フランク ヴァイオリン・ソナタ(ピアノ独奏版)の巻

NHKで放映している「らららクラシック」の好きなクラシック曲投票で、ヴァイオリン部門において不動の1位となっているのがフランクのヴァイオリン・ソナタです*1。フランクのソナタは自分も大好きで、デュメイ&ロルティのCDを愛聴しておりますが、今回はピアノ独奏編曲版です。編曲したのはアルフレッド・コルトーです。この編曲がとても素晴らしくて、原曲の良さを損なうことなく見事なピアノソナタになっています。幻想的な始まり方が素晴らしい第1楽章、激しく情熱的な第二楽章、ロマンティックな第三楽章、さらに神業としか思えないカノンが圧倒的な感動をもたらす第四楽章と、原曲の魅力をピアノ1台で余すところなく表現しつくしていて、まったく隙がないです。

ただ、この曲は原曲が非常に有名な割に、ピアノ独奏版はあまり知られていないようです。そうはいっても何人か録音しているので、いろいろ聴いてみたところ、「らららクラシック」やBSのクラシック番組でもおなじみ江口玲さんが演奏会で取り上げたときのライブ録音盤がベストではないかと思いました。

LIVE ! ソナタ集

LIVE ! ソナタ集

  • アーティスト:江口 玲
  • 発売日: 2009/07/01
  • メディア: CD
 

この編曲のよいところは、原曲のピアノのフレーズをなるべくそのまま残しているところです。よく知っている元の曲の印象から外れるところが一切ありません。でもそれゆえ第二楽章や第四楽章は極めて技巧的な編曲にならざるを得ず、非常に演奏困難です。江口さんの演奏はその困難さを全く感じさせませんし、楽曲全体を完全に把握しきっていることがよくわかります。また一流ヴァイオリニストと何度もこの曲を演奏していることもあって、一人で弾いているのに二人で演奏しているような雰囲気、つまりフレーズのやりとりや掛け合いにおける親密な息遣いまで感じられます。このため表現される音楽の密度が高く、それがこの演奏をとても感動的なものにしています。そして改めてしみじみと、いい曲だなよあ、と思うのです。こんなふうに弾いてもらったらコルトーも嬉しいのではないでしょうか。

自分もこの曲を弾いてみたいと思っていますが、あまりにも難しいのでコルトーが編曲した2台ピアノ版で我慢しようと考えています。といっても第四楽章の2声カノンは結局1人で弾くことになるのですが(笑)だいぶん難度が下がります。

なお下記にデュメイ&ロルティのCDのリンクを貼っておきます。 こちらも素晴らしい演奏です。

 

*1:チゴイネルワイゼンとかが入ってこないのが「ららら」の視聴者層の特徴