五嶋みどり最強だったの巻

リサイタルその1
シューベルト: ピアノとヴァイオリンのためのソナチネ ニ長調 D384
シューマン: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番 ニ短調 op.121
モーツァルト: ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ホ短調 K304
R.シュトラウス: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 変ホ長調 op.18

4人の作曲家のソナタを弾き分けるという挑戦的なプログラム。見事に弾き分けてらっしゃいました。シューベルトの歌(びっくりするほど濃厚)、シューマンに潜む狂気、モーツァルトの悲哀、そして絢爛豪華なシュトラウスシューマンがものすごく怖かった。モーツァルトは、イ短調ピアノソナタと同時期の作曲、つまり母親が亡くなった時期なので、その感情を投影するとああいう演奏になると思います。
アンコールに「亜麻色の乙女」を弾いていたけど、正直なところいらなかったですw

リサイタルその2
クセナキス: ディクタス(1979)
サーリアホ: カリス(聖杯)(2009)
シュニトケ: ヴァイオリン・ソナタ第3番(1994)
ハートキ: 根付 -NETSUKE-(2011)
ダヴィドフスキー: シンクロニズムス第9番〜ヴァイオリンと電子音のための(1988)
アダムズ: ロード・ムーヴィーズ (1995)

この日が本番。特に後半が白眉。
ハートキでのジャポニズム表現、ダヴィドフスキーはテープに合わせての演奏(完全に一致)、アダムズの曲はヴァイオリニストとピアニストがそれぞれ別のシーケンサーになって、同期しながら弾くという、サイバーな設定だと思います。すごすぎる。現代曲ということで及び腰だった連れが、最後まで寝ないで聴いてしまうほどの内容でした。いずれもとっつきにくい曲なのですが、「オイコラ、聴きなさいよ!」と首根っこ掴んで自分の世界に引きずり込む力が、彼女の演奏にはあるのです。強い。勝てない。
聴衆がゴージャスで、久石譲とか一柳さんとか野平さんが来てました。

協奏曲
J. S. バッハ: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 BWV1052R(チェンバロ協奏曲 BWV1052からの復元)
シュニトケ: ヴァイオリンと室内オーケストラのためのソナタ(1968)
ベルク: ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
J. S.バッハ: ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調BWV1042

バッハの最初の曲がダメでした。最後の曲もダメでした。オケがいかん。ノンビブラート奏法はいいんだけど、アーティキュレーションが真っ平でお経のような演奏になっておりました。
その原因ですが、中間の2曲は演奏機会が少なく、特にシュニトケなんかほとんど演奏されない曲なので、たぶんバッハのリハーサルしている時間がなかったと思われます(推測)。ちなみに中間の2曲は「壮絶」の二文字が相応しい超名演で、ベルクが終わった時点でもうお開きにしてもいいって思ったほどでした。

ということで、いろいろなことを学べたチクルスでした。彼女のように、いつも音楽に対して真摯で、力強くありたいと思います。