ヤマト2199サントラの音質が悪い関連の話題の巻

ヤマト2199サントラのAmazonレビューが「音が歪む」「音質がよくない」という評価で軽く炎上していますが、その件について、少し調査したのでご報告。

  • 結論
    • リミッター使いすぎ&マスタリングレベルを上げすぎ
    • てめえが使ってるオーディオ機器にも責任がある

1.マスタリングについて
これは波形を見れば一目瞭然なので、リッピングしたものを公開します。
条件を近づけるために、戦闘シーンの有名曲で比較しました。
上からヤマト2199「ヤマト渦中へ(通称ブンチャカヤマト)」、さらばヤマト音楽集から「白色彗星帝国」、ヱヴァ序音楽集から「DECISIVE BATTLE」です。なお、さらばヤマトのソースは最新盤「YAMATO SOUND ALMANAC」シリーズのCDを用いています。

ブンチャカヤマト
 
 まっくろけ。なんじゃこりゃ。*1

白色彗星帝国
 
 オーケストラ+ドラムス。

DECISIVE BATTLE
 
 「デンデンデンデンドンドン」のティンパニのリズムがよくわかりますね。

ブンチャカヤマトのマスタリングレベルが異常に高いことがおわかりいただけると思います。ヤマト2199のサントラは、どのトラックもこんな感じです。
さらばヤマトのサントラは、レベルを抑えたマスタリングだと思います。ヱヴァ序は0dBまで使い切っていますが、ほとんどの部分は-0.2dBに抑えています。*2

ヤマト2199のマスタリングは、昨今日本のCDで多い「とにかくレベルを稼ぐだけのなりふり構わない」タイプ、さらばヤマトのマスタリングはアナログ時代を彷彿させる古臭いタイプです。個人的には、ヱヴァのマスタリングがバランスがいいと思います。

2.歪について
音が歪むかどうかは、主に0dBで出力される部分の再生能力にかかってきます。
結論から言うと、DAコンバータ後のアナログ部に余裕がない機器を使うと、容易に歪みます。恨むなら、あなたの使ってる機器を恨んでください。
私が使っている機器だと、こんなかんじでした。

    • リッピングしたWAVをiMacのアナログオーディオ出力からヤマハiPodオーディオコンポの外部入力に接続して再生:レンジが狭いものの、歪感は少ない。ふつうに聴けます。
    • ヤマハiPodオーディオ内蔵CDプレーヤで再生:全然OK。これで聴くのが一番バランスがよkです。当たり前の結果ですが。
    • iMacのWAV再生をUSBでSoniccellRolandのシンセだがサウンドカード代わりに使用できる)へ転送してDA変換し、アナログ出力をヤマハiPodオーディオにinして再生:ひどく歪む。soniccellはDAに問題があることがわかっていますが、それが裏付けられる結果に。*3
      ここまでDA後の再生システムはすべて同じものを使用。
    • ピュアオーディオのシステムでCD再生:歪まないけれど、マスタリングの悪さがひときわ目立つ。ピュアオーディオシステムは、ソースの作り方が悪いと、より一層悪く聞こえてしまうのが一般的です。

とりあえず聴けるという観点では3勝1敗ですが、良いサウンドで聴けるという観点では1勝3敗という結果に。DA部に余裕がないSoniccellで再生が破たんしたことがわかりました。この結果から、ヤマト2199サントラが歪んでしまうのは、高すぎるマスタリングレベルと、それをうまく処理できないDAに原因があることがわかります。
ただ、最も高価なピュアオーディオのシステムでも音が悪いというのは、いろいろと哀しいものがあります。

3.よいマスタリングとは?
良識あるマスタリング・エンジニアであれば、ヤマト2199サントラのようなマスタリングをすべきではありません。
じゃあどうしたらいいのよ?という回答は、ヱヴァQサントラで示されていると思うので、それをご紹介します。
 

これはヱヴァQ音楽集のリニューアル版「N-ノーチラス号のテーマ」です。オーケストラとコーラス(とディストーションギター)の大迫力サウンドが楽しめる1曲です。
見た感じブンチャカヤマトと同じような波形ですが、最大出力が-0.4dBまでとなっています。余裕を残しているわけです。この0.4dBにエンジニアの良心を見る、と言ったら誉めすぎでしょうか。この曲は使用された楽器の種類が非常に多く、すべてのパートがフォルティッシモで演奏しているような状態に加え、エコーもたっぷりと乗っていて、ミックスとマスタリングが非常に難しいサウンドです。

ちなみにヱヴァQでは最大で-0.2dB、静かな曲に至っては-2.5dBでリミッターをかけています。-2.5dBリミッターは、小音量でも充実した音響で聴かせる効果があります。
最後にこの-2.5dBリミッターが最大限に生かされた「Kindred Spirits」の波形を紹介して本稿をおわります。

 

※反省
最近自分がUPしている動画は0dBまで使い切っていることが多く、再生環境によっては歪むかもしれません。反省して、「綾波レイのテーマ」からマスタリングの基準を変えました。

*1:大太鼓が鳴るところで歪みます。4つ打ちするから悲惨なことに。

*2:ヱヴァのサントラは-0.2dBまでが基本です。

*3:ちなみにsoniccellは96kHz/24bit AD機能もあって、こちらは優秀なのです。