スティーブン・オズボーンのドビュッシー ピアノ曲集の巻

生活が少し落ち着いてきたので、最近愛聴しているCDを紹介していきます。今日は、以前ラヴェルの全集を絶賛したスティーブン・オズボーン氏によるドビュッシーの作品集です。

Debussy: Piano Music

Debussy: Piano Music

 

曲目は下記の通りです。

1) 仮面
2) スケッチ帳より
3) 喜びの島
4) 映像 第1集(水に映える影 ラモー礼讃 動き)
5) 映像 第2集(葉ずえを渡る鐘 そして月は廃寺に落ちる 金色の魚)
6) 版画(塔 グナラダの夕暮れ 雨の庭)
7) 子供の領分(グラドゥス・アド・パルナッスム博士 象の子守歌 人形へのセレナード 雪が踊っている*1 小さな羊飼い ゴリウォーグのケークウォーク)

「仮面」の無窮動的な運動性は思わず耳を奪われます。また「喜びの島」の爆発するエクスタシーの表現はもはや豪放磊落という感じで、かなり肝が座ったドビュッシー像を描いていて極めてユニークです。こういう大胆不敵な態度は「子供の領分」においても同様で「ゴリウォークのケークウォーク」はヴィルトゥオーゾ的に弾いたりする遊び心を見せたかとおもうと、「雪が踊っている」の繊細な音色の使い方や、「小さな羊飼い」の独特な旋法の歌い方に潜むセンチメンタリズムなど、ディテールの仕上げも相変わらず素晴らしいです。フォルティッシモではかなり思い切りピアノを鳴らしますので、繊細なだけでなく大胆で迫力のある演奏になっています。

全体の印象はラヴェルの全集と同じで、一歩ひいたところから楽曲に対する共感を表現しているピアニストなので、曲全体の見通しが良いことと、ディテールの精度の両立具合のバランスが絶妙だと感じます。

 

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*1:よく「雪は」踊っている、という訳がされていますけど、どう考えても「雪が」が適切(笑)