エフゲニー・キーシン ピアノリサイタルの巻

ザ・シンフォニーホール(大阪)

キーシンのリサイタルを聴いてきました。かなり久しぶり。
いつものことながら、1音1音が丁寧で、なおかつパッセージのウネリ感や、楽曲全体の見通しや主張がはっきりしている演奏でした。シューベルトの21番のソナタを弾いていた頃から、徐々に音色の種類が増えていったと思いますが、さらに多彩な音色を自在に操っていたのが印象的です。21番を弾いていた頃は、まだ楽曲と音色の関連付けがうまくいっていなかったように思えましたけど、今回はそのような課題もクリアしていて、ピアニストとして一段と進化したと思います。テクニック的には、2〜3段階は進化してるんではないでしょうか。以前は、タッチによる音色の変化や、ペダルの操作が、それほどうまくなかったんですよね(プレトニョフとの比較です)。今回はウナコルダの使い方も、格段にうまくなっていました。なにより、あれだけ完成していたピアニズムをここまで大胆に変容させるのは、とても勇気がいると思うし、すごい精神力だと思いました。
ホジャイノフに続いてのキーシンということで、来月さらにプレトニョフのリサイタルに行くので、3世代にわたってロシアのピアニストを聴くことになります。
しかし、アンコールの英雄ポロネーズはイマイチだったな。なにしろ、あまりにフォルテで弾くので、ピアノの調律が狂ってしまって(笑)、ひどく調子っぱずれになっていたのです。この曲は自分も弾いたことがありますけど、演奏解釈が自分と違っているのが面白かったです。ミレドシのあと〜再現部までの、つなぎの部分の演奏表現がすごく難しいと思うんですが、キーシンの演奏は迷いがないですね。あと、この部分のラストで「ド」の音に延々とアクセントが付く場面があり、これも弾き方に悩むところですけれど、嫌味のないアクセントで、適度な緊張感を創りだすのはさすがだと思いました。
ディテールのことを言い出すとキリがないのでこのへんで。