ラヴェル「ミラージュ、または鏡」の解説を掲載しましたの巻

音楽図鑑CLASSICに掲載しました。いや〜、ついに書き上げた!いままで楽譜の音楽学的な分析で満足していたけど、この曲集に入ったとたん「ちがう、ちがうよ。そうじゃないよ・・・」と俺の中のゴーストがささやくので、現在過去未来の迷い道をクネクネしながら、ようやく自分の中でモヤモヤしていたこの曲集の真実にたどり着きました。モーリス・ラヴェル先生のこともついにわかりました。シャイだけどとても心優しい、いいやつです。
彼は同性愛者なこともあって、どうしても世間から身を守るためのヨロイが必要だったのです。彼のヨロイは、なんと「楽譜」でした。なので私はエヴァ初号機に乗って(笑)、モーリス君の強固なATフィールドをブチ破り、ついに中の人との一時的接触に成功しました。モーリス君はプライドが高いので、私と一体化してLCLにまで還元されることはありませんでしたが。以上エヴァを知らない人には理解不能な比喩で申し訳ありません。要は私はヨロイの奥に隠された彼のココロに会ってきた、ということです。
モーリス君のことはもうほとんど理解してしまったので、あとは残りの曲を片付けるだけになりました(このいいよう)。そうはいっても夜のガスパールはベルトランの詩の解釈からとりかからないと真実に到達できないけどな!詩は音韻が大事だから、原著が必要なのです。ベルトランの本を探すのは苦労したわ〜。あらゆる時代の人が入手に苦労したという逸話があるけど。もちろんラヴェルたちも。ベルトランの詩はまだ頭の中でモヤモヤしてるけど、そこからの謎解きが楽しい。まさに知的遊戯です!音韻に関しては、ミシェル・ダルベルト先生が詩の朗読をはさみながら演奏するという自慰行為はなれわざをやってのけたライヴを録画してあるので、それを見るだけ〜。
モーリス君をわかってあげるために、時間をかけていっぱい勉強したのよ。苦手なフランス文学とかフランス文化史とか。そうしたら俄然ドビュッシー先生に興味が出てきてしまいました。やんちゃなクロォド君はモーリス君以上にやっかいですよ!だがそれがいい
いつも連れに、お前の書いてることはむずかしくてわからんとか、楽譜なんか読めんわヴォケとか、さんざん言われてきたので、楽譜なし&音楽学的解説もなしです。こんなに自信たっぷりな理由や、勝手にミラージュを追加した理由は、中身を読んでいただければおわかりいただけると思います。「○○、または△△」って標題を、いつかやってみたかったのですが、この曲集にピッタリでした。耽美ロマン(笑)。もちろん各曲の標題も勝手に変えました。「道化師の朝の歌」はない、「朝の歌」はありえない、とずっと怒っていたからです。この怒りと疑問が、今回の解説を書くきっかけでした。ラヴェルのつけた標題の日本語訳はたいがいおかしいけどね。パヴァーヌだってもっといい日本語を考えて直してやりたい気分。
やっぱりフランス語は直訳しちゃいけないと思います。たとえばクープランの「葦」にしても、「風にゆれる一枝の葦」って補足してやればだれだって孤独な人を葦に見立てて描写したって推測がつきます。「吹かれる」「なびく」「揺れる」とかじゃダメ。ひらがなで「ゆれる」がいいのです。「1本」じゃダメで「一枝」なのです。ドビュッシーの雪は踊るんじゃなくて「舞う」ですよ。この違いがわからない人とはあまり話したくないです。自分も昔はどうでもいいじゃんって思ってましたが、フランスの文化はそういう態度では理解できません。でも、ふさわしい語を探すのは容易ではありません。語彙の重要性を再認識しています。