岡田博美ピアノリサイタル@東京文化会館の巻

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三善晃:アン・ヴェール
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 op.109
矢代秋雄:ピアノ・ソナタ
ドビュッシー:12のエチュード(全曲)

矢代先生の没後40年ということで、リサイタルという体の三善先生と矢代先生を偲ぶ会でした。なので、お二人の曲と、お二人が好きだった曲を演奏。
ですが、岡田さん自身も好きなドビュッシーの練習曲をノリノリでかっ飛ばしてくれて、天国の先生たちもビックリしたのではないでしょうか。

ビュッシーの練習曲は自分もたまに弾いてますけど、岡田さんの演奏は私より3倍は速くてめちゃくちゃカッコよかったです。もう最高。前半はベートーヴェンとかで素晴らしい演奏でしたが、ドビュッシーの遊び心と頭の回転の速そうな場面転換の鮮やかさは白眉でした。

アン・ヴェールはとても幻想的な曲で、ドビュッシーと対になっていました。
ベートーヴェンソナタは、矢代先生のソナタと対になるのですが、矢代先生の曲が現実を直視する系統とすると、天を見ている曲ですね。そのあたりの表現の違いなども興味深かったです。

ドビュッシーの練習曲は、明らかに弾き慣れた十八番という感じで、とにかくノリがいい。
ツェルニーの練習曲を揶揄した1番は、本当につまらなさそうに一本調子でドーレーミーファーソーファーミーレーって弾いて、思わず笑いそうになってしまうくらいで(笑)、そこから一気に幻想と遊びの世界が広がります。そこからもう最後まで一気に突っ走る感じで、終曲の12番は超高速で一気に弾ききってしまいました。すごすぎです。

岡田さんの演奏はいかにも日本人的で生真面目でつまらないという評価を受けていたこともあるようですが、全然そんなことはなくて、ドビュッシーの曲のアイロニーやユーモアをしっかり理解して表現していたのが印象的でした。日本人とフランス人は感性が近いところがあるので、岡田さんのような日本人的ピアニストこそ、ドビュッシー向きではないのかと思いました。