宇宙戦艦ヤマトの音楽が、かなりクラシカルなことがあまり論じられないのが不思議でならないの巻

ヤマト2199のサントラ(BGM集)CDが発売初日いきなり売り切れとか、ちょっと信じがたい事態です。もちろん予約で入手しておりますが、解説に書かれている内容がイマイチだと思うので、補足します。

上記の動画で流れる、川島和子のスキャットが超有名な「無限に広がる大宇宙」は、8小節のメロディが全音下がる⇔上がるを繰り返すという、(非常に安直でコストパフォーマンスに優れた)転調を利用してエンドレスに演奏できるように作られている、と解説されていますが、この技法を多用したのは、何を隠そうフレデリック・ショパンです。ショパン先生は、この技法をいろいろな曲で繰り出します。ヤマトのBGMを作曲した宮川泰先生も、息子さんの宮川彬良先生も、あちこちで使います。平行移動の転調は劇伴の常套手段です。


有名な主題歌です。このイントロは、もちろんカノンですが、このことを指摘した人を見たことがありませんので、私が指摘しておきます。
「さらば〜地球よ〜」の旋律から「ソソド〜」というモチーフを取り出して、イントロを作り上げています。ソソドのモチーフはヤマトのモチーフで(私が命名)、ヤマト絡みの曲はなんでもかんでもソソドが登場します。これをライト・モチーフといって、クラシック界で使った人としてはワーグナーが特に有名です。映画やテレビドラマは台詞つきのオペラが進化した劇作品でもあるので、ライト・モチーフとの相性がよろしいです。ちなみに「さらばヤマト」の白色彗星のライト・モチーフは「レラソ♯」です。3つの音だけで、ヤマトか白色彗星かということがわかるからすごいです。しかしヤマト第1作では、デスラーガミラスのモチーフはありません(これが第1作の音楽面での欠点です)。

なお、ヤマト第一作のBGMにはクラシカルでない曲もあります。代表的なのはデスラーが登場する際のフリージャズっぽい曲です。あれはコード進行だけを渡して、ほぼアドリブで演奏したと思われます(泰先生の得意技)。「さらば」以降はしっかり作られた曲が主体になるため、いかにもヘッドアレンジで作られた即席風の曲は、当時のミュージシャンたちの空気感を伝えてくれるようで、とても魅力的です。

今回のBGM集は、「独裁者の苦悩」という曲で締めくくられます。私がいたく感銘を受けた、第三章で流れたデスラーの曲で、彬良先生が作られた新曲です。偉大な父親が作った曲が並んだアルバムの最後に、堂々と自分の曲を持ってきた彬良先生のゆるぎない自信と覚悟を感じた1枚でした。
やっぱりさ、このくらいの覚悟がないと、この仕事は引き受けられないのよねぇ(アキラ先生の口調でどうぞ)。

※余談
予想はしていたのですが、10〜11月はヤマト2199第三章とエヴァQのおかげで、いろいろグチャグチャです。