海獣の子供(映画) 感想の巻

絵と音がすごかったです(小並感)

しかし、この手の宇宙生命輪廻の物語で売ろうとしても、もはや商業作品としては成立しないのではないかと感じてしまいました。

なにしろ実写では2001年宇宙の旅があり、アニメでは伝説巨人イデオン発動篇があるのです。これらを知らない人でも、「新世紀エヴァンゲリオンAIR/まごころを、君に」や崖の上のポニョといった作品があり、日本でアニメを見てきた人にとっては既視感だらけの映画になってしまっています。

ただ、これらの過去作品を上回ることはできないにしても別の切り口から描くことはできると思うのです。しかし割と正攻法にボーイミーツガールの導入から、スターチャイルドエヴァでいう使徒)である兄弟の覚醒を描き、海のお祭り(イデの発動、エヴァでいうサードインパクト)へと移行するので、我々はいったい何番煎じを見せられているんだろう?という気分になります。

これに輪をかけてしまうのが、渚カヲルのような観念的なことをペラペラと喋るキャラクター達(複数)です。これはもうお経だと思って聞き流したほうがいいと思います(笑)

などと盛大にディスっておりますが、もう一つのテーマと思われる決裂と和解に関しては原作の省略の仕方がうまく(原作は未読ですけど、ああ省略したんだな、ということはわかる)、人間が関与しようがないあまりにも壮大な宇宙生命輪廻と、人間同士の生命輪廻(ぶっちゃけ子作り)をきれいに対比できていたと思います。稲垣吾郎が主人公の父親をやっていて、天然でエロい感じを非常にうまく演じていました。母親も同じですね。桃はセックス(というか赤ちゃんが生まれる)のメタファーです。わかりやすい。

そんなわけで、一発見ていろいろ理解できるのは年齢相応の経験を積んだ人ではないかと感じました。ただ子供には子供なりの視点もありますし、先に上げた過去作品を知らなくてチンプンカンプンになりつつも素晴らしい絵と音楽(久石譲がかつてないほどいい仕事をしている)を満喫できる作品だと思います。ビスタでなくスコープサイズ(幅広画面)で作ってほしかったですね。