

プログラム

今日はみなとみらいホールでの演奏会です。先日のサントリーホールのときよりアンサンブルの一体感があると思いました。特に最初のリャードフは結構難しい曲で、サントリーでは散漫な感じがなきにしもあらずだったのですが、今日はとてもうまくまとまっていたと思います。テミルカーノフさんもご満悦。チャイコンは基本的にはレーピンの横綱相撲です。うますぎ。あと今日もテミルカさんの伴奏がとにかく丁寧で絶妙。イントロの弦の鳴りとか「ザ・ロシアのオーケストラ」という匂いがプンプンしてよかったです。ぶっちゃけこの曲は意外につまんない&飽きるので、ショスタコバイオリン・コンチェルトを聴きたかったなという気分もありました。
ショスタコ交響曲は第一楽章がかなり遅いテンポで始まって、そのまま展開部まで超重苦しい雰囲気を作り上げて一気に聴衆を引き込んでしまいました。デュナーミクの扱いが相変わらず丁寧。音量を下げてから新しい展開を作っていくのが本当に自然でうまい。もうテミルカーノフさんには「ミスター丁寧」という言葉を献上したいです。ヤンソンスの指揮で同じ場所で同じ曲を聴いてるのですが、ヤンチャ坊主(ヤンソンス)と切れ者優等生の違いがまざまざと出ていた感じです。*1第二楽章はでだしのコントラバスを全部ダウンボウで「ゴン!ゴンゴンゴン!ゴゴゴン!」とものすごい緊張感煽りまくりで、その後も皮肉でアイロニカルな、しかし確実に上品な(これがテミルカーノフの特性。上品なのです。)音世界を作り上げました。素晴らしい。第三楽章は弦楽器群のビブラートの利かせかたの制御が見事。1stバイオリンはノンビブラートに近く、ひんやりした雰囲気なのですがチェロなんかは存分にビブラートさせることが多かったです。フィナーレの入りは速く、コーダはどんどん減速するパターン。途中で金管グループが半拍ほど先走ってアンサンブルが崩壊しそうになったのですがうまく持ち直し、その後さらに集中力を高めたのは見事です。ラストも、遅めのテンポの中で金管がよく持ったと思います。いや〜こわいこわい。思わず寒気をもよおすしめくくりでした。アンコールも見事で言うことなし。
今回の来日では2回公演を聴きましたが、ショスタコの解釈は純音楽的でした。テミルカーノフさんもいろいろ思うところはあると推察しますが、この時代だからこそ、しがらみなしに純音楽的にショスタコを演奏できるんではなかろうかと思います。来月はいよいよロストロポーヴィチの指揮でタコ8が控えているのですが、こちらはロストロさんの主観が入りまくることは確実っぽいので、今から覚悟していきます。

*1:やんちゃなところがヤンソンスの魅力でもあるんですが、ウィーンフィルとのニューイヤーコンサートを見てもわかるように、ちょっと荒すぎると思うのよね。