先日の絵がCGでは再現できない理由の巻

http://d.hatena.ne.jp/Harnoncourt/20120410
この件について、解説しよう!(富山敬ボイス)

要は消失点への軌跡が湾曲する、「だまし絵」なのです。(ミススペルしちゃったw正しくはVP = Vanishing Point)
2つの消失点がひどく離れてる上に、上方にも消失点があるように描かれているので、ものすごい騙し方なのです。この絵の場合は、カメラ(目線)が艦首から艦尾へとPANするイメージで描かれているのがポイントです。すなわち、艦首は見下ろし気味になるから下方に消失点ができ、艦尾は水平に見通すので奥に消失点ができます。つまり、消失点がカメラのPANに追従するのです。それを1枚絵で表現すると、こうなるわけ。
さらに正確な遠近法を使わないで、空間を湾曲させているのがポイント。消失点へ向かって一直線に小さくなる遠近法は、実は不自然です。というのは、それは真空が前提だから。空気があると、巨大な物体では像が歪むので、それを強調して描いてるんです。宇宙空間なのにね。
この構図は実にアニメ的、マンガ的であり、さらにいえば主観的で、私は大好きです。湾曲したパース、複数の消失点を画面の外へ置く構図、どれもこれも手描きアニメではお約束の技法です。でもCGでこれをやろうとすると、まず不可能です。理由としては、こういう湾曲した空間をシミュレートするのが、非常に困難だからです。できないわけではないと思いますが、レンダリング時間が天文学的になる罠。

この絵は動かないのでまだいいんですが、このパース上を手前⇔奥の方向に動くと、もっとすごいことになります。つまり、物体にが変形しながら動くことになるわけ。前後の動きで物体をあらぬ形態に変形させたのは、もちろん金田さんが発祥です。コマ送りで見るとヘンなんですが、連続すると違和感がないという。この技術が板野一郎に受け継がれて、カメラの追従までアニメートすることで、あの板野サーカスになるわけです。