機動戦士ガンダムNTの巻

ガンダムUCをリアルタイムで見ていなくてダンダン地団駄を踏んだ経験を生かし、公開初日に見てきました。*1

1年戦争に絡んでニュータイプゆえのトラウマを背負った3人の子供が中心の話ですが、この映画での1年戦争は9.11とか東日本大震災のような現実に人類に降り掛かった災厄のメタファーという扱いに変わっています。これはいままでの宇宙世紀ガンダムとはスタンスが大きく違う部分です。それゆえ福井さんがやりたがる政治的な描写もごく限られたものになっています。

ということで、話の焦点はもっぱら主人公である3人の子供のトラウマの昇華であり、そのための舞台装置がガンダムナラティブフェネクスということになります。そこに絡めてニュータイプについてガンダムUCよりもさらに深く掘り下げ、さらにオールドタイプであるサブキャラがどのように関わっていくか、というディテールが描かれます。ニュータイプの説明において、サイコフレームの共鳴現象がマイナスのエネルギーを拡散した結果である可能性がある(よって時間が戻ったような状態になる)というSF的な見解まで示されたのが重要だと思います。

劇中で描かれる出来事はコロニー落としやヘリウム3の大爆発という悪しき心によるイデの発動だったり、アクシズショックのような善き心によるイデの発動ですし、相変わらずイデオンのSEがバンバン使われて趣味全開という感じではありました。

ただ先に述べたように、現実世界の災厄後の作品でもあるので、登場人物全員死亡で因果地平に行ったり、虹の彼方に消えたりしません。現実世界に戻ってきます。そして戻ってきたところには待っていた人がいました。この人が出てきたところで涙腺決壊でした。誰もいないフェネクス(だけどそこにリタはいる。この切なさ)に乗ったときにもうかなり泣けたんですけど、その状況から戻ってきて身も心も傷ついて戻ってきた主人公を迎えられるのは、同じように虹の向こうの世界を見た上で戻ってきたこの人しかいないのです。

*1:先行上映を見るほどの熱量はない。