【音楽用語シリーズ】ソナタ、ソナチネの巻

ソナチネは小さいソナタですが、作曲家がソナタと名付けたらソナタですし、ソナチネと付けたらソナチネなのです。形式なんかどうでもいいんですよ!(投げやり)

じゃあソナタってどういう意味なのよ?という話になります。
本来は器楽曲という意味になります(対義語は歌曲)。とりわけ、舞曲を含まない複数楽章形式の器楽曲ソナタというようになりました。つまり娯楽目的でなく純音楽的な器楽曲にソナタという名称を与えたのです。この傾向はバロック時代のかなり早い時期に出来上がっていて、古典派、ロマン派の時代を経て現代まで続いています。いま我々が聞いているソナタがほとんど標題のない絶対音楽で、しかもたいがい難しく真面目な音楽になっているのはそういう事情があります。なので古典派のハイドンモーツァルトベートーヴェンソナタはまさにそういう音楽ですし、サロン用にノクターンやワルツなど比較的短くてエンタメ色の濃いピアノ曲を書いていたショパンも、シリアスな音楽としてピアノソナタチェロソナタを書いています。標題音楽ばかり作っていたリストですら、ピアノソナタは極めて純音楽的なのでしたそしてソナチネは、庶民のピアノレッスンが一般的になりはじめた1700年代後半~1800年代初頭に特に数多く作られました。ピアノソナタの魅力をピアノの初心者でも楽しめるように、あるいはソナタが弾けるようになるための練習曲として作曲された「小さなソナタ」。それがソナチネなのです。

 

あと「ソナタには舞曲を含まない」と書きましたが、実際には古典派以降のソナタソナチネにはロンドやメヌエットなど舞曲の楽章が含まれます。この原因のひとつとして、舞曲を主体に構成されたバロック時代の「組曲」が廃れてしまった一方でソナタの人気が出たので、こちらのほうの構成要素として舞曲が復活したのではないかと考えられます。もうひとつの要因としては、真面目な楽章ばかりでは飽きるし、ぶっちゃけ眠くなるので、舞曲のリズムを使った軽い内容でわかりやすく楽章をひとつ置くことで息抜きにしたり、眠気覚ましのスパイスにしたと考えられます。

交響曲でこういう試みを始めたのはもちろんハイドンです。ハイドンらしい配慮ですね。ハイドンからの影響のあるモーツァルトも舞曲楽章を含んだ構成を真似てエレガントなソナタをたくさん書きましたし、ベートーヴェンは舞曲より速いスケルツォを導入するのでした。