辻井信行(2009オペラシティリサイタル)@NHKの巻

ピアノの上手な子供のデビューリサイタルでした。
アメリカは欧州とはクラシックの聴き方や演奏論自体が違うので、ああいう弾き方をしても評価されるたのだと思いました。ドイツ〜オーストリア系のコンクールなら、確実に落ちます。あんなハンマークラヴィーアは、許されないのです。あの曲は、第三楽章が非常に難しく、弾く人も聞く人も尋常でない集中力を要求されますが、辻井さんはスルスルサクサク流して弾いてしまいました。同じ調子で、終楽章もサクサク弾きのけました。ふざけんな。ベートーヴェンを甘く見すぎだろう。あと、革命のエチュードも相当にひどかった。AKB松井咲の演奏の方がよっぽど心に訴えるものがあった。これは横山幸雄が怒るわけだわ。
なぜあれほど演奏内容が子供っぽいのでしょうか。これは私の推測ですけど、本人が要求するまま、子供のころにいろいろ弾かせすぎたんではないかと。カンパネラや革命の軽薄さは、子供のそれに思えました。特にドイツ系の音楽は、動機1つずつ、もっというと「1音」に意味があるので、辻井さんやアンスネスみたいにスルスル弾かれたのでは困るんですよ。
まあでも、1楽章終わるごとに拍手しちゃうようなレベルの聴衆には、このくらいの演奏がお似合いかもしれん、とか、相当ひどい感想も頭をよぎりました。あんなに未熟な演奏では、この先生きのこることはできないような気がします。

ただ、ミスタッチの少なさは驚異的。目が見えていてもミスタッチしまくる私たちは、彼の奏法を見習わないといけません。
「弾くべき鍵盤の上に指をセットしてから、打鍵動作を開始する」
これを守るだけです。彼は目が見えないので、いつも指が正しい鍵盤の上に置かれているかチェックしてから弾き始めてますし、レガートは鍵盤上を這うような奏法で、それはとても美しいのです。