「ダンテを読んで」の問題点

残された問題点がいくつかあるので、それについて書いてみたいと思います。

拍子感の継続

16分音符を基本とする4つ割りリズムり、三連符による3つ割りリズム。この2種類をパートごと別々に適用しているため、ビートの一貫性表現が困難になっています。これは個人的にはリストの作曲法の最大の欠点と思っていて、よほど上手に弾かないとリズム割りの違いにより各パート単位でブツ切りになった印象を与えてしまいます。*1

低音域の密集和音

かなり低音域においても短三度や長2度を含んだ和音を多用しており、響きが混沌としたものになりがちです。同時期のショパンが、低音域に密集和音を使うことが皆無だったのと対照的です。最もイヤなのが終止部の左手で弾くニ長調トニカのトレモロで、これは個人的にはD+A→Dのトレモロに変更して弾きたいです。他にもあちこちで「この音を抜いて弾いた方がすっきりした響きになる」と思う箇所があるんですが、リストさんはそんなことを承知の上で密集和音を書いていると思うので、勝手に抜いてしまっていいものか判断に苦しむところです。

*1:この曲の反省を生かしたピアノ・ソナタでは基本音価を4分・8分・16分音符とし、三連系の音価をほとんど使わないことによって、パートがブツ切りなることを防止しています。結果的に全曲を一貫する強固な構築性を持たせることに成功しました。