「戦争ソナタ」という呼称に対する違和感の巻

プロコフィエフピアノソナタ6・7・8番は日本では戦争ソナタなどと呼ばれていますが、これに対して苦言を呈したいです。そもそも音楽家や芸術家といったクリエイターの皆さんや広告界隈の人は、商業的に売れるためにわかりやすいテーマを設定したいということを差し置いても、扇情的な意図をもって戦争という言葉を使いすぎだと思います。もちろんプロコフィエフ本人はそんな標題はつけていません。

プロコフィエフ絶対音楽標題音楽の両方を作っていますが、それらには明確な差異があります。はっきりと区別して作っているということです。だから、絶対音楽であるピアノソナタに標題を付けてしまうのは良くないのです。

プロコフィエフが戦争のためモスクワから疎開するのは1941年8月です。そしてこの直後から急に戦争をテーマにした曲を作り出すのです。しかし6番のピアノソナタは1940年に完成していますので、戦争とは別だと考えたほうがいいと思います。ちなみに8番は第二次世界大戦終盤の1944年に完成していますが、穏やかで叙情的な要素が多くて、これも世の中の騒動とは一線を画する感じです。

などということをグダグダ考えていたら、PTNAのプロコフィエフピアノソナタ解説が思いっきりアップデートされていました。ベートーヴェンソナタの影響など、私が書きたかったことが全部書かれています。嬉しいです&悔しいです(涙)。そうなんです、プロコフィエフがやりたかったのは戦争の表現じゃなくてこっちだと思うんですよ。

https://enc.piano.or.jp/musics/234
https://enc.piano.or.jp/musics/235
https://enc.piano.or.jp/musics/236

この素晴らしい解説を書いたのが山本明尚(あきひさ)さんという大学院生(!)です。「ロシアの作曲家はなんでこういう曲を書いたのかな?」という観点から作曲家や楽曲の調査や分析をやっておられるということで、自分と似たところがあると思ったのでフォローしたいと思います。

http://www.akixisa.com/