若林顕 ショパンエチュード / フランソワ・デュモン ショパン ノクターン全集 の巻

在宅勤務BGMのCDシリーズです。

まず若林顕さんのショパンエチュードから。

全体的に意識的にテンポを抑えて、1つ1つの音やフレーズを丁寧に表現することに注力された録音でお手本のような演奏だと思いました。バッハの影響が強い曲での声部を分割した表現はユニークです(op.10で顕著)。また、短調の曲でのデモーニッシュな表現が良くて、特に新練習曲の短調の曲が良かったです。
若林さんは実演だとその場のノリでいろいろやるタイプの人なので、このCDの印象で演奏会にいくと驚くと思います(笑)

 

ノクターン全集 フランソワ・デュモン(2CD)

ノクターン全集 フランソワ・デュモン(2CD)

 

ラヴェルピアノ曲全集録音で「あんたこんなに上手かったの?いままで何やってたのよ、すごいピアニストじゃないの!*1」と世界中のピアノ音楽愛好家を驚愕させ、極めて高い評価を得たデュモンさんのノクターン全集です。
フランスのピアニストは、ラヴェルドビュッシーではオーセンティックな演奏をしても、ショパンになると好き勝手なことをやりがち*2という先入観を払拭する、とても真摯な演奏でした。リリシズム(叙情性)を重視した解説がついておりますが、ストイシズム(禁欲性)の間違いではないかと思ってしまうほどです。特にデュナーミク(強弱)の表現が抑制されていて、ふつうの演奏より音量を1~2段階落とした上で多彩な音色を使い分けることで、繊細に陰影を描いていると感じました。
また、ノクターンというと通常は歌唱的な旋律の表現が意識されるところを、この人はリズムの多様性にも着目しています。ショパンノクターンは、最初期はジョン・フィールドの影響でアルペジョ伴奏+旋律というスタイルで作曲されていますが、2作目のop.15ですでに「雨だれの前奏曲」のような同音連打伴奏や、マズルカのような3拍目にアクセントがくる3拍子を採用していて、フィールドのスタイルから逸脱していくので、そのあたりの表現も意識されています。
なおPWMナショナル・エディションという、21世紀になって発売された新しい楽譜で演奏されています。自分もショパンの楽譜はこのエディションを使っていますが、その理由はオタマジャクシの表記が大きくて老眼にやさしいからです。

*1:2010年のショパンコンクール5位。1~3位までが有名な人だったこともあり、4位以下の人の印象が薄かった

*2:コルトーやフランソワの影響?