咎狩(トガリ)by夏目義徳、10年越しで感動の終幕の巻

「トガリ」っていう、地獄と死と罪にまみれたくら〜い漫画があったんです。突き詰めると冥界バトルものなんだけど、あまりに暗い内容なのでなんと8巻で打ち切り(泣)。マンキツで読んで、すげえ作者だと思っていたら、案の定2ちゃんねるにスレがあって、再開を望む声があったんですね。そしたら「咎狩 白」というタイトルでいつの間にか再開して、なんともう完結してるっていうじゃないですか!速攻でアマゾンぽちって注文して読破しました。・・・感動。それしか言えねえ。
この作者は宮崎駿が「風の谷のナウシカ」漫画版で至ったのと同じ境地に到達してるとしか思えません。闇の存在を否定せず認め、その中の光である命を大切にする。闇は暗いからといって消していいものではなく、つねに存在するからこそ命も輝く。というような思想の元、阿修羅さまを巻き込んで、悪天使の手下と、地獄の鬼っ子である主人公が大バトル(笑)ですよ。ええ〜これってジャンプ系バトル漫画だったの?とかチラッと思ったんだけど、なにしろぶった斬るのは肉体ではなく精神に巣食う「咎(とが)」なので、バッサバッサ倒してるのに読者は罪悪感を持たなくて済むってのがよかったです。絵を含めてなんとなく皆川亮二風に変化しましたが、10年前は想いに絵がついていってなかったので、この年月は無駄ではなかったと思います。相変わらず汚ねえ字で各話解説やあとがきがついてるのも、中断前と同じですごく懐かしい。最終巻のあとがきは本当に感動的で、作者もやっぱりこの漫画を終わらせたかったという気持ちが切々と書かれています。この漫画を描ききったらもういい、とまで思っていたようですが、いざ終えてみたら「生きてるうちにまだまだ描き続けないともったいない」と創作意欲が途切れない様子。次回作が待ち遠しいです。
最後の見開きページがすごかったな。「善と悪」「生と死」「賢と愚」「罪と罰」「人と神」「悲しみと喜び」・・・「始まりと終わり」・・・「それらはすべて、大いなる時の歩みの一片に過ぎない」・・・